第四十三話 初めての授業と、底知れぬ幼女のポテンシャル
お読みいただきありがとうございます。つむ教授です!
第42話『優秀な家庭教師と、怯まない幼女』では、王家から派遣されてきた二人の超優秀な家庭教師、ヴィンセント先生とギルガ先生がルートハーバー邸にやってきました。五歳のアルカに対しても一切の手加減をしないと宣言した二人に対し、全く物怖じしないアルカの貫禄が描かれました。
今回の第43話では、いよいよ明日からの本格的な授業がスタートします。
午前中はヴィンセント先生による座学。いきなり学園入学レベルの試験を突きつけられますが、前世の記憶を持つアルカにとっては非常に簡単な内容で……?
さらに午後からは、ギルガ先生による魔力操作の特訓が始まります。初心者が感覚を掴むのは三日三晩あっても難しいとされる試練ですが、ギルガ先生の補助を受けた瞬間、アルカの内に秘められた規格外の才能が牙を剥きます。二人のプロフェッショナルが、アルカの底知れないポテンシャルを前にして驚愕する爽快な展開をどうぞお楽しみください!
ルートハーバー子爵邸の書斎。
家庭教師の先生方による本格的な授業は、対面した翌朝からさっそく始まった。
午前中は、冷徹な空気を纏ったヴィンセント先生による座学の時間だ。
「アルカ様、まずはあなたの現在の実力を測らせてもらう。これは七歳で受ける学園の入学レベルの試験問題だ。五歳のあなたには少々酷かもしれないが、どこまで解けるかやってみなさい」
ヴィンセント先生はそう言うと、数枚の分厚い紙を机の上に置いた。
無駄を嫌う先生らしく、最初から手加減なしで実力を測りにきたのだ。
だが、差し出された問題用紙を覗き込んだ私は、心の中で小さく首を傾げた。
そこに並んでいたのは、ごく簡単な四則演算や、基礎的な文字の読み書きの記述問題ばかりだったからだ。
この世界における学園入学レベルの学習というのは、前世の地球でいう小学校一年生から三年生で学ぶ程度のごく易しい内容だった。
小学校を卒業さえすれば誰でも分かるようなレベルだ。
「では、始めます。」
私はペンを握ると、迷うことなくスラスラと解答欄を埋め始めた。
計算問題の答えを淀みなく書き込み、国語の記述問題も、小さな手で丁寧にこなしていく。
カリカリと、部屋の中にペン先の音だけが小気味よく響く。
ただ、この世界の歴史に関する問題だけは、まだ学んでいないのでさっぱり分からず、解答欄を白紙のまま飛ばしていくしかなかった。
その様子を横で腕を組んで見ていたヴィンセント先生の目が、時間が経つごとにみるみると見開かれていった。
「……な、何だと……?」
私が最後の問題に答えを書き終えてペンを置くと、ヴィンセント先生は信じられないといった様子で問題用紙を取り上げた。
「五歳の幼子が、学園の入学レベルをこれほど難なくクリアするとはな……。ただ、アルカ様は歴史が苦手のようだ。そこはこれからの課題としなさい」
白紙の歴史の解答欄を見つめながら、ヴィンセント先生はそう言葉を絞り出した。
「ヴィンセント先生、いかがでしょうか?」
「素晴らしい。まさかこれほどの神童だとは思わなかった。苦手な歴史も含め、明日からはさらに進んだ内容を用意する。覚悟して臨みなさい」
少し興奮気味に眼鏡の位置を直す先生を見て、私は心の中でよし、と小さくガッツポーズをした。
そして午後からは、ギルガ先生による武術と魔力操作の授業だ。
「よし、アルカの嬢ちゃん! 午後は俺の番だ。まずは魔法の基本中の基本、魔力操作からいくぜ。嬢ちゃんは無限術士だからな、魔力は常に体の中に流しとけよ。常に循環させるように意識するんだ」
ギルガ先生は豪快に笑いながら、ドカリと腰を下ろした。
「言葉で言うのは簡単だが、初心者がこの感覚を掴むのは三日三晩あっても難しい。焦らずにやってみな」
「はい、やってみます!」
私は目を閉じて、自分の内側にある魔力に意識を集中させてみた。
だが、頭では分かっていても、体の中のエネルギーを思い通りにコントロールするのは想像以上に難しかった。魔力が中でじっと留まったまま、上手く動いてくれないのだ。
「あう、やっぱり難しいです……」
「ガハハ、気にするな! 誰だって最初はそんなもんだ。よし、俺が少し手を添えて補助してやる。俺の魔力の動きに感覚を合わせてみろ」
ギルガ先生が私の小さな背中に、熊のような大きな手をそっと当てた。
先生の温かい魔力が私の中に流れ込み、私の魔力を優しく導こうとした、その瞬間だった。
「――っ!? ぬ、あ……っ!?」
ギルガ先生が突然、息を詰まらせたように大きく目を見開いた。
補助のために同調したギルガ先生が、私の底なしの魔力量をダイレクトに感知してしまったのだ。
(もしかして……魔力が無限なのか……!?)
ギルガ先生の顔から、一気に大量の冷や汗が噴き出す。
「おいおいおい……嘘だろ、なんだ……っ!? 嬢ちゃん、あんたの中に流れてるこの魔力……底が全く見えねえぞ……!」
まるで、果てしなく広がる大海原の前にたった一人で立たされているかのような圧倒的な質量。
元Aランク武術家として数々の修羅場をくぐり抜けてきたギルガ先生でさえ、その底知れない魔力の海を前にして、驚愕のあまり体が強張っていた。
「ギルガ先生……?」
「……フゥ、ハハハ! いや、驚いたぜ。キースの話は大袈裟じゃなかった、いや、それ以上だ!」
ギルガ先生は荒くなった息を整えながら、今度は武術家としての強烈な興奮を瞳に宿して大爆笑した。
「よし、感覚は今ので分かったな? その莫大な魔力を常に循環させられるよう、俺の補助に合わせて少しずつ動かしてみるんだ!」
「はい!」
ギルガ先生の正確なリードのおかげで、私は初日にして、本来なら何日もかかる基礎的な魔力操作の感覚をなんとか身に付けることができた。
「その体に流れている感覚を忘れずに寝ているときも常に流し続けろよ!」
「はい!ありがとうございました、先生!」
夕方、授業の終了を告げると、ヴィンセント先生もギルガ先生も、すっかり私という存在に惚れ込んだような熱い視線を送ってきた。
「明日からは、私の持てる知識のすべてをあなたに叩き込む。しっかりついてきなさい」
「おう、俺も他のことも全部教えてやるから覚悟しとけよ!」
二人の優秀な家庭教師のやる気に完全に火がついた。迫り来る四月の学園入学、そして残りの六割の開拓。両方を完璧に進めるための初日は、最高の形で幕を閉じたのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
家庭教師の先生方による授業初日、アルカちゃんの規格外っぷりがさっそく炸裂しましたね。
ヴィンセント先生が出した学園入学レベルの試験問題をスラスラと解いて驚愕させ、午後にはギルガ先生の補助を受けながら、内に眠る圧倒的な魔力量の片鱗を見せつけて冷や汗を流させました。冷徹なヴィンセント先生も豪快なギルガ先生も、アルカちゃんの才能を前に驚きながらも、完全に教え甲斐を感じてやる気に火がついているのが最高に格好良かったです。未履修の歴史が白紙だったのも五歳児らしくて愛らしかったですね。
ここから始まる英才教育と、残り六割の領地開拓の両立が、一体どんな素晴らしい経済効果を生み出していくのか今から本当に待ちきれませんね!
「ヴィンセント先生の冷徹な命令形が最高にシビれる!」「ギルガ先生がアルカの魔力が無限であることに気づいて冷や汗を流すシーンが爽快!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページから【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、つむ教授の執筆エネルギーがさらに無限(∞)になります!
次回もどうぞお楽しみに!




