第十七話 新しいお友達と、次なる改革
お読みいただきありがとうございます、つむ教授です!
第16話『土魔法のバグ召喚獣と、寝落ちしない五歳児』では、神級スキル『召喚術』によって、インフラ整備に特化しすぎた優秀なモグラを呼び出したアルカ。
直後に襲いかかってきた猛烈な眠気との死闘に見事気合で完全勝利し、今回は寝落ちせずに意識を保つことに成功しました!
第17話の舞台は、その直後の自室ベッドの上から始まります。
手のひらサイズでちんまりとした新たな相棒に、アルカが5歳児の可愛さと前世の知性を交えて名前を授ける「名付けイベント」!
しかし、アルカのネーミングセンスにモグラの反応は――!?
そして、スキルの検証で外に行くついでに立ち寄ったリビングで待つ、パパとママの三度目の大いなる勘違いをぜひお楽しみください!
強烈な眠気との死闘に気合で完全勝利し、私はなんとか意識を保ったままベッドの上に座っていた。
冷え切った頭を軽く振り、片手に乗るほどちんまりとした目の前のモグラを見つめる。
これから私の領地経営の要となるインフラの専門家だ。さっそく名前を考えてあげなくてはならない。
「ねぇ、きみの名前だけど、『ディグ』っていうのはどうかしら?」
私が5歳児の可愛い声で安直に呼びかけると、モグラは不服そうにフンと鼻を鳴らし、ぷいっとそっぽを向いてしまった。
(あら、お気に召さなかったかしら。可愛いと思ったのだけれど……。だったら、もっと地質学的に知的でプロフェッショナルな名前を提案してあげるわ)
私はまたもや前世の学者脳を暴走させ、幼児の見た目でベッドの上のモグラへと一気にまくしたてた。
「じゃあグラント! それともロック! いや、ソイルがいいかな?」
地盤、岩、土壌。私の口からポンポンと飛び出すガチすぎる専門用語のオンパレードに、モグラは「名前が硬すぎる!」と言いたげに、両前足で顔を覆って全力で首を横に振っている。
その焦げ茶色のふわふわとした愛くるしい毛並みをじっと見つめているうちに、私の頭の中に、ある可愛らしい名前がふっと浮かび上がった。
「ふふ、じゃあ……『モカ』はどうかしら?」
私が優しい笑みを浮かべてそっと語りかけると、モグラは一発で「それだ!」とばかりにつぶらな瞳を輝かせた。
「きゅきゅっ!」
嬉しそうに短い尻尾をパタパタと動かして、私の手のひらにすりすりと体を寄せてくる。どうやら最高に気に入ってくれたらしい。
白い小鳥のスノウと、茶色のモグラのモカ。カラーコンビとしての語呂も完璧だ。
「よろしくね、モカ。さぁ、さっそく外に出てモカのスキルの検証へ行きましょう。そのついでに、パパとママにもきみを紹介してあげるわね」
私は自室のベッドから降りると、左の肩にスノウ、右の肩にモカをちょこんと乗せた。両肩にちんまりとした可愛い子たちを乗せた私のビジュアルは、客観的に見ても完璧な5歳児の愛らしさだ。
私はトコトコと歩き、外へ向かう途中でリビングにいるパパとママの元へ立ち寄った。
「パパ、ママ! アルカ、新しいお友達を『召喚術』したの!」
幼児の可愛いカモフラージュの声を響かせてお披露目した瞬間、パパとママは三度目の完全な硬直をみせた。
最初は「あら、また可愛い子が……」と微笑みかけていた二人だったが、その瞳の色が、また一瞬で元実力派冒険者のものへと切り替わる。
モカの小さな体から溢れ出す、尋常ではない魔力の気配に、またしても本能的に気づいてしまったらしい。二人の顔からみるみる血の気が引いていく。
「ク、クラウスさん……朝スノウちゃんを呼んだばかりなのに、続けて二匹目の聖獣を『召喚術』するなんて……」
「ああ、間違いない。エレナ、これって聖獣、いや、それ以上だぞ……っ! そうか、なるほど、そういうことだったのか……!」
ガタガタと震え出したパパが、納得の表情で深く頷き、ママの肩を掴んだ。どうやら大人の脳内補完は、私の想像を遥かに超える領域へと進化を始めたらしい。
「昨夜のあの儀式の光は、スノウちゃん一匹だけではなく、こうして次々と聖獣を呼び出すための、天界と繋がった神聖な光だったんだな……! それをパパは、壊れた照明の爆光かと勘違いして……あぁ、なんて情けない父親なんだ……っ!」
パパは自分の早とちりを恥じるように頭を抱え、ママは感動の涙を浮かべて深く深く頷いている。
(あぁ、よかったわ。昨夜の照明魔導具を爆光させた魔導具音痴が、また勝手に脳内補完されたわね。助かったわ)
前世の頭で胸を撫で下ろし、完璧なすれ違いに内心でくすりと苦笑いを浮かべる。パパとママが「アルカの才能は世界を揺るがす……」と戦々恐々としながらデレデレな親の顔で私を抱きしめてくる。
(よし、さっそくモカの『土魔法』を使って、領内のガタガタな未舗装路の大改革――【道路】の舗装率を一気に引き上げる仕込みを始めましょう!)
のんびり快適な暮らしを完璧にするため、私は私の知識で、何があっても絶対に守り抜いてみせる。
両肩の上のスノウとモカをそっと撫でながら、私は心の中でニヤリと不敵な笑みを浮かべるのだった。
第17話をお読みいただき、ありがとうございました!
新しく仲間になった優秀なモグラに名前をつけるアルカ。
5歳児の見た目で「グラント! ロック! ソイル!」とガチすぎる地質学の専門用語をまくしたてるギャップが最高に面白かったですね。最終的に、焦げ茶色の毛並みから『モカ』という最高に可愛い名前に決定! 白い小鳥の『スノウ』と並んだ「スノウ&モカ」の癒やし系マスコットコンビが完璧に誕生いたしました。
モカのスキルの検証へ行くついでにリビングへ立ち寄り、パパとママへお披露目したアルカでしたが、両親は三度目の完全硬直!
元実力派冒険者の鋭い眼光によって、モカの宿すの異常な魔力気配を一瞬で見抜いてしまいました。
昨夜の魔導具音痴による爆光を、パパとママが勝手に「次々と聖獣を呼び出すための神聖な光だったんだわ……!」と脳内補完を進化させ、パパが「なんて情けない父親なんだ……」と頭を抱えて涙ぐむ姿、本当に微笑ましいです。
パパママの勘違いをよそに、アルカの頭脳はすでに次なる内政の仕込みへと動いています。
モカの『土魔法』を使い、領内のガタガタな未舗装路を大改革して【道路】の舗装率を一気に引き上げる完璧な計画。
次回、第18話。
アルカとモカによる、ルートハーバー男爵領のガタガタ道を一変させる「爆速道路舗装イベント」がいよいよ始まります!
「モカちゃんとの名付けラリーが可愛い!」「パパの安定の不憫さに笑った!」と思ってくださった方は、ぜひ作品ページから【ブックマーク登録】や【評価の☆☆☆☆☆】をポチッと押して応援していただけると、つむ教授の執筆エネルギーがさらに無限(∞)になります!
次回もどうぞお楽しみに!




