神界の三連リールと、最上位の二冠
お読みいただきありがとうございます、つむ教授です!
第2話『門外の青竜と、返還されし三分の一』では、パパとママが実力で領地をもぎ取る熱いドラマをお届けしました。
第3話の舞台は、あれから月日が流れたアルカ5歳の【鑑定の儀】。10歳で『剣豪』のレオン、8歳で『大魔道士』のソフィアという優秀な兄姉に、教会へ向かう馬車の中で応援され、アルカの意識がいよいよ神界へと呼び出されます。
そこで待っていたのは、美しい女神エレシアと、まさかのスロットマシン!?
ひと振りのレバーが一発で弾き出す、最強スキルの組み合わせの第一歩をぜひ見届けてください!
ルートハーバー男爵領へ移り住んでから、瞬く間に月日が流れた。
この世界での新しい生活にもすっかり慣れた私は、無事に5歳の誕生日を迎えた。
正式な貴族となって初めて迎える今日、私はこの世界の誰もが通る人生の節目――『鑑定の儀』の日を迎えている。
「アルカ、緊張しなくていいからな。気楽にいこうぜ! もし俺みたいな『剣豪』のような素質が出たら、毎日俺が稽古をつけてやるからな!」
「もう、レオンはすぐそうやって脳筋なことを言うんだから。アルカは私に似て大人っぽくて賢いんだから、きっと最高に綺麗な『大魔道士』のようなスキルが出るわ。お姉ちゃんが保証する!」
教会へ向かう馬車の中で、私を挟んで賑やかに笑い合っているのは、私の自慢のきょうだいたちだ。
10歳になった兄のレオンは、日々熱心に木剣を振るっており、その素質は国でもそうそうお目にかかれないほど珍しい『剣豪』の素質。
8歳になった姉のソフィアは、毎日机に向かって熱心に魔法の勉強を頑張っており、その素質は、これまた滅多に現れないかなり珍しい『大魔道士』の素質。
元Aランク魔術剣士の父クラウスと、元Bランク僧侶の母エレナの血を引いているとはいえ、我が家のきょうだいたちはたまたま奇跡的な素質を引き当てたらしい。
そんな天才きょうだいたちに頭を撫で回され、ほっぺをすりすりされながら、私は内心で小さく息を吐く。
(あぁ……中身はおばさんに近い38歳の元大学教授なのに、10歳と8歳の子どもにここまで子ども扱いされるのは、精神的に非常に妙な気分だわ……。まぁ、悪い気はしないけれど)
そんなアットホームなやり取りをしているうちに、馬車はルートハーバー領の地元の教会へと到着した。
厳かな空気の漂う教会の奥へと進む。
祭壇には、この世界を創ったとされる創造神の美しい石像が佇んでいた。
「ルートハーバー男爵令嬢、アルカ・ルートハーバー様。前へ」
神官の厳かな声に促され、私は一歩前へ出る。後ろでは父と母が心配そうに見守っていた。
石像の前に立ち、小さく息を吐き出すと、私は胸の前でそっと両手を合わせる「祈りのポーズ」をとった。
その瞬間だった。
ピカッ――!!!
教会の堂内が割れんばかりの、眩い純白の光が私の視界を瞬時に埋め尽くした。
神官の驚愕する声や、両親が私の名前を呼ぶ声が急速に遠ざかっていく。私の肉体は教会の床に祈りを捧げたまま――私の「意識だけ」が、凄まじい速度で上空へと引き上げられていった。
◇
気がつくと、私は雲の上に浮かぶ、神界の神殿のような空間に立っていた。
「ようこそ、一ノ瀬あさひ。――いいえ、いまはアルカだね」
鈴の鳴るような、酷く清らかで美しい声が響く。
振り返ると、そこに佇んでいたのは、慈愛に満ちた微笑みを浮かべる絶世の美女だった。
背後から神々しい光を放つその女性の名前を、私は本能的に理解する。
この世界の創造神、エレシア。
「……私の前世の名前を知っているのですね」
「もちろん。私が君をこの世界へ招き入れたのだから。君にはね、この世界で『無限術士』の素質があるんだよ」
女神エレシアは優しく微笑むと、その白く美しい手で、自分の背後を指し示した。
そこには、周囲の神聖な空気に溶け込むようにして、重厚な鉄のレバーが付いたスロットマシンが静かに並んでいた。カジノのような悪趣味なギラギラしたものではなく、世界のシステムそのものが形を成したような、落ち着いた色合いの機械だ。
「さあ、アルカ。そのレバーを引いて、君の能力を決定させなさい」
目の前の光景に、前世の学者としての脳が一瞬「なぜスロット?」とツッコミを入れそうになった。
通常の鑑定の儀であれば、神様がその人の素質に見合った能力をランダムで直接与えるのがこの世界の理。しかし、私の持つ【無限術士】という特殊な素質だけは、この神界のスロットマシンを自らの手で回して能力を勝ち取る仕組みらしい。
私は意を決して、一番左側にあるスロットマシンの前に立った。
画面の上には『スキルスロット』と文字が浮かんでおり、カジノによくある、3つのリールが横に並んだ画面構成になっている。
「まずは通常スキルだね。レベルが上がると能力が進化していく、この世界の基本となる力だよ。レバーを引きなさい」
「……いきます」
私は小さな手を伸ばし、重みのある鉄のレバーを開放するように、ガコン、と引き下ろした。
凄まじい速度で3つのリールが同時に回転し、ピタ、ピタ、ピタと横一列に絵柄が揃っていく。
揃った3つの文字を見て、女神エレシアが静かに解説を口にする。
「『守護結界』、『風土豊盛』、さらに『統治統計』。通常スキルは以上の3つだよ。どれも君がこれから歩む道において、大いなる助けとなる素晴らしい力だよ」
なるほど、領地を管理するうえで有用そうなスキルばかりだ。私がホッと胸を撫で下ろしていると、エレシアは隣の、2つの画面が横並びになったスロットマシンへと私を促した。
上部に浮かぶ文字は『スペシャルスキルスロット』。
「次はスペシャルスキルだ。これもレバーを引きなさい。最上位のスキルが出る確率は5割。さあ、君の運を試しなさい」
ごくり、と二分の一の確率に唾を吞み込み、私は2つ目のレバーへと手をかける。
ガコンッ!!!
同時に回った2つのリールが、眩い光を放ちながらピタリと停止した。
弾き出された2つの特別な絵柄を見て、女神エレシアの瞳が、驚きにわずかに細められた。
「……見事だね。『次元統括』に、『万象真眼』。空間そのものを統括し、世界のあらゆる真実を読み解く、最上位のスキルを引き当てるなんて」
自分の引きの強さに少しだけ背筋が寒くなるのを感じながら、私は残された2つのスロットマシンを見つめた。
通常スキルとスペシャルスキルを終え、並んでいるのは、明らかに異質な雰囲気を放つ後半の2台。
創造神エレシアは、私の驚きを見透かすように、さらに深く、慈愛に満ちた笑みを深めるのだった。
第3話をお読みいただき、ありがとうございました!
通常スキル3つに加え、一発のレバーオンで最上位のスペシャルスキル『次元統括』と『万象真眼』を同時に引き当ててしまったアルカ。
本人はのんびり快適な領主生活を送りたいだけなのに、すでに引きの強さが英雄レベルです。
次回、第4話『インフィニティと、神級の魔導書』。残された2台のスロットマシンが、アルカの運命を完全に限界突破させます。
弾き出される【魔力無限(∞)】の記号、そして最後に出現する【神級スキル】の最高位枠で獲得する規格外の【召喚術】!
女神から魔導書や魔石の等価交換ルールを説明され、現実の教会に戻ったアルカを待ち受けるのは、高価な測定器のバキバキの大爆発――!?
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