とんでもなく蛇足的設定集(真久貝 浩介)
今までで一番、文字数が多いです。
本編であまり、構ってあげられなかった分を・・・。
(でも、この男が最終的にはいいところ食べてるよね)
真久貝 浩介
11月29日生まれの28歳。(注:年齢は作中の時期に合わせずに統一)
一切癖のないストレートを派手さを求めない長さに整えて、仕事中は軽くオールバックにしている。落ち着いた色合いではあるが、完全に青色の髪。目の色は黒だが、よくよく見ると緑が入ってる。顔立ちは甘く紳士的。好感を持たれることが多く、人を警戒させない。
紳士的な笑みと丁寧で育ちの良さが感じられる態度と所作。誰に対しても誠実であろうとする。それが功を奏しているのか手の届かない人、と周囲に容姿を騒がれつつも不必要に絡まれることがない。
性格もあくまで紳士的。真面目で公正。完全なる常識人なので予想のつかない行動をされるとどう返すべきか困ってしまう。誰かに対して熱くなったりすることがほとんどなかったが、立花に出会って一変する。
率なく当たり障りもない人間に見えて、初っ端から自分を拒否する態度。特に何をしたでもない真久貝に対して極力視界に入れないように距離をとってくる姿勢に、気まぐれと悔しさから関わってみた。
そうすると立花の自壊的な性質を、すでにこの世を去った愛猫に重ね合わせて、何とかしたいと思って行動した。後悔は微塵もないようす。むしろ、あの時の自分、よくやった。
家族構成は祖父母、両親に6歳上の姉と1つ下の弟の7人家族。両親共働きで、育児家事はお手伝いさんも雇いながら祖母が引き受ける。祖父は中学生の頃に会社の社長職を息子の嫁である母に譲って一線を退くも、旧知の大学教授に誘われて、現在も非常勤で大学のキャリア講師をしている。母は敏腕社長として親会社からも一目置かれている。父は母の補佐をしている。
祖父は実の息子である父と嫁である母のどちらを後釜に据えるか迷っていたが、衰えることを知らな義娘の行動力と実行力を買った。少しばかり古い人間だと自覚しながら、子供を3人産んで、子育てにも普通の父親並には参加して、夫押しのけて社長に任じられても悩むことなく受け入れた義娘をそれはそれで自慢に思っている。息子よ、いい女を伴侶にしたな、と。
つまり、立花が思うほど真久貝はステレオタイプの家庭で育ってない。裕福で健全で家族愛をそれぞれが持ち合わせて機能しているという意味では正しい家。
幼・小・中・高・大と生粋の学園出身者。世間知らずにはならないように、とたおやかな祖母が苦慮してさまざまな活動に孫たちを叩き込んだので世間様とのずれはない。生徒時代は人の上に立つ仕事をすることも多く、人脈が広いが親しい友人は少ない。そのせいか他人の顔と名前を一致させるのが得意。牧崎とは幼・小・大が同じ。中高は牧崎が親の都合で引っ越したので別だが、お互いにフットワークが軽いのでちょこちょこ遊んだりしていた。仲良くなったきっかけはベタに名前が近いから。大きな行事では牧崎の隣りに大抵の場合、真久貝が並んでいた。
大学時代、立花に出会い関わる中で誰かに執着することがなかった自分が、変わっていくのを実感する。極力自分を見ないようにしていた視線を段々と合わせてくれるようになったり、話しかけては短く返答が返るだけだった会話が他愛もなく続くようになる。あまり感情を浮かべない顔が真久貝に向けて笑いかけるようになった頃、完全に立花に心底惚れている自分を自覚した。もともと予感はあったが、ここまで心奪われているとは思ってなかった、というくらいの感情だった。
立花が、真久貝のことを一番好き、といってくれた時は天にも昇る心地だったが、直後の留学宣言で地に落とされる。あれ、ちょっと遠回しな告白だったけどOK貰えてなかったか? と。
それから約半年後に、OKを貰えてなかったことを立花の口から聞かされて、あまつさえ留学中になぜか恋人を作っていたことに内心荒れ狂っていたが、相変わらずの立花を嫌いになることもできずに、直球に告白すると、ちょっと怪しいけど言質はとった。とったのに縮まない距離にかなり焦れて、何度理性をかなぐり捨てようとしたかは悲しいので数えていない。
教育事業に興味があったので、母校にはこだわらず就職先を検討し始めていた大学2年の終わりに、本家直系の次々代当主であり、口やかましい年寄り連中が『不遜なる異才者』と称す、母校を含め多数の事業に関わる『学園長』の『お願い』という名の『強制』で、母校への就職と経験を積んだのちに学校経営参加が決定した。決定したからと、何もせずにその役職に就けるわけがない。そんなことを、あの『学園長』が許すはずもない。
立花は公立校へ就職するために教員採用試験を受けると同時に、いくつかの塾と予備校にも書類を送っていたが、真久貝の母校には送っていなかった。本家の系列の予備校には1つ送っていた。公私混同するわけではない。ただ、誰よりも一番近くで、肌に触れて立花の優秀さを目の当たりにしてきた真久貝は、立花を熱心に自分と同じ就職先へ誘い込んだ。
ちなみに、一般企業にも履歴書を送ったのは選択肢は多くあった方がいいだろう、と思ったことと本家と学園長の洗礼。真久貝自身は教育関係で3社にしか送らなかったはずなのに、次々と本家関連の企業を含めて送られてくる採用試験の案内に、遠い目をした。ほどなくして、同じ境遇の親戚に本家への殴り込み計画に参加しないか、という誘いの連絡が入る。しかし、計画の日は受けるつもりのなかった採用試験が入ってる、というと、それなら仕方ない、と納得される。奴らは全員の試験日を把握しているはずで、なのにそれを無視して殴り込みなどすれば、向こう20年は愛の鞭という名の苦行生活が始まってしまうのだ。本家でも期待をかける人間を人選しているとは思うが、時折その期待をそんな風に裏切り、苦行生活をしている者がいる。
その前例を知るからこそ、無理強いなどされない。
また、別に殴り込みは彼らの期待を裏切る行為ではないらしく、気まぐれのように定期、不定期に行われる力試しのようなそれに、年に最低2度は本家への殴り込みが一族の慣例のようになっている。
また、のちに真久貝と立花との間に生まれた長男が小学生になった年に、教師業と並行して学園長の一存により内々に経営陣の末席に加わる。長男が中学を卒業するときに副学園長に就任。数年して、学園長がまだ50代にもかかわらず学園長の職を辞し、学園長に就任する。ただし、この前代の学園長はほかの学校にも役職を持っており、そちらで理事長を打診されたため学園長の職を退いた。
教師になってから、仕事中にはお互いに、というより主に真久貝が私情をはさまないように言動を慎んだ。けれど、就職してすぐの頃には、どこからか囁かれる噂で真久貝が立花に片想いしているとか、その逆だとか、お互いに別々に恋人がいるとか好き勝手なことが流れる。それに曖昧に返すと、しばらくしてからまた別の噂が流れ始め、おかしいと思って調べたら学園長が愉快犯的に流していたと知り、個人として怒鳴りたい気持ちを抑えて不服を申し立てに行ったら、訂正情報として交際していることをまことしやかに流された。それ以来、ほかの噂は流れていない。
ピンク色の髪の女生徒については、大切な学園の生徒の一員であるという以上に特別な感情は一切抱いていない。女生徒が転校生であることも考慮して馴染むまで手助けするが、普通の真面目な生徒を蔑ろにしてまで彼女の行動を許すこともできない。自覚があるのかないのか、学校中を引っ掻き回し、禁止していないとはいえ何人もの男子生徒とそこかしこで見る者にとっては不快感を与えるような過度な接触を持ち、正直立花とおおっぴらどころか私的であってもほとんど何もできない真久貝には羨まs(ゲフン、ゲフンッ)・・・、引き攣る顔を見せないように苦慮しながら生徒指導として何度も注意に向かうのには流石に嫌気がさしていた。
そんな内心も知らずに、意識的にか無意識的にか女生徒は真久貝にまで過剰に接触しようとしてくる。振り払うわけにもいかないし、許してしまうのも問題だし、むしろこうして近づいて来てほしいのは立花なのに。そんな状況に誰よりもちょうど良く居合わせるのが立花であることに、立花を傷つけているのではないかと罪悪感がわく。傷ついていなければいないで、真久貝のほうが泣きたくなるけれども。
立花は真面目な顔と、理知的な言葉を崩すことなく女生徒と真久貝を仲裁し、当たり障りのない解釈を周囲にいる生徒や教職員らに聞こえる声で口にし、ときには諌めて対応してくれた。立花は、真久貝と女生徒について真久貝が彼女に絡まれているとき以外に何も口にはしなかった。そのことに、ホッとするよりも居心地の悪さと悲しさを覚える身に、自分は被虐思考だったのかと軽く悩んだりもした。
恋人であるはずなのに、真久貝が生徒とはいえ他の女を近くに寄せていることに嫉妬していないのか、とそう言いたい言葉を飲み込んだ。うまくあしらえない自分に非があるのに、その状況を公人として同僚として私情を一切挟まずフォローしてくれる立花に言うべき言葉ではないことは理解していた。
その代わり、誰よりも真久貝と女生徒の間に入ってくれる立花に対して、都合のいい想像をした。もしかしたら立花は、真久貝と女生徒の関係気にしてこっそりとその動向を確認しているのではないか、と。だからこそ、誰よりも早く、多く、間に割っては入れるのではないか、と。
真実は分からないが、少なくとも立花にあったのは、真久貝への嫉妬よりも真久貝への心配である。真久貝と女生徒がもしも互いに対して特別な好意(恋心)を抱いたなら、立花は立花のほうから別れを告げただろうし、そうなっても教員と生徒の適切な関係について不適切と判断した状況に遭遇すれば、二人を説き諌めて、鼻白んだ目を向けられただろう。
ただし、真久貝は立花もIFが考えられないほど女生徒に対して特別な好意を持っていなかったし、真久貝はそもそも心変わりなんて一欠片もしていない。女生徒を上手くあしらえなかったのは、今までに、ここまでしつこく絡まれたことがなかったから。
それでも、高校生なら当たり障りのない言葉でも、はっきりと、ここまで繰り返し何度も言われたら気づくだろうという態度はとっていて、事実それが周囲の生徒や教師たちは察することができ、彼らの中に女生徒を中心とする一連の出来事に対する問題の声が上がった時に、真久貝も当事者のうちの一人だったが、疑惑の目より先に同情の目を向けられていた。
真久貝の立場は、あくまでも絡まれている側で真久貝は女生徒への対応に苦慮しているのが周囲の共通認識。しかし、立花のフォローがなければその共通認識がされたかどうかは分からないし、されていたとしても指導力不足と切って捨てられていたかもしれない。教師だけでなく、女生徒にも生徒として必要な良識と行動をわかりやすく説いていたことが、女生徒の変わることのない言動を教師の指導力ではなく女生徒の特質に起因する問題だと周囲に認識された。
女生徒が留学して、ようやく落ち着けると思ったら今までの女生徒に起因する気苦労がつまらないものだったと思い知らされる出来事が発生。10年付き合っていた恋人で同僚の立花が真久貝に相談どころか一言の説明すらなく職場を辞め、住んでいた部屋も引き払って行方をくらました。立花の意思による行動であり、事件に巻き込まれたのではないかという可能性は状況から考えても低かったが、正直、立花を真久貝自身の目で確認するまでは生きた心地はしなかった。
真久貝自身にも非はあると思いつつ、でも10年来の付き合いの恋人をここまで軽視した扱いもないだろう、と今まで押さえつけてきた色んなモノの箍が弾けた(パーンした。)。
もう色々と我慢し続けてきた積み重ねが、この騒動で崩壊して、そのまま突っ走ってみた。後悔はしないし、立花にさせるつもりもない。あと、拒否権なしだから。
初めて立花が他者(真久貝)に語った『世界に対する違和感』について、きっと真久貝は死ぬまで完璧には理解できない。常識が異なる人を、それぞれに自我を持つ他者を完全に理解できるとは立花も真久貝も考えていない。けれど、真久貝は立花の世界に立ち入ることはできなくとも、寄り添いたいと心から望んでいる。だからこそ、立花の世界を否定したりしないし、今のところ世界に対して折り合いなり、落としどころなり、逃避なりして生きていく術を見つけているのだから、順応しようとも言わない。
立花に出会う前の真久貝だったら、理解できない考え方に面をくらって距離を置いたかもしれない。しかし、出会って長く付き合っているうちに立花の個人的な思考回路や常識が、真久貝の常識とか世間一般の共通認識とかとあまりにもずれていることに気づかされて耐性ができている。でも、そういうある意味すごく不器用なところもひっくるめて愛しいと感じるのだから仕方ない。
仕方ないけど、仕方ないでは許せない一線もある。だから、その辺はしっかり教えとかないとね、と再会したのちにしつこいくらい言い聞かせる。立花は真久貝によるその刷り込みの力で自分に非があるならしっかり聞こう、と反省し、まんまと真久貝の術中にはまる。
真久貝は、根は素直で、賢いのに不器用という立花はどう育ってきたのだろうか、と立花の口から語られる過去に興味がある。ずっと前から抱いていた興味だが、立花が一度も口にしないので暗黙の了解のように仲間内で聞くことはなかった。書類の上で見た立花の過去ではなく、彼女の口から彼女の昔話を聞きたいと躊躇いなく言えるようになるので、今まで立花が建設してきた壁を壊しにかかっている。嫌われるのが怖くて、話すのが嫌だと拒否されるような気もして腰が引けていた真久貝の不安は、あの気が狂いそうな喪失感と憤怒の中で些細なものとなった。
嫌われたって、逃す気はさらさらない。拒否されても、本気の拒絶でないのなら立花は押しに弱い。そして、真久貝は立花がもう真久貝のことを本気で拒絶することはできないと完全に悟り、開き直った。立花は無自覚のくせにそれを無意識には知っていたから、何も言わずに消えたのだ。それは、あまりにも立花らしくなく、けれど彼女らしい行動だった。
立花は基本的に仲間内では理解されようがされるまいが、自分の言葉をそのまま口にする。例えそれによって恋人や友人を失っても後悔しない人間だ。反面、否定の言葉を拒絶するときはずっと押し黙っている。立花がもし真久貝と別れたい、と言い出していたとして、それを聞いた真久貝も友人(凪子や牧崎)も思い留めようとすることは目に見えている。つまり、理解されないことを客観的には自覚していて、無言を貫かないと揺れる決断だったということだ。
なら、多少の無理を通せば付け入るスキができる、と考えていて、普通ならば絶対にやらないはずの威圧行動をとったりした。その後、アパートの管理人さんには菓子折りを持って謝罪に行っている。平日昼間ということと1人暮らしを対象にしていたこともあって、住民のほとんどが出払っており苦情はそれほどなかった。
長すぎた春を越えてた先の結婚を目標に立花を振り回す。時に強引に迫り、時に欲求をぶつける。押して押して押す。それまでのように引いたりしない。押しの一手。それでも立花は真久貝を受け入れてくれるという長年の関係を信じて、草食動物は肉を食べ始めた。そして、結婚を迎えるころには強かで立派な雑食動物になる。
何度も立花を真久貝の家族に紹介しようとしたのに、付き合いは結婚を前提にしたものでもないからと立花は拒否するし、家族のほうも成人した息子の交際関係にあれこれ言ったりしないので紹介する機会がないままだった。ただ、家族のほうは、そういう女性がいるらしいことは真久貝の口からきいていた。30歳を過ぎてからと考えているのか、と思っていたら紹介と同時にできちゃった結婚との報告。立花のほうは申し訳なさそうに縮こまっているのに、孕ませた息子のほうは悪びれることもなくむしろ嬉しそうな様子に、家族は立花の味方になる。立花の境遇には驚きもしたが、だからといって結婚を反対することもない。真久貝の両親はあまり自分の子供たちの教育に関わることができなかったこともあり、親を知らず家庭も知らないという理由だけで偉そうに反対できないし、祖父母もまだ矍鑠としているので、分からないことや困ったことがあったら喜んで手助けする、といった。
そうして、初産としては安産の末に生まれた愛する息子は手がかからないと評されるおとなしい子供だったが、立花が母親になっていく中で息子にばかり構って自分を見てくれない、父親としてはと大人げない嫉妬をしたりすることもありつつ、幸せを噛みしめる日々。




