第三十八話 初めての魔獣討伐と、異次元のスピード
お読みいただきありがとうございます。つむ教授です!
第37話では、第36話で男爵邸の庭に新たな仲間であるストーン、ウルフ、ヤンマ、イーグル、アズキを迎えた後、一ヶ月に及ぶ剣術特訓やアズキの「癒しの葉」の量産など、開拓に向けた準備を整えました。木こりや冒険者ギルドの護衛も手配し、季節はいよいよ心地よい秋を迎えます。
今回の第38話からは、いよいよ未開拓の魔獣の森へと足を踏みに入れます!
森の入り口でアルカたちの前にぬっと姿を現した、野生のスライム。
パパの「成果を見せてごらん」という言葉に背中を押され、今日からの魔獣討伐のための短剣を抜いたアルカ。百体の召喚獣の加護が重複してかかった、5歳児とは思えない異次元の踏み込みスピードに、プロの冒険者たちが顎を外して驚愕する爽快な一幕をお楽しみください。
領主の街ランバートから5km離れた、未開拓の魔獣の森。
秋の涼しい風に揺れる木々の葉をかき分けながら、私を先頭にした開拓チーム一同は、ついにその鬱蒼とした森の入り口へと足を踏み入れていた。
今回の一大プロジェクトにあたり、雇った腕利きの木こりたちは安全を考慮して、一番街の近くから順番に木を切り倒してくれている。見通しを良くするための伐採作業はすでに始まっているのだ。
森の入り口で周囲を固めるのは、パパとルーク、そして冒険者ギルドから派遣された冒険者パーティーとソロの2人だ。
薄暗い森の中に一歩入ると、張り詰めた緊張感が場を支配する。
そのとき、草むらがガサガサと揺れ、私たちの行く手を阻むようにぬっと一体の魔獣が姿を現した。
べっとりとした半透明の体を揺らす、野生のスライムだ。
「スライムだ!」
冒険者の一人が声を上げる。新人でも簡単に倒せるような最下級の魔獣だ。
「アルカ、あれならお前でも倒せるだろう。一ヶ月間みっちりと教えた成果を見せてごらん」
「ええ、パパ! 私にやらせてみて!」
パパが頼もしそうに微笑んで背中を押してくれた。私は腰のベルトから、今日からの魔獣討伐のためにパパから手渡されていた護身用の短剣をすらりと引き抜いた。
5歳の私の小さな手に馴染む、鉄の短剣。
(ふふ、一ヶ月間みっちりとパパに基本を叩き込まれた成果を、ここで試させてもらうわ。それに何より……Fランクの召喚獣たちから得た重複した加護が、どれほどのものか見ておきたいものね)
現在の私は、カード化してストックできる上限、つまり召喚できる最大である百体まで召喚獣を魔導書に保有している。一つのタイプにつき二十体、合計五つのタイプでちょうど百体だ。その加護が重複して私にかかっているために、今の私は熟練の冒険者並みの敏捷力や体力を手に入れている。
短剣を順手で構え、スライムへと視線を定める。
その瞬間、私の視界の世界が、まるでスローモーションのようにゆっくりと動き始めた。知力と敏捷力の凄まじい上昇により、私の動体視力と脳の演算速度が完全に人間の能力を超えていた。
スライムが体を縮め、こちらへ跳びかかろうと動く。その全ての軌道が、今の私には止まっているかのように丸見えだった。
トォンッ!
私は小さな足で、思い切り大地の土を蹴り上げた。
「――っ!?」
後ろで見守っていたプロの冒険者たちの間で、短い絶句の息が漏れる。
次の瞬間、私の体は文字通り「消えた」。
加護によって爆発的に引き上げられた敏捷力による踏み込みは、プロの風を裂く速度を遥かに領駕していた。一瞬の残像すら残さず、私は一歩でスライムの完全に真横へと回り込んでいた。
目にも留まらぬスピードのまま、手際よく短剣を横一閃に振り抜く。
サクッ!
小気味よい音が響き、スライムの体内にある核が、一撃で綺麗に真っ二つへと切り裂かれた。
核を失ったスライムの体は、空気中へと溶けていき、その場にはキラキラとしたスライムゼリーと、小さな魔石だけが残された。
直後、私の視界に、ステータスのような画面が浮かび上がってきた。
【初めてFランク魔獣を討伐しました。経験値を10ゲットしました。】
【スライムを一体倒しました。経験値を10ゲットしました。】
【レベルが1上がりました。】
経験値は白色の、レベルは黄色の文字で出てきた。
(やっぱり直接魔獣を倒すとレベルが上がる仕組みだったんだわ)
「パパ!レベルが上がったって!」
私が短剣をサッと鞘に収め、自身の成長にほんわかと満足して振り返ったとき、背後の光景は凄まじいことになっていた。
「な、なんだ今のスピードは……!? 目が、追いつかなかった……!」
「嘘だろ!? 5歳の子供の踏み込みが、俺たち冒険者より速いなんて、そんな馬鹿なことがあってたまるか!」
プロの冒険者たちが揃って顎が外れそうなほど驚愕し、自分の目を疑うようにガタガタと震え出していた。スライムを倒したことではなく、私の見せた異次元の移動速度に、彼らの常識が完全に粉砕されたのだ。
パパもルークも、あまりの衝撃に言葉を失い、固まったまま私を凝視している。
「あ、アルカ……。お前、一ヶ月の訓練で一体どれだけの領域に到達したんだ……?」
パパが冷や汗を流しながら、信じられないものを見るような声を絞り出した。どうやら、加護の数値を直接知らないみんなにとっては、私の身体能力は5歳にしてはおかしく見えるらしい。
私はそんなみんなの驚きを背に受けながら、ニカッと楽しそうに微笑み、空中に【魔導書】を出現させた。
(ふふ、加護の力は想像以上ね。これで私のレベルも上がったわ! さあ、ここからは召喚獣の能力を見てみましょう。邪魔な魔獣たちをどんどんお掃除していくわよ!)
開拓を爆速で終わらせ、マクロ経済学の拡大再生産を始めるための準備は万全だ。私は胸を高鳴らせながら、新しい仲間たちの実力を試すため、魔導書のページをパラパラとめくり始めるのだった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
パパに教わった基本と、Fランクの仲間たち百体分の重複加護により、熟練の冒険者並みのスピードでスライムを一撃討伐したアルカ。核をサクッと切り裂かれ、スライムゼリーと魔石を残して空気中に溶けていくスライムの描写や、視界に浮かぶ「経験値を10ゲットしました。レベルが1上がりました。」の画面にはゲーム的なワクワク感がありましたね。
5歳にしてはおかしな動きを見せる愛娘に冷や汗を流すパパや、ガタガタ震える冒険者たちのリアクションも最高でした!
「アルカちゃんの異次元のスピードとニカッと笑う笑顔が可愛い!」「ここから始まる新しい召喚獣たちの能力お披露目バトルが待ちきれない!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページから【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、つむ教授の執筆エネルギーがさらに無限(∞)になります!
次回もどうぞお楽しみに!




