インフィニティと、神級の魔導書
お読みいただきありがとうございます、つむ教授です!
第3話『神界の三連リールと、最上位の二冠』では、驚異の強運で最上位のスペシャルスキルを二つ同時に仕留めたアルカ。
第4話の舞台は、その直後。神界のスロット後半戦です!
目の前に並び立つのは、世界の限界突破を示す【虹色】のマシンと、神級スキルの最高位枠を示す【金色】のマシン。
アルカが引き当てる【魔力無限(∞)】、そして大当たりで獲得する神級スキル『召喚術』のシビアで強力なルールとは――。
ラスト、現実世界に戻ったアルカが引き起こす教会のトホホな大騒動までぜひお楽しみください!
通常スキルを3つ、そしてスペシャルスキルを2つ。
自分の想像を遥かに超える強力なスキルセットを引き終えた私に、創造神エレシアはさらに深く、慈愛に満ちた笑みを向けた。
「さあ、アルカ。ここからが、君だけの特別な運命の選択だよ」
エレシアに促され、私は3つ目のスロットマシンの前に立つ。
これまでの落ち着いた色合いの筐体とは明らかに異なり、そのマシンは世界の限界を突破した証であるかのように、神秘的な【虹色】の輝きを放っていた。
画面に浮かんでいる文字は『インフィニティ・スロット』。
「これは、君のステータスの一部を無限化させるためのスロットだ。レバーを引きなさい」
ごくり、と喉が鳴った。
前世では確率論や統計学を教えていたこともある。だが、この神の領域の確率だけは、私の知識でも弾き出せない。私は意を決して、そのレバーを一気に引き下ろした。
ガガガガガガッ!!!
虹色の筐体ひが激しく明滅し、光の尾を引きながら目にも留まらぬ速さでリールが回転する。そして、引いた勢いのまま――ピタリ、と1つの絵柄で停止した。
そこに浮かんでいたのは、歪みのない綺麗な『∞(インフィニティ)』の記号。
「……おめでとう。まさか、それを引き当ててしまうとはね」
女神エレシアが、感嘆したように息を漏らす。
「君の【魔力】の限界値は消滅した。これから先、君がどれだけ魔法を使おうとも、君の魔力は永久に減ることはないよ」
「魔力が……無限(∞)……?」
前世の脳が瞬時に計算を始める。エネルギーの消費が常にゼロ。おいおい、熱力学第一法則(エネルギー保存の法則)はどこへ行ったのよ。つまり、あらゆる魔法の最大ボトルネックである「魔力枯渇」のリスクが完全に消滅した、永久機関の完成というわけだ。とんでもない大当たりを引いてしまった。
驚愕で立ち尽くす私に、エレシアは最後、4つ目のスロットマシンを指し示した。
これこそが、この世界で勇者や聖女、あるいは私のような【無限術士】になる素質がある者だけに許された、最高位の枠。
『エクストラスキルスロット』。
現れたそのマシンは、神の領域の最奥を示すかのように、眩いばかりの【金色】に神々しく輝いていた。
「これが最後だよ、アルカ。君の素質がもたらす神級の力を、その手で掴みなさい」
心臓がドクドクと高鳴る。私は震える手を伸ばし、金色のレバーを力任せにガコン、と引き下ろした。
リールが静かに、だが確実な重みを持って回転する。
やがて、画面が眩い光を放ち、そこに刻まれたスキルの名がはっきりと浮かび上がった。
『召喚術』。
「素晴らしい引きだ。君が手に入れた神級の能力は――『召喚術』。魔力と魔石を使って、あらゆる存在を生み出し、従える力だよ」
エレシアは驚く私に、その召喚術の具体的な仕組みを説明し始めた。
「ステータス画面を開いてから『召喚術』と念じるか口に出してごらん。君の前に、世界に一冊だけの【魔導書】が空中に浮かんだ状態で出現する。この魔導書はいつでも自由に出し入れができるし、手を使わずに念じるだけでもページをめくったり操作したりできるからね」
空中に浮かぶ魔導書。念じるだけでページがめくれる仕様。前世の感覚で言えば、空間に投影されたホログラムディスプレイを脳波で操作するようなものか。最高のユーザーインターフェースじゃない。
「そう。ただし、この召喚術には厳格なルールがある。召喚獣はランクが上がるにつれて必要な消費魔力が莫大になっていくけれど、魔力が無限の君ならそこは問題ないね。……けれど、生成には対応したランクの【魔石】が絶対に必要になるんだ」
女神は私の目をまっすぐ見つめ、人差し指を立てた。
「スペシャルスキルの『次元統括』の収納空間の中に、必要な魔石が入っていなければ生成はできない。条件を満たしていれば、そこから自動で消費されるよ。たとえば、強力な【Aランク召喚獣】を生成したければ、【Aランク魔石10個】、【Bランク魔石100個】、あるいは【Sランク魔石1個】のいずれかが『次元統括』に収納されていることが絶対条件だ」
なるほど、等価交換のルールか。魔力は無限でも、素材となる魔石のランクと数は誤魔化せない。非常に合理的で、私好みのシビアなシステムだ。
「召喚獣はランクが上がるれば上がるほど、呼び出せる種類も変わり、その強さも桁違いになっていく。そしてね、その強力な召喚獣を従えるほど、【召喚獣の加護】によってアルカ自身のステータスも少しずつ強くなっていくよ。……さあ、すべての能力は君の手に渡った。新しい人生を、どうか満喫しておいで」
エレシアは優しく私の頭を撫でると、穏やかに微笑んだ。
その瞬間、私の意識は再び温かい純白の光に包まれ、神界の神殿が急速に遠ざかっていく。
◇
「――はっ!」
ハッと目を開けると、視界に飛び込んできたのは教会の天井だった。
胸の前で両手を合わせた「祈りのポーズ」のまま、私は現実世界へと戻ってきたのだ。
「アルカ! 大丈夫か!?」
「急に気を失うみたいに動かなくなるから心配したぞ!」
駆け寄ってくる父クラウスと兄レオン。私は「大丈夫、なんともないわ」と言おうとしたが、それよりも早く、祭壇の横で私の魔力を測っていた神官が、悲鳴のような声を上げた。
「な、んだこれは……!? 測定器の、魔力水晶の輝きが、止まら、な――」
パキンッ!!!
神官が抱えていた、国の予算で数個しか買えないという高価な魔力測定器の水晶が、凄まじい音を立てて粉々に爆砕した。
堂内に破片が飛び散り、神官は白目を剥いてその場にバタリと泡を吹いて倒れ込む。
「し、神官様!? おい、どうしたんだ!」「測定器が壊れた……? アルカ、お前一体どんな力を……。あ、あれって国の予算レベルで高いやつだよな? べ、弁償、か……?」
急激なやらかしを前に、元冒険者であるはずの父クラウスと母エレナが揃って顔を青ざめさせている。
そんな騒然となる教会の中で、私は自分の手を見つめる。
神界で手に入れた、最強スキルの組み合わせ。
のんびり快適な領地経営をするには十分すぎる、というか、明らかに過剰すぎる力を手に入れてしまった実感が、じわじわと背筋を伝っていった。
第4話をお読みいただき、ありがとうございました!
虹色のスロットで【魔力無限】、そして金色のスロットから空中に浮かび脳波で操作できる神級スキル『召喚術の魔導書』を手に入れたアルカ。
召喚獣のランクが上がるほど種類も強さも変わり、自身のステータスに加護がつくという、ハクスラ好きにはたまらない超万能設定が明かされました。
なのに、現実に戻った瞬間に国の予算レベルの測定器を大爆発させ、パパママが弁償を恐れて青ざめるトホホな事態に……。
次回、第5話。田舎教会では手に負えないこの規格外のステータスを読み解くため、アルカたちははるか遠方の総本山にいる『帝国の教皇』の元へ会いに行くことに!?
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次回もどうぞお楽しみに!




