天星鳥の名付けと、五歳児のカモフラージュ
お読みいただきありがとうございます、つむ教授です!
第9話『温き食卓の誓いと、寝落ち寸前の召喚術』では、魔力無限の加減が分からずに部屋の照明を爆光させてしまい、幼児の眠気へと耐えきれずに寝落ち寸前になりながらも、初めての召喚に手をかざしたアルカ。
第10話の舞台は、その翌朝です。
強制シャットダウンから目を覚ましたアルカの布団の中にいたのは、信じられないほど愛らしい「白い何か」でした。
さらに、昨夜のやらかし(爆光フラッシュ)をパパとママから優しく追及されてしまう大ピンチが到来!?
5歳児の可愛い声で必死に誤魔化そうとするアルカの、カモフラージュ作戦の行方をぜひお楽しみください!
ちゅんちゅん、と小鳥のさえずる声で、私はゆっくりと意識を浮上させた。
カーテンの隙間から、心地よい朝の太陽の光が自室へと差し込んでいる。
(……あぁ、やってしまったわ。完全に記憶が途切れているもの)
前世の頭をフル回転させて知性を暴走させたせいで、幼児特有の強烈な眠気に敗北し、ベッドの上で強制シャットダウンを喰らってしまったのだ。
どうやらパパに運ばれた姿勢のまま、朝まで一歩も動かずに熟睡してしまったらしい。
のどが渇いたし、お腹もぺこぺこだ。
(……ん? なんだか、胸のあたりが妙に温かくて重いわね)
掛け布団の膨らみを見つめると、私の胸の上で、何かが丸くなってスースーと規則正しい寝息を立てていた。
そっと布団をめくってみる。
そこにいたのは、手のひらにすっぽりと収まりそうなほど小さな、一羽の小鳥だった。
(……あら? 何かしら、この信じられないほど可愛い生き物は)
それは地球で言うところの『シマエナガ』を、さらに真っ白でふわふわにしたような究極の癒やし系小鳥だった。
雪の精霊と言われても信じてしまうほど、丸くて愛らしいフォルムをしている。
昨夜の寝落ちする直前、私は確かに『召喚術』の魔導書に手をかざしていた。
(ということは、まさか無意識の状態で、本当に初めての召喚に成功していたの……!?)
私はごくりと唾を呑み込み、頭の中で静かに念じて、あのスペシャルスキルを発動させた。
(――万象真眼――)
目の前の小鳥のステータスが、私の脳内へ克明に看破される。
表示されたバグウィンドウを見て、元教授としての私の学者脳は、今度こそ完全にフリーズした。
『種族:天星鳥※変異種』
『ランク:G』
『個体能力:【幸運の風土加護】』
『スキル:【天候操作・微細】【絶対守護(小)】』
(……ちょっと待って。これ、本当に一番下のGランク召喚獣なの……!?)
魔石不要で作れる最低ランクの獣のはずなのに、中身が完全に規格外の化け物だった。
私の持つパッシブ能力【魔力無限(∞)】のエネルギーを、生成時の無意識の状態で極限まで吸い上げて生まれてしまったらしい。
個体能力の【幸運の風土加護】は、この子がそばにいるだけで領地全体の農作物の品質が勝手に跳ね上がるという、とんでもない内政チートだ。
見た目はただのふわふわした可愛い小鳥なのに、その気になれば領地全体の気候を操作できる出力を秘めている。
(……はは、またやらかしてしまったわ。魔力コストがゼロだからって、出力の加減をしないとこうなるのね)
自分の致命的な魔導具音痴に冷や汗を流していると、その時、私の胸の上の天星鳥が、ぱちりと小さな黒豆のような瞳を開けた。
私の顔をじっと見つめると、嬉しそうに羽をパタパタと動かす。
「……きゅい!」
可愛い鳴き声を上げて、私の頬へとすりすりと体を寄せてきた。
あまりの愛らしさに、前世の孤独な人生では味わえなかった強烈な癒やしが、私の心をじんわりと満たしていく。
成果を出さなくても、この子は私を全力で慕ってくれているのだ。
「うん、きみはとってもまっしろだから……お名前は『スノウ』ね」
私が小さな指先でその頭を優しく撫でながら名前を呼ぶと、小鳥はさらに嬉そうに「きゅいきゅい!」と鳴いて私の手のひらで転がった。スノウ、これからよろしくね。
そんな癒やしの時間を過ごしていると、トントン、と部屋のドアが控えめにノックされた。
「アルカ、おはよう。もう起きているかい……?」
入ってきたのは、パパのクラウスとママのエレナだった。
パパはいつも通りのデレデレな笑顔を浮かべようとしていたが、その顔はどこかタジタジとしており、完全に胃を痛めたような顔で私を覗き込んできた。
「アルカ、おはよう。……ところでね、パパとママから、ちょっと大切なお話があるんだ。昨日の夜、お前の部屋から、まるで雷が落ちたかと思うほどの大爆発みたいな光が漏れていたんだが……一体何があったんだい?」
(しまっ……! 昨夜の照明魔導具を爆光させたやらかし、バッチリ見られていたわね……!)
私は内心で激しく冷や汗を流した。
ここで前世の頭のまま難しい言い訳をすれば、五歳児として一発で不審がられてしまう。
私は必死に幼児の可愛い声を意識して、たどたどしく首を傾げてみせた。
「うんとね、パパ、ママ、おはよー! あのね、よるにね、きらきらーってしたの! そしたらね――ほら、みてみて! スノウっていうの!」
私はベッドの上で羽を休めている真っ白な小鳥を、小さな両手でそっと包み込んで、二人へと差し出した。
大人の追及の視線を、この可愛すぎる規格外の召喚獣へと力ずくで誘導して誤魔化す(カモフラージュ)作戦だ。
「えっ……? 鳥……?」
パパとママが目を見開いて硬直する。
幼児の全力のカモフラージュを前に、すれ違いの歯車は誰にも止められない速度で回り始めていた。
第10話をお読みいただき、ありがとうございました!
朝起きると、アルカの胸の上でスースーと眠っていたのは、真っ白でふわふわなシマエナガに似た可愛い小鳥『スノウ』でした。
魔石不要の最低ランクであるはずのGランク召喚獣ですが、アルカの【魔力無限】を極限まで吸い上げて生まれてしまった結果、その場にいるだけで農作物の品質を跳ね上げる【幸運の風土加護】や、天候を操るスキルを持った、中身がとんでもなく規格外なバグ小鳥へと変異していました(笑)。
前世の孤独な人生では味わえなかったスノウの無条件の愛に、じんわりと癒やされているアルカの姿、本当に尊いですね。
しかし、そんな癒やしの時間をぶち壊すようにやってきたのは、昨夜の照明の爆光やらかしを追及しにきたパパとママ。
ピンチに陥ったアルカは、前世の学者脳を隠し、たどたどしい幼児言葉で「きらきらーってしたの!」と言い訳しながらスノウを差し出すという、最高に可愛い誤魔化し(カモフラージュ)を敢行しました。これには元Aランク魔術剣士のパパと元Bランク僧侶のママも目を見開いて硬直するしかありませんね。
次回、第11話。アルカの手の上のスノウを見たパパとママは、そのあまりの「本質」に、かつてないほど腰を抜かすことに――!?
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次回もどうぞお楽しみに!




