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猫が美少女で実は俺?  作者: もこ
紙飛行機は空高く
18/53

甘い汁と淡い期待

ね、眠いーー



「ーーーっと思うけどどう?」


「確かにそうね、いつもより変身が早く感じたわ。はいこれ指輪。」


俺は金指輪を尻尾で受け止めて地面に置いた。場所は変わらずダンジョン前。ノアのありがとホールドから解放された俺は、ジュースについて1つの仮説を彼女に話した。

ふと思っただけで根拠も何も無いけどね。


その仮説とは【コレ(ジュース)が俺の姿を変える引き金になる。】だ。何故そう思ったのか、理由は2つある。

1つ目は【タイミング】。ジュースを飲み干したタイミングでセナから猫へと変身した。これだけならば偶然という可能性もある。

しかしここで2つ目。

変身の時、必ず訪れた【寒気】。

これが今回は無かったのだ。あまりに自然に、それでいてスピーディに変身は行われた、それはもう何かの力に後押しされるように。この2点により俺はジュースが変身を促したと考えたのだ。


「取り敢えずセドナに戻りたいな。

宿に帰るにしても猫やセナだと説明が面倒だし。」


「そうね。私も個人的にセドナが良いわ。」


目線をそらしてノアはそう言うが、なんでかは敢えて聞かない。また泣かれたらそっちの方が面倒臭いからな。


「それじゃ行くぞ!」


俺が金指輪を前足でなぞると、問題の物が目の前に現れた。よし飲むぞ、ぺろぺろぺろぺろ。

……んんっと。飲みにくい。コップって人には最適だけど猫には苦行だな。


「何してんのよアンタ。ほらおいで?」


ノアが片手で俺を抱き抱えてもう一方でコップも持ち上げる。俺が飲みにくそうだったのを見て飲ませてくれるらしい。


「こういうのは一気に飲んだほうが良いわ!ほらっ!」


「ちょ、まっ…ゴボッ…アババババッ!!」


……死ぬ!!死んでまう!!

ノアはコップを斜めに傾けて俺の口へとジュースを注ぎ込むが、明らかに傾け過ぎだ。どうやら金髪の悪魔は圧死の次に溺死をご要望らしい。


「ちょっと暴れないでよね!

持ちにくいじゃない!」


ノアの手は俺のお尻を支えつつも指先は股間にまで届いている。

猫だから気にしていないと思うが中身は男だぞ!?ダメだってそこは!


「ゴボボボッッ!!」


「あと少しよ!ほら!」


「ーーーッッン!!」


コップの中の液体を全て胃に流し込んで俺は必死に呼吸をする。あ、あぶねぇ……死ぬ所だった……。

安心してる場合じゃない!変身するかどうかを見定めなければ!


「あ!身体が光ってるわよ!」


よし!やっぱりジュースで変身で変身出来るんだ。俺の仮説は正しかったんだっ!!俺は猫なりのガッツポーズをして光に包まれていく。

さらば猫の俺。おはようございます本当の俺。


「う、眩しい……。」


「よっし!!」


光が消えて変身が成立したことを悟る。これこれ!!この感じぃ!……ん?


「お〜ぅ!」


寒気無しにその身を変えた俺が最初に感じたのは股間への快感。そして裸であるという羞恥心。


「う、おも……。

それに何?この感触……。」


「おおぅ。」


更に続く股間への快感。

……!!

……落ち着け俺、なぜこうなっているか冷静に考えろ…いやもう答えはそのままじゃん!猫の姿でノアは俺のお尻と股間を触ってた、そのまま変身したので……つまりそういう事だろ!分かり易いように俯瞰的に解説しよう。裸の男がガッツポーズをして立っている。その後ろから金髪美少女が股の間から手を入れて股間を掴んでいるのだ。そして今のノアはきっと目を閉じている、変身の時眩しくて思わず閉じたのが幸いしたようだ。


「ちゃんと変身出来たみたいね?」


「ま、まて!

まだ目を開けんな!!」


「なんか硬く……!!!?」


俺は後ろに振り向いてノアを必死に注意したが既に遅い。目はパッチリと開き、脳に伝令を送る。

最早手遅れ、後の祭り……あ、アルカナ祭りって国全土でやるのかな?




次の日。

あの山には恐ろしい女性の霊が住んでいて、時々悲鳴を響かせているという伝説が出来ていたのは……俺の所為せいだろうか?



※ ※ ※



ガキィンーー!!

キィーンーー!!


「グオオォ!!」


砕け散った氷の粒がキラキラと輝いて私達3人に降りかかる。この場面から見た人は綺麗と思うだろうけど元のモンスターを見れば、その気持ちは真反対に走り出すだろう。


「本当に何体もいるわねこのダンゴムシ。」


「ダンゴムシじゃないですよ。

アイスコロコロです。ちゃんと名前でよんであげて下さい。」


肩まで伸びた銀髪を揺らし、彼女は剣を指輪に戻した。厳密には【彼女】では無く【彼】だが。


「カノンも良く付いてくるって言ったわよね。こんなダンジョンに。」


私はカールがかった茶髪の女性にそう言うと、彼女の頭についた猫耳が可愛らしくピクピク動いた。


「だって私も冒険者になりたいですもん!お母さんとお父さんがダメって言うからダンジョンに来たことなかったですけど……ちゃんと鍛えて居たので魔力も並の人よりは有りますよ?」


「あら、冒険者になりたかったのね。なら少し戦ってみる?」


私は黒指輪をなぞって空間を歪ませる。ポッカリ空いた穴から青の指輪を取り出してカノンに手渡す。


「これは武器よ、さっきドロップしたものだから貴方にあげるわ。」


「ええ!良いんですか?」


カノンは嬉しそうに指輪をはめて、早速なぞり始める。


「《メインリング!》『……あれ?……この武器の名前なんでしたっけ?』」


「うわっ!!!」


「あはっ…あははは!!」


剣を取り出そうとしたカノンの詠唱が不十分だったので、剣が変なところに現界してしまった。それはセナの真上。彼女はギリギリ避けたが必死なその姿を見て私は笑いが込み上げて来たのだ。


「す、すいませんセナさん!」


「いや…良いですよ!

ちょっと殺されかけただけですし!!」


ふふっ。セナの奴ムキになってる。でもアンタにはこれぐらいの天罰が有っても良いわ。


「本当にすいません!セドナさんの妹さんにこんな無礼を……。」


「兄なら怒らないと思いますよ!

殺されかけてもねっ!!」


「現にそうだしね。」


「ノアー!?」


あはは!!バレない様に必死になってる!!

なんでこんな事になっているかと言うと今日の朝に遡る。私とセドナがダンジョンに向かおうとした時にカノンが私もと言って付いてきた。ゴローと女将さんは神格者様と一緒ならと言って心配すること無く娘を送り出した。問題はこの後、山を登っている途中にセドナの身体が光り始めたのである。必死にカノンの視線を逸らして変身の瞬間は見られずに済んだが、セナの存在は見られてしまった。咄嗟に『用事があって居なくなった兄の代わりにダンジョンの手伝いをする妹』として苦しい言い訳したが、カノンは納得した様子だ。因みに妹の名前はセナなので普段通り接していても大丈夫だろう。


「まだ武器は早かった…くふっ……ようね……。」


「そ、そうです!私は魔法が得意なんですよ!」


「なら大人しく先へ進みましょうか。」


私は2人に声をかけて、ダンジョンの奥へと足を進める。だ、駄目だ笑いが込み上げてちゃんと話せない。

ここはダンジョンよ?集中しなくちゃ。

ザッザッザ……

3人の足音のみが洞窟に響き渡る。

忌々しい氷柱は先に一掃しておいたので敵が出てくる心配は無い。

……ふう。

このダンジョンは一本道でそれも短い、もうそろそろボス部屋が見えるかも。そう思っていた矢先、目の前にボス部屋が見えてくる。


「ボス部屋の前で少し休憩しましょうか。」


私はセナの言葉に無言で頷く。カノンも同様に頷いていたので、私達は扉の前で足を止めた。

……やっぱ何度見ても慣れないわね。私があの家を出てから冒険者になってから結構見てきたのにまだ緊張する。でもこれは良い事だわ、緊張感を持つ事で自分はまだ未熟だと再確認出来るから。

ヒューっと凍える風が吹き抜けて2人が寒そうに肩をすぼめる。私がそんなに寒さを感じないのは何故だろう?


「そういえば妹さんはセドナさんと違って銀髪なんですね。まるで銀狼族みたいです。」


「銀狼族?」


セナが首を傾げて説明を求める。なんであんなに可愛い娘が男なのよ。


「銀狼族は銀髪がトレードマークの獣人族です。滅多に出会えない人気No.1の種族だったんですよ?」


「同じ獣人族から異性として人気って意味かしら?」


「……それは違いますノアさん。

【人族の間で】です。美しい銀髪に整った顔立ち、固有のスキルに従順な性格。その全てが持ってこいだったのです。」


人気だった。持ってこいだった。全て過去、カノンの言葉を繋げば容易に予想は出来る。


「奴隷に……なのね?」


数年前だ。

獣人族や魔族がまだ差別を受けていた頃、人族が他種族を奴隷にしていたのは父から聞いた事がある。後に神格者が奴隷制度を撤廃させると種族差別も徐々に薄まっていき今に至る。


「数年前、奴隷制度は廃止されましたがその名残で銀狼族は絶滅の危機に瀕しているそうです。」


「人…ね。」


獣人族であっても魔族であっても同じ一つの命。何故差別などするのだろうか?自分と姿形が違うだけで後は何も変わらないのに……。


「…暗い話になっちゃいましたね。

気を取り直してボス部屋へ入りましょうか!」



※ ※ ※


「し、死ぬのじゃ……。」


「これも国の為なんですから。」


「国……のぅ。」


ディアナの守護する国エーテル・エコロ。1日の日照時間が世界で一番短く夜が長いのだが他国より強く輝く月が幸いし、太陽がそれ程重要視されないのが面白い国だ。

作物は月光を浴びて育ち、人々の生活リズムはバラバラ。日の出が朝と言う者もいれば日没が朝と言う者もいる。私とセドナは通常通り朝日と共に起床していた。



「ありがとうございます神格者様。

お陰で助かりましたと依頼主が言っておりました。」


「お礼は良いから寝させて欲しいのじゃ……。」


「いえ、次は北の方にモンスターの群が現れたそうです。魔格者が絡んでると思うので行って頂きたいと思います。」


依頼は文書で簡潔に。

これは神格者に依頼する時の不文律だ。簡潔に書いたとしても残念ながらその全てがが届くわけでは無い。

それは彼が手紙を弾く可能性があるからだ。

【仲介者】

送られてきた文書を神格者より先に目を通し、本当に重要な物だけを抜粋する役目の者。仲介者は天性のスキルを必要としないし戦いもしない。必要なのは勤勉さと危機察知能力だ。

ディアナの仲介者は目の前の美少年エルフで名前は【アユモセ・フンドレート】

少女の様なあどけない顔立ちで、三つ編みに纏めた髪は緑色。眼鏡をつけていて背は私より小さいが騙されてはいけない。

エルフは元々成長の遅い種族、この見た目だが20などとっくに過ぎている筈だ……多分。

セドナが神格者になってから新たに着いた仲介者なので私はあまり彼の事を知らない。


「なぁ聞けアユモセよ。

セドナとどの様に仕事をしてきたか分からぬがこのままでは私が死んでしまう。昔、調子に乗って寝なくても生きれるとセドナに自慢しておったがあれは嘘じゃ。人は寝ないと死ぬ。」


アユモセは眉一つ動かさず、眼鏡をクイッっと持ち上げる。


「その昔。

私がまだギルド嬢の職についていた頃です。」


あ…地雷を踏んだ…。これはアユモセの十八番、この依頼の最中に何度も何度も聞いた話だ。可愛い顔を生かして男にも関わらずギルド嬢に扮し仕事をしていた。そして何人の冒険者に告白されてそれをズバズバ断っていったらしい。


「私は1週間寝ないで働きましたよ。

つまり人は1週間寝なくても大丈夫です。

そしてその1週間の間に10人にプロポーズされたのですが…」


「お、お主はエルフじゃろーが。」


「…お師匠だって竜族でしょうに。種族的には竜族の方が明らかにハイスペックです。」


……ぐぬぬぬ。


「それにセドナさんなら余裕でこなしてる仕事量ですよ。」


「ほう?

私が弟子に劣ると言いたいのかのう?」


「いえいえ予想通りです。

私はセドナさんの仲介者ですので『元』神格者にはそれほど期待してません。」


ああん!?

なんじゃこの生意気なガキ!!


「次の場所は何処じゃ!!!

すぐに言ってモンスター如き蹴散らしてやるわい!そして見ておれ生意気な仲介者。弟子が師匠を超えられないところをのう!」


「はい楽しみですお師匠。

ですが先にこの依頼の方が近いので寄り道してから向かいましょう。」


「どんな依頼じゃ?」


「私のペット、猫のミーちゃんが居なくなりました。探して神格者様!」


「それ絶対重要じゃ無いじゃろーがぁぁ!!!」


「重要ですよ!こういう細かい依頼までセドナさんは進んで解決してましたよ?僕も手伝わされて何度猫を探した事か。」


あやつそんな事までしておったのか……。にしても猫を追いかけていた神格者が今は猫に成ってしまったとは何とも可笑しい話じゃ。


「……ふふっ。」


「……今、セドナさんを馬鹿にしましたね?」


「……!!し、してないのじゃ!」


「お師匠様、マイナス1ポイント……っと。」


「なんじゃそのメモ!?」


「セドナさんが帰って来たら今までの事を逐一報告しなければならないので毎日お師匠様の評価を日記風に付けていこうと。」


「や、やめい!!」


「あ、マイナス50になったらセドナさんはお師匠様と縁を切るらしいです。」


「いきなりハード過ぎじゃろぉ!!」







ノア「この後書き……見てる人いるのかしら?」


セナ「見てる見ていないは関係無いですよノアさん。少しでも楽しんでくれる人がいるなら続ける。それが大事です。」



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