8 まんのうスペシャル
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目覚めると、談話室のソファに寝かされていた。
気を失っている間に運ばれたらしい。
隣にある食堂の方から皆の騒がしい声が聞こえる。
どうやら夕食時まで睡っていたらしい。体は治療済みで、どこも痛くなかった。
猫の鳴き声。サバトラとブチが隣に丸まっていた。
「あ。起きた」食堂からロッカさんが様子を見に来た。「もうご飯だよ」
「シゲさんカレーできたぞー。パリパリサラダもなー」
サラダを持った一番霊場も顔を覗かせる。
「やったあ」
ロッカさんがソファの上で跳ねた。かわいい。
賑やかな食事が始まった。
まんのう町や、僕が話したことのない寮生もいる。
「おらー。野菜も食えよ。今から姉ちゃんが『まんのうパウダー』かけて行く」
「まんのうパウダーだ!」
「うおおおっブロッコリーにかけてくれえ!」
「最高のパウダーだぜ。おにぎりにかけても最高だしな!」
何か判らないけれど盛り上がっている。
僕は厭な予感がした。ロッカさんを見る。
「うん。そうだよ。あれがおにぎりに使った秘密のパウダー。ここの生徒はみんなまんのう町くん特製の『まんのうパウダー』が大好きなんだよ」
僕が感動したロッカさんの手作り料理の秘密がこれらしい。そうなんだ。いいけど、別に。手作りには違いないし。
「ウルタールは怪我人だから私が食べさせてあげるね。それともパウダー嫌い?」
「パウダー。好き。怪我、痛い」
カタコトで答えている僕のおでこを、ロッカさんが撫でて来た。
「眉間の皺、消えたね」彼女はそう言って頬笑んだ。「ここに来たばっかりの子ってみんなそうだから」
僕は自分の眉間をさわり、それからみんなを見渡した。霧の中で何かを失い。歪みを得た子供たち。彼女らも、なくしたものの白昼夢を見て眠れなかったのだろうか。
「みんなで故郷を取り戻そうね」
ロッカさんが言った。
食べ終えると、僕はまたソファへ横になった。
「寝るんならシャワー浴びて自分の部屋で寝ろよー」
一番霊場のお姉さんぶる声が聞こえる。
思えば、僕の人生で、こんな夕食のやりとりはかつてなかった。
服の中に猫たちがもぐりこんでくる。
新しい猫。キンモクセイとは違う猫。でも今はとりあえずこの温もりを享受しようと思う。
食事も、睡るのも、ほんとは独りがいい。キンモクセイがいないから。でも今日は疲れすぎている。それに、ここにいる子供達も、みんな孤独な子供達だから。
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翌日のことだ。
まんのう町と僕は学長から呼び出しを受けた。
指定された場所。元滑走路だった所の果ての岸壁へ向かった。
「テストに合格したしな。お前さんに必要な情報はあたえとかねえとな」
ジウス学長は岸壁から、はるか足の下の水面へ釣り糸を垂れていた。
風が強い。周囲に建物はなく、正面はもちろん海。誰にも話を聞かれる心配のない場所だった。
「まず、どこから話すか……。まあ、お前さんが最初に知りたいのはニャンさんの事だろうな」
ジウス学長はこう切り出した。
「ニャンさんを攫ったやつらのことは大まかだかが目星はつく。おそらく〈深淵派〉だろうよ」
と彼は言った。「〈深淵の獣〉を信奉する異端どもさ」




