第四十六話 城壁の現地視察と、大絶賛される新工法
お読みいただきありがとうございます。つむ教授です!
第45話『画期的な図面と、進化する城壁』では、新城壁の強度不足の懸念に対し、アルカが前世の知識を活かした「二重構造」の図面を提案。そこにルークの「堀」のアイデアも加わり、いよいよ新しい防衛線の構築がスタートしました。
今回の第46話では、さっそく動き出した城壁の建設現場へとアルカたちが実際に視察に向かいます。
巨大な石材が転がる不安定な現場は、五歳の幼女にとっては歩くのも一苦労な場所。しかし、アルカは午後からの武術の授業を兼ねて、ギルガ先生から教わった「魔力循環の足捌き」を実践しながら軽やかに現場を進んでいきます。そして現場で待っていた棟梁のロイからは、二重構造の城壁をより経済的に、かつ劇的に頑丈にするための工法について、驚きと感謝の報告がもたらされます。お勉強の成果と内政の進展が現場で美しくリンクする爽快な視察回をどうぞお楽しみください!
ルートハーバー子爵領の南側、新たな外郭城壁の建設現場。
「アルカ様、足元がかなり悪くなっていますから、気をつけてくださいね」
そう言って私の隣を歩くのは、クラウスとルークだ。
私が提案した「二重構造の城壁」の図面をもとに、ロイさんたち建築職人や石工の人たちがさっそく工事を開始したため、今日はその建設現場へ実際に視察にやってきたのだ。
午後からの武術の授業を、ギルガ先生が「現場の不安定な不整地や足場を歩くのも、魔力を常に体の中に流す足捌きのいい訓練になる」と言って、喜んで同行を買って出てくれた。
「おう、嬢ちゃん! 魔力は常に体の中に流しとけよ。頭の上から爪先まで、途切れさせずに循環させるんだ。それを意識しながら、俺の歩く位置に正確に足を置いてみな」
「はい, ギルガ先生!」
私の目の前に広がる建設現場は、切り出されたばかりの巨大な石材がゴロゴロと転がり、土が掘り返された、五歳の幼女にとっては歩くのも一苦労な険しい場所だった。普通なら足を取られてまともに進むことすらできないだろう。
だが、私はギルガ先生の教え通り、体内の魔力を常に循環させ、肉体の動きをサポートさせていた。
一週間みっちり特訓したサバイバル戦術の足捌きを意識しながら、不安定な石の上や斜面を、小さな体でピョンピョンと軽やかにバランスを取って進んでいく。
その様子を後ろから見ていたパパが、感心したように目を細めた。
「一週間で、これほど険しい足場を大人と同じ速度で歩けるようになるとはな。ギルガ、さすがの指導力だ」
「ガハハ! 俺の教え方がいいのもあるが、嬢ちゃんの身のこなしのセンスがずば抜けてるんだよ。実戦的な足場でも、しっかり魔力が全身を巡ってやがる」
ギルガ先生が血管の浮き出た太い腕を組んでガハハと豪快に笑う。
そんな話をしながら現場の中心部へ進むと、日に焼けた肌に汗を光らせた棟梁のロイさんが、図面を片手に私たちの元へと駆け寄ってきた。
「おお、アルカ様! よくぞいらっしゃいました!」
「ロイさん、お疲れ様です。二重構造の城壁の具合はいかがですか?」
私が尋ねると、ロイさんは満面の笑みを浮かべて、現在組み上げられている壁の断面を指差した。
「それが、最高なんてもんじゃありませんや! 最初、ただ空間を挟んで高さ七メートルの壁を二枚並べるって聞いた時は、石工の連中とも『それだと壁が内側に倒れやすくなって施工が大変だし、強度が不安定になるんじゃねえか』って心配してたんです。だが、アルカ様に言われた通りの方法でやってみたら、ひっくり返るほど驚きました!」
ロイさんが興奮気味に説明するその先では、切り出された外壁と内壁の二枚の壁が並び、その間の数メートルの空間に、職人たちが大きな木槌で何かをギチギチと叩き込んでいた。
「アルカ様に教えられた通り、二枚の壁の間の空間に、石工たちが削ったときに出る『大量の石屑や土』を何層にも分けて、ギチギチに突き固めて埋めてるんです! ただの空洞だと壁が倒れちまいますが、こうして中身を詰めちまえば内側からの支えになって、施工がめちゃくちゃ安定する。しかも、ただ石を厚く積む交互に組むやり方に比べて、使う石材が半分で済むんです!」
これこそ、前世の地球における古代ローマや万里の長城などでも使われていた、充腹構造や版築と呼ばれる高度な建築工法だ。
石を交互に組むよりも圧倒的にコストが安く、石工の切り出し作業で必ず発生する「ゴミ」である石屑をそのまま再利用できるため、開発経済学の視点から見てもこれ以上ない資源の有効活用だった。
「これなら石屑も片付いて一石二鳥ですね、ロイさん」
「ええ! しかも、ただ石を組むだけじゃ防げねえ大型魔獣の強烈な正面衝突も, このギチギチに突き固めた石屑と土の層がクッションになって、衝撃を完全に吸収して逃がしてくれます! 交互に組むだけの壁より、材料が半分なのに強度は数倍以上です。石工頭のギルバートも『これを発明した奴は建築の神様か』って拝んでましたぜ!」
ロイさんは図面を宝物のように叩きながら大喜びで報告してくれた。
さらに、その壁の外側を覗き込むと、そこにはルークが提案してくれた「堀」の基礎が、綺麗に深く掘り進められているのが見えた。
「アルカ様、堀の建設も石工や土木職人たちと連携して、かなり順調に掘り進められています。この二重構造の壁と堀が組み合わされば、どんな魔獣が突撃してきても、堀で足を止め、外壁で衝撃を殺し、内壁から一方的に弓や魔法でハメ殺すという完璧な防衛線になりますね」
ルークが私の隣で、深く尊敬の光を瞳に宿しながら敬語で語りかけてくれた。
「ええ、ルークの堀のアイデアのおかげで、さらに完璧な壁になったわ。これならどんな魔獣が来ても、領民の皆さんが傷つくことはありませんね」
私がほんわかと微笑むと、現場の職人たちからも「アルカ様、すげえ壁を教えてくれてありがとうございます!」「これで俺たちの家族も安心して暮らせます!」と、口々に温かい感謝の声が飛んできた。
不安定な現場の足場を軽やかに駆け抜けることで、ギルガ先生から教わっている魔力循環の足捌きをしっかりと実践し、同時に自分が引いた図面が領地をどれほど豊かに、そして安全に変えているかをこの目で確かめることができた。
お勉強の成果を現場で実感し、さらに安全で快適になっていくルートハーバー子爵領の大きな未来を肌で感じながら、私たちの城壁は今日も力強く進化した。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
実際に新しい城壁の建設現場へと足を運んだアルカちゃん、お勉強の成果をさっそく現場で発揮していましたね。
ギルガ先生に教わった魔力循環の足捌きを意識することで、職人さんたちが作業する険しい足場を大人と同じ速度でピョンピョンと軽快に駆け抜けていく姿は、さすがの適応力でした。後ろから見守るパパのクラウスさんや、太鼓判を押してくれるギルガ先生との関係も微笑ましかったです。
現場では、ただ二枚の壁を並べるだけでなく、削り出された「石屑や土」を間にギチギチに突き固める工法が大絶賛されていました。高級な石材を半分に節約しつつ、衝撃を吸収するクッションにもなるという、まさに一石二鳥の開発経済学的なアプローチ。ルークの敬語での頼もしい堀の補強案もバッチリ形になっていて、領地が着実に安全な場所へと進化しているのが肌で感じられる素晴らしい視察回でした!
「不安定な足場をスイスイ進むアルカちゃんが格好いい!」「石屑を再利用する工法に職人たちが拝むシーンが最高に気持ちいい!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページから【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、つむ教授の執筆エネルギーがさらに無限(∞)になります!
次回もどうぞお楽しみに!




