猫の集会は夜中まで
遅くなって申し訳無いです。
これから新章に突入致します!
楽しんで頂ければ嬉しいです!
「お嬢さん方、《アルカナタウン》に着いたよ。」
まだ肌寒い明け方。
馬車の揺れが収まると馬主の声が聞こえてくる。
やっと着いたのか…。
俺は眠気まなこを擦りつつ、隣で寝息を立てているノアを起こす。
「う、うーん…。
もう着いたの?」
「もうじゃなくてやっとですよ。」
前の街を深夜に出た後、俺は馬車の中で満足に寝れていない。
もうわざとだろ!
と思える程、拳やら蹴りやらが飛んできて必死にそれを避けていたのだ。それが止んだのはここに着く30分ほど前。それと同時に眠りについたので実質寝たのは30分ということだ。
「セナの姿の時は敬語なのね。」
「何だか抜けなくて……。」
「私もその方が良いわ。
セナとセドナは別で考えたいもの。」
…さいですか。
「お嬢さん達、料金は2万Gだけど1万Gでいいよ。
可愛い寝顔が見れておじさんは満足だからね。」
「ありがとうございます!」
俺とノアはお言葉に甘えて1万Gを手渡し馬車を降りる。このお金はキングオーク討伐時に得たドロップアイテムを売って作った金だ。
「この街は観光地として有名だからね、治安も良いし気候も良い。ましてや飯も上手い良いところだ。目一杯楽しんでな。」
「「はい!」」
おじさんは俺達の返事に満足すると、馬を走らせ元来た道へと戻っていった。俺達の事を観光客と思ってたんだな。
「おぉ。凄い!」
この先アルカナタウンと大々的に描かれた看板の奥に大きな門が構えられており、警備兵が両脇に立っている。
この街は治安が良いと言うのはそういうことか。
街全体が壁に守られており、入るには門を越えなければならないのだ。
「では行きましょう。」
門をくぐろうとすると警備兵が歩みを止める。指定の軍服を着ているので【神格軍】であるのは見て取れた。
「待ちなさい。
ここから先はアルカナタウンになります。治安維持の為にステータスのスキル確認をお願いします。」
スキル確認か。
魔格者かどうか確認する為の作業だろう。あまり見せたくないが俺はスキルの秘匿を解除して見せる。
「ー!!
これは失礼しました!!
どうぞお入り下さい!
お連れの方もどうぞ!」
「え!?
私まだ見せてないけれど?」
「大丈夫です!」
俺がディアナの神格者だから連れも魔格者の心配は無い。だからすぐにでも通せるのだ。
門を抜けると朝日が街を照らし、キラキラと輝いている。
至る所に噴水があり、湧き出る水は驚くほど透き通っていて小鳥たちが水浴びを楽しんでいる。
これがアルカナタウン。
ビギナックの様に大通りに出店が散りばめられた賑やかな街では無いが、落ち着きと穏やかさに溢れた馴染み深いヨーロッパ調の街。
まさにゲームの世界といった所か。
もし許されるのならこの街で一生を遂げたい。
そう思える様な場所だ。
「綺麗な街ね。
けど私の故郷を見ているようで気に食わないわ。」
「ノアの故郷は何処なんですか?」
「ここからは遠い場所よ。
神格者が住んでいたからいずれ立ち寄ることになるかも。」
「そうなんですか。」
具体的に話さない辺り、故郷を快く思ってないことが伺える。
これ以上追求するのも野暮だな。
話を変えよう。
「これからどう動くかですけど、まずは情報集めですね。
神格者のいる場所を突き止め、解呪の知恵を借りましょう!」
※ ※ ※
「すいません。
本日から10日間は休業です。」
「そうですか。
ありがとうございます。」
そう言って俺とノアは警備の男性に一礼する。
日中、夏の様に暑くて死にそうだったがそれも落ち着いた夕方。
俺達は街の中央に佇む塔の前に居た。中世ヨーロッパ風の塔は周りの建物の何よりも高く大きい。これがこの街のシンボルにして、神格者の居場所。塔の少し奥に見える煌びやかな建物こそが図書館だと思ったが、あそこはアルカナタウン1の金持ちが住んでるらしい。
アレは相当な金持ちだなぁ。
けどあんな家、俺が本気を出せば潰せるけどな! (物理)
「んー……。
このアルカナ図書館に居るのは分かったんだけどなぁ。
神格者でも入る事が許されないなんて。」
今はセドナの姿なので神格者という立場を目一杯利用しているのだが、この図書館には通用しなかった。
何でだ、ふざけんな!
「そうね。
まさか休業で出鼻を挫かれるとは思わなかったわ。
でも急ぎの用って訳でも無いし10日ぐらい待ちましょうよ。」
「んー……。」
急ぎの用じゃない……かぁ。
それは違うんだよノア。
俺は早く呪いを解除する手掛かりが欲しい。
1日でも早く元の姿に戻りたいのだ。
それに2日3日ならともかく10日も何をしていれば良いの?
「芳しくない返事ね。
この街を基点にダンジョン攻略とレベルリング。
そうやって10日間待てば良いんじゃない?」
「それもそうだな。
先に進んでも10日後此処に戻ってくるのも面倒だし。」
「そうと決まれば宿探しね。」
もうすぐ日も暮れる。
ノアの言う通り早めに宿を探すのが先決だな。
「そこのお二方。」
「「?」」
「宿をお探しですか?」
声の方を振り向くと、黒いハットを被った五十代ほどの男性が微笑んでいた。白い髭を伸ばし上品なスーツに身を包んでいるので執事の様な風格が漂っている。
「今はビギナックからの冒険者や他国からの観光客が多く、簡単に宿を取ることが難しいと思いますが。」
「そうなのか?」
「ええ。
けれど私どもの宿でしたらすぐにでもご案内出来ます。」
男性はそう言ってまたも優しく微笑む。
「それは良いわね。
頼もうかしら。」
「かしこまりました。」
「待ってくれ。
ある事情で俺はあまり人目につきたくないんだ。
人が多い様なら宿を変えるが良いか?」
「それでしたら安心してください。
あなた方を含めて本日のお客様数は二名ですので。」
つまり俺達が本日最初の客って事ね……大丈夫か?
「じゃあ案内を頼むよ。」
「はい。
ですがその前に。」
男性は一礼し、自分ステータスを立ち上げ俺達に提示してきた。
「私はこういったものです。」
【ゴロー・キララエル】
シンボル クジラ (包容)
レベル29
スキル
『天の嗅覚』
レベル29の宿の主人か。
シンボルが包容なのでなんか安心出来るな。
「流石に身元を明かさないのは失礼ですしね。
それでは行きましょうか。」
ゴローに連れられて俺達は図書館から遠ざかっていく。10日後に会おう神格者よ。
「それで…君達カップルはこの街に観光をしに来たのですか?でしたら数日後に行われるーー」
「か、カップルじゃないわ!
ただの仲間よ!」
ノアが顔を赤くして答える。
「それは申し訳ない。
あんまりお似合いでしたので。」
「そ、そう?
それは……ぅ、嬉しいわね…。」
「……。
俺達は冒険者だ。
旅の途中でこの街に立ち寄ったまでだよ。」
「そうでしたか。
長旅の疲れ、我が宿でお癒し頂ければ幸いです。」
街が闇夜に包まれて、夕日と月がバトンタッチをする。
宿屋が立ち並ぶこの通りは、街灯が煌めいて夜でも安心して歩ける。
しかしゴローは大通りから一本外れて暗い夜道を進み始めた。
「こちらです。」
……なんだか怪しい。
どんどん街の外れに行っているし人も減っていく……。
ぼったくられたり変な事にされたりしないよな?
「ねぇセドナ。
部屋はどうするの?
アンタが良ければその……い、一緒でも良いわよ?」
「いや、別にしよう。」
「ふぇ!?」
安くする為に一部屋!
と言いたいが男と女が同室は宜しくない。それ以上にノアの寝相の悪さが、同室にしたくない理由の上位を独占している。
「んんっ、もう良いわ。
ゴローさん、後どれくらいなの?」
「あぁ、はい。もう着きましたよ!」
ゴローが微笑み指差す先の物、それは賑やかな街の中心部からかけ離れた場所に佇むレンガ造りの宿。
古びた看板には大きく【猫の集会】と描かれている。
……コレ?
見た目がただの家なので宿屋と言われなければ道行く人は寄り付きもしないだろう。遠方から来た人ならば尚更だ。
「帰ったぞー!
ささっこちらへ。」
ゴローは玄関の戸を開けて俺達を招き入れる。
……うわぁ。
本当にただの家だな。
「お帰りアナタ。
あら!?
お客さんを連れてきたのね!!」
奥からゴローの奥さんと思われる女性が現れる。
この人が宿の女将さんという事になるだろうな。
「あら?
その耳……獣人族なのね。」
ノアが女将さんの頭についた猫耳を見てそう言う。
隣を向くとゴローはハットを外して頭についた猫耳をピクピク動かした。
「騙すつもりは無かったのですが……。」
「いや、大丈夫だよ。
俺達は獣人族に対して差別目などしないから。」
この世界では様々な種族がある。
その中でも獣人族や魔族などを差別する輩がいるのだ。
「ありがとうございます。
流石は神格者様ですね。」
ゴローは俺の言葉に深々とお辞儀をする。
「よく分かったなぁ。」
「良い顔立ちの神格者様ですと、巷でも話題になりますゆえ。」
顔だけで神格者とバレるなんて俺も有名なったものだなぁ。
「まぁ!?
こんなに若い方が神格者なの!?」
女将さんの方は知らなかったらしい、驚いて目をパチクリさせる。
まさか自分の宿に神格者が来ると思って無かったのだろう、慌ててお辞儀をする。
「よ、ようこそおいで下さいました神格者様!
精一杯のおもてなしをさせて頂きます!」
「そんなにかしこまらないでくれ。
俺はただの客だよ。」
「優しいお言葉ありがとうございます。」
「ふーん……。
アンタってそんなに凄いのね。
女装する変態としか思って無かったわ。」
ノア……俺が男って分かってから、ちょっと性格変わってないか?
それも悪い方に。
「あの…出来れば写真を一枚お願いしたいんですけど……。」
「あぁ、良いよ。」
「ありがとうございます!」
そう言って女将さんが白指輪を持ってくる。
この世界でもカメラはあるらしい。
俺は女将さんの横に並んで立ち、自分史上最高のキメ顔をする。
「女将さんと二人きりなんてダメよ!
私にも入らせなさい!」
ノアがそう言って袖を引っ張ってくる。
何故俺と女将さんの2人きりで写ってはいけないんだよ……。
「良いですか?
それではいきますよ?
《リング》《写し紙》」
女将さんの詠唱が終わると指輪が壊れ、代わりに紙切れがひらひらと舞い落ちる。
ノアがそれを拾い上げて見せてくる。
「私瞬きしちゃってるー!!
もう一回やり直しましょうよ!!」
「すいません。
指輪はこれしか無かったもので……。」
もとはと言えば俺と女将さんだけの写真撮影の筈、オマケのノアが一番文句を言っている事が疑問でしょうがない。
「今度俺が買ってきてやるよ。」
「その台詞、ちゃんと覚えてなさいよ?」
「後日もう1度撮るのなら私の娘達も一緒によろしいですかね?」
「あぁ、良いよ。」
「あ、ありがとうございます!!
後で娘二人にも挨拶させますので!」
あ、二人もいたんだね。
会話を乱さない様に様子を伺っていたゴローは、誰もが口を閉じた瞬間に話を進める。
「取り敢えずお部屋は二階になりますが、部屋数は如何なされますか?」
「ひ、1つで十分よ「2つくれ。」
「お二つですね。
かしこまりました。」
俺はノアの言葉を遮って白指輪を2つ受け取る。
「後で後悔しても知らないわよ!」
ノアは俺から指輪を無理矢理奪って二階へ駆け上がっていく。
後悔は絶対しないと思うけどなぁ。
「10日ほど此処で厄介になって良いかな?」
「勿論ですとも。
10日も泊まって頂けるのなら少しお安くさせて頂きます。」
「ありがとう。
後、俺以外に銀髪の女の子と猫が出入りするかも知れないけど無視してくれないか?」
「?
分かりました。」
良いぞゴロー。
こういう時、物分かりの良い主人は助かる。
これでセナでも猫でも怪しまれない筈だ。
「それでは先にお風呂へどうぞ。
場所は2階の奥にございます。」
「分かった。」
そう言って俺は2階へ上がって行く。
ギシギシ軋む階段を登り、長い廊下を歩いて行く。
渡された指輪と同じ部屋番号を探して歩みを進めるが中々見つからない。
ってかどんだけ部屋数あんだよ!
外から見たらこじんまりとした宿だが、奥行きがあるので中に入るととても広い。
こんなに広いのに客は俺達だけなのか?
確かに人目に付きにくい場所だし1つ手前の通りは宿屋が腐るほどある。
ここに辿り着く前にお客は吸い込まれて行くのだろう。
「あ、あった。」
俺は白指輪を起動させて部屋へと入っていった。
神格軍兵1「おい、今の娘めっちゃくちゃ可愛かったなぁ!!」
神格軍兵2「確かに可愛かったけど神格者様だぞ!?良からぬこと考えんなよ?」
神格軍兵1「分かってるって!」




