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デザイナーベイビー

ボクの名前はヤマデラタイガ19才だ。

お金持ちの家に生まれた名家のお坊ちゃんだ。

父親が所有する孤島の洋館に友人たちを招待してパーティを開催した。

料理人と執事、5人の友人、ボクを含めて7人が島にいる。

パーティは大いに盛り上がった。

しかしパーティの翌日、親友のタカシが行方不明になり崖下で死体となって見つかる。

恋人のアユミはショックで意気消沈していた。

さらにその夜、小学校時代の同級生マサノリが斧で頭をかち割られて死んだ。

殺害場所は裏の森だ。

斧は執事が薪割りの時に使うものが物置にしまってある。それを使われた。

犯人に呼び出されて殺されたんだろう。

2日目の夜。ボクが所属する遺伝子研究ゼミのヒロイ教授が毒殺される。

自室で飲んだワインに毒が混入していた。

ワインは教授が自分でワインセラーから盗んだようだ。

なぜ毒入りワインを教授が選ぶと犯人はわかっていたのか?

これで生き残っているのは料理人と執事とボクとアユミとノブヒロの5人だ。

3日目の夜。リビングにみんなで集まる。

「この中に犯人がいるんじゃない?怖くて眠れないわ」

アユミはみんなを疑っている。

「内部犯とは限らないよ。ボクらに恨みを持つ何者かがボートで島に乗り付けたのかもしれない」

「だれかに恨まれる覚えなんてないよ。俺は子供頃からずっと真面目に生きてきたんだ」

太っちょのノブヒロは犯人の影に怯えてブルブルと震えてる。

「今夜はみんなで集まって寝ましょう」

執事の提案にアユミは猛反対だ。

「いやよ!この中に犯人がいるかもしれないのにいっしょに寝るなんて!寝てる間に殺されるかもしれないわ!」

「じゃあきみは1人で寝ればいいだろ。俺らは集まって寝るよ」

ノブヒロはアユミを突き放した。

「そうさせてもらうわ」

アユミは階段を登り客室に戻る。

翌朝、アユミはベッドの上で首を絞められて殺されていてノブヒロはトイレで首を吊っていた。

生き残ったボクと執事と料理人は3人で話し合う。

執事は名推理を披露した。

「ノブヒロ様がタカシ様とアユミ様とマサノリ様を殺したの犯人では?

彼は小学生の頃、アユミ様にラブレターを書いてふられてますね。

恋敵であるタカシ様を殺して好意を寄せるアユミ様への夜這いに失敗して殺した。

無茶な命令もするマサノリ様の子分でいるのがイヤになって殺した。

ヒロイ教授はたんなる自殺では?」

「かもね」

「わいはずっと料理作ってただけやで?」

「わかってる。きみのことはだれも疑ってないよ」

「ほっとひとあんしんや」

「最初の事件のあと、すぐ警察を呼んだんだ。そろそろ到着するはずさ」

ピンポーンとチャイムの鳴る音がする。

執事が出迎えに行く。

リビングに探偵姿の美少女が現れた。

「探偵の姫咲ヒカリです。刑事さんたちはあとから来る。嵐のせいで遅れてるの。あたしはヘリでひと足先に到着した」

「ボクはヤマデラタイガだ。よろしく。この島にヘリポートはなかったはずだけど?」

「パラシュートで降りた」

ヒカリはピースサインをして見せる。

表情が少ない子だな。美少女なのにもったいないね。

「事件について説明するよ」

「だいじょうぶい。電話でぜんぶ聞いてる」

「そう」

ボクは事件が起きるたびに警察に電話して状況をすべて細かく説明していた。

ヒカリは警察から電話で事件について聞いて来たようだ。

さあ、光速の推理とやらを見せてもらおうか。

ボクは腕組みしてみせた。

この事件の犯人はボクだ。

タカシは幼なじみでボクが一目惚れしていたアユミを奪ったから殺した。

高校時代、満を持してアユミに告白する寸前にタカシがタッチの差で告白してアユミと付き合い始める。

タカシとも小学生時代からの付き合いで仲が良かったから笑顔で祝福したけど内心でははらわた煮えくり返っていた。

タカシからアユミとの初体験や最近アユミが寝かせてくれないという自慢を聞くたびに殺意は跳ね上がり、あの晩、ついに初めて人を殺す。

パーティがお開きになったあと2人で夜の散歩をしようとタカシを誘って崖から突き落とした。

めっちゃすっきりした。

マサノリは小学生の頃から中学生の頃までボクをいじめていた首謀者だ。

アユミにはカッコ悪いところ見せてしまうし、タカシには助けられてしまうし最悪だった。

お金もずいぶんおどしとられてる。

復讐のために体を鍛えていたので斧は軽々と扱えた。

薪割りで鍛錬も積んだ。

マサノリに「犯人がわかった。きみだけに教える」と言って裏の森に呼び出して斧で頭をかち割った。積年の恨みを晴らせて最高の気分だったね。

ヒロイ教授はボクの論文の内容を盗用したから殺した。

学会に発表してヒロイ教授は賞賛されてる。

訴えてもボクが先に考えたと証明できない。

笑って許してあげたフリしたけど心の中は火山が噴火していた。

毒入りワインはボクがヒロイ教授に手渡した。

部類のワイン好きだからね。簡単に引っかかったよ。

昨日は夜中にこっそり起きてアユミの部屋を訪ねた。

アユミを抱いて慰めてやるつもりだったけど、断られたので首を絞めて殺す。

ノブヒロはいじめの首謀者であるマサノリの子分だったから罪をなすりつけるために殺した。

こいつにもずいぶんいじめられたなぁ。

マサノリの命令だったんだろうけど実行犯も許さない。

マサノリとノブヒロとは違う大学になり縁が切れたけど、ボクから接触して飯をおごおったり小遣いをあげて仲良くなり、リゾート地で美味い飯がたらふく食えると言って誘ったらすぐ食いついてきた。あいつらからすればカモがネギを背負って戻ってきた感覚だったんだろう。

殺されるとも知らずにマヌケな奴らだ。

自白はおしまい。

名探偵との勝負のはじまりだ。

閃光探偵のことはずっと前から知っている。

孤島で大量殺人を起こせば彼女が呼ばれることもわかっていた。

世間で評判になっている天才美少女探偵。

いまや世界的な有名人だ。

どんな難事件でも一瞬で解決に導き無実を主張する犯人の真偽も簡単に見抜く。

なぜなら他人の心を読めるから。

チートだね。

頭脳明晰なボクは思った。

超能力なんてあるはずがない。

イカサマに違いない。

なにかカラクリがあるはずだ。

彼女が解決した事件をすべてさらってみた。

たしかにどんな事件も一瞬で犯人を当てている。

彼女の推理をもとに警察が裏付け捜査すると犯人で間違いないことが証明される。

不思議だ。

ボクは寝ることも忘れて夢中で姫咲ヒカリを分析した。

いまや世界一の姫咲ヒカリマニアを自負できる。

心を読む以外の方法でどうやって犯人を特定しているのかあらゆる方法を考えた。

結論から言うと彼女は恐ろしく発達した五感の持ち主だ。

彼女は薄まった発射残渣はっしゃざんさの匂いを感知できる。

汗の匂いも余裕で嗅ぎ分ける。

緊張した時の汗の匂いはストレス臭と言ってイヤな匂いが強まるからね。

犯人は秘密を抱えるというものすごいストレスを長時間抱えているので強いストレス臭を放っているはずだ。

鼻がいいだけではなく視力も抜群にいい。

肉眼では見えないような微量な血液を見ることができるはずだ。

聴覚も飛び抜けて優れていて心臓の鼓動を聴診器なしで聞き取れる。

歩く嘘発見器だ。

だから犯人候補をいちべつしただけで犯人を特定できる。

犬は人間の30倍の嗅覚を持つ。

ダチョウの視力は25で40メートル先のアリの動きも見える。

蛾は人間の15倍の聴力がある。

動物や虫並みに発達した五感を彼女は持ち合わせているに違いない。

このことから名探偵姫咲ヒカリはふつうの人間じゃない。

遺伝子操作によって作られたデザイナーベイビーだと推論できる。

デザイナーベイビーとは遺伝子操作により親が望む外見や知能、体力を持たせた子供のことだ。

世界中の多くの国で遺伝子操作によって子供を作ることは法律で厳しく禁止されている。

彼女は法律がゆるい国で作られたんだろう。

外見的特徴が日本人なのは提供された卵子・精子が日本人のものだから。

心が読めると嘘の宣伝をしているのは犯罪抑制のため。

心が読める探偵がいるならだれも罪を犯そうと思わない。

絶対にバレるからね。

彼女が現場に足を一歩踏み入れただけで「参りました!」と土下座する犯人もいる。

それほど恐れられている。犯人からすれば心が読める探偵など怪物だ。

戦う前から白旗をあげるのも無理もない。

ヒカリが動機やトリックを言い当てることができるのはホットリーディングだろう。

ホットリーディングとは相手の情報を事前に調べておきながらそれを隠し、その場で言い当てて心を見抜いたように思わせる技術だ。

霊能力者や詐欺的な占い師が使ったり、ビジネスの交渉や商談で信頼を得るための心理テクニックとして活用されている。

ヒカリは現場に到着する前に刑事から事件の詳細を聞いている。

容疑者たちに関する細かい個人情報も入手しているはずだ。

事前に仕入れた情報をもとにあてずっぽうで犯人の動機を述べているにすぎない。

トリックに暴きかたも勘だ。

たぶんこれだなって思うトリックを自信満々に語ってる。

だいたい殺人の動機やトリックなんてものはとっくの昔にパターン化されてる。

当たればそれでいいし、動機とトリックを間違えても犯人が嘘ついてるって言えばいい。

犯人であること自体は確定しているのだから、トリックと動機についてはなんでもいいのだ。

彼女が推理を間違えた時は警察がつじつまを合わせるために証拠のねつぞうもしているんじゃないかな。

犯人の人権なんて完全に無視だ。

冤罪を作り上げてるわけじゃないってところが面白いね。

ヒカリはぜんぶお見通しってツラしてるけどほんとは心なんて読めてないんだ。

いまのボクは長時間のシャワーで発射残渣はっしゃざんさも微量の血も完璧に消している。

服もクリーニングされた新品だ。

香水もふんだんにふりかけて汗の匂いを消した。

心臓音を聞かれるのを妨害するためにリビングに置かれたオシャレなスピーカーから小鳥の鳴き声を爆音で流している。爆音と言っても聴力が異常に優れた人間にとっては爆音に聞こえるけど常人には何も聞こえない程度の音量だ。

視力・嗅覚・聴力すべてふさいだ。

これなら一瞬で犯人を当てられっこない。

閃光探偵破れたり!

さあどうする?

ヒカリはボクと執事と料理人を見渡して迷うことなくすっと指を指した。

「犯人はあなたです」

「なっ、なぬ〜〜〜ッ!?」

指名されたボクは絶叫した。

「それでもボクはやってない!証拠は!」

「心を読みました」

「動機はなんだ?言ってみろよ!」

「嫉妬と恨みでしょう。恋愛対決でライバルに負けてしまった。過去にいじめを受けていた。教授は論文の盗用」

「そんなの事前に仕入れた情報からいくらでも推理できる!いまボクが何を考えているか当ててみろ!」

ヒカリは考えるまでもないという風に答える。

「悪いやつを殺してなにが悪い!でしょ?」

「あああ・・・」

ボクは膝から崩れ落ちた。

この女ほんとに心が読めるのか。

好きな食べ物や好きな映画、初恋の少女、ヒカリに対する殺意、ヒカリをネタにした卑猥な妄想などいろんな可能性があるなかでピンポイントで正解を導き出せるなんて心を読まなきゃムリだ。

「ぼっちゃん。しりぬぐいおまかせください」

執事がずいっと前に歩み出る。

「わいらはヤマデラ家に先祖代々つかえてるんや。ぼっちゃんの犯罪はなかったことにしたる」

料理人はヒカリの背後に回り込んだ。

執事は仕込み杖を鞘から抜いて構える。

料理人は腰に差していた出刃包丁を構えた。

2人とも島に紛れ込んだ凶悪犯に備えて常時、武器を装備していた。

ヒカリを消せば犯人がボクであることはバレない。

すまん。閃光探偵よ死んでくれ。死刑はいやだ!

「おやおや?」

ヒカリは目を見開く。

「警護をつけて乗り込んでくるべきでしたね!」

「魚のエサにしてやんで!」

執事はヒカリに斬りかかる。

料理人は出刃包丁を両手で持って突進した。

挟み撃ちだ。

ヒカリは後ろからの突きを最小限の動きで交わすと料理人にひじ打ちをかます。

「ぶひっ!」

料理人の歯が折れて数本飛んでいく。鼻血も吹き出している。

そのまま流れるような動きで仕込み杖の斬撃を真剣白羽どりした。

「なんと!?」

手で挟んだ仕込み杖をへし折ると執事のあごにハイキックをぶちかます。

あごが砕ける鈍い音が響き渡り執事はあおむけに倒れてぴくりとも動かなくなった。

振り返って顔を押さえている料理人の腹にボディブローを叩き込む。

すごい衝撃音がして料理人は前のめりにどさりと倒れた。

一瞬の出来事だった。推理だけじゃなく戦闘も光速だ。

ヒカリは両手に腰をあてて胸を張る。

「犯人に襲われることもあるから探偵は強くなくてはなりません。あたしは子供の頃からいろんな格闘技を習ってます」

警護が必要ないわけだ。強すぎる。

チャイムが鳴る音がして刑事たちが雪崩れ込んできた。

海にダイブして死のう。

立ち上がって裏口から逃げようとすると逃走路はヒカリによってふさがれた。

瞬間移動かよ!

「あなたは被害者の痛みを10,000分の1でもいいから味わうべきです」

ヒカリに背負い投げされて絨毯に叩きつけられる。

「がはっ!」

全身の骨が軋んで呼吸できなくなった。

すぐに警察に身柄を確保される。

その後、裁判で死刑判決を受けたが後悔はない。

大嫌いな連中をこの世から消し去れてボクは心の底から満足していた。

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