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第一章 雨夜の鬼 第六話「母の護符」

第六話「母の護符」


白い光が広がる。




挿絵(By みてみん)


地下空間を満たしていた怨気が、一瞬だけ退いた。




「……これは」




トウマは胸元を掴む。




古びた護符。




幼い頃から、ずっと持たされていたもの。




母の形見だった。




『絶対に手放しちゃ駄目よ』




昔、そう言われた記憶が蘇る。




だが、ただのお守りだと思っていた。




霊力なんて感じたことはない。




なのに今、護符は強く輝いている。




黄泉門の奥。




ユズハの姿が崩れ始めた。




『……あ……』




少女の顔が、黒い泥のように溶ける。




その背後にいた“何か”が、ゆっくり姿を現した。




巨大だった。




異常なほど細長い腕。




人間の顔が幾つも貼り付いた胴体。




そして、裂けた口。




地下全体に響くほどの声が鳴る。




『邪魔ヲ……スルナ』




レイカが息を呑む。




「上位鬼……!」




空気が変わった。




これまでの鬼とは格が違う。




存在するだけで、空間が軋む。




護符の光が強まる。




すると、“それ”は明らかに怯んだ。




『……忌マワシイ』




「反応してる……?」




トウマは護符を見る。




札の表面に、見たことのない紋様が浮かび上がっていた。




まるで封印術式。




その時。




レイカが驚いた顔をした。




「その護符……どこで手に入れたの!?」




「母親の形見だ」




「ありえない……」




レイカの声が震える。




「その紋章、“神代封呪式”よ……!」




「……何だそれ」




「討魔庁でも失われた禁術」




レイカが護符を見つめる。




「黄泉門を閉じられる唯一の術式って言われてる」




トウマの瞳が揺れた。




「……母さんが?」




次の瞬間。




上位鬼が咆哮した。




『返セェェェェェ!!』




巨大な腕が振り下ろされる。




轟音。




地下鉄の床が崩壊した。




「ッ!!」




二人は飛び退く。




だが、上位鬼は止まらない。




黒い腕が次々と襲い掛かる。




「ちっ……!」




トウマは札を放つ。




「破邪雷陣!」




紫雷が炸裂。




しかし、上位鬼は無理やり突っ切ってきた。




硬い。




低級鬼とは比べ物にならない。




「普通の術が効かない!?」




「核を壊さない限り再生する!」




レイカが叫ぶ。




「核はどこだ!」




「分からないから困ってるの!」




その時だった。




護符が、再び光る。




白い光が、上位鬼の胸元を照らした。




黒い肉の奥。




そこに、“赤い心臓”のようなものが脈打っている。




「……あそこか」




トウマの目が細くなる。


上位鬼が笑った。




『殺ス』




巨大な怨気が膨れ上がる。




地下空間が崩壊を始めた。




天井が割れ、瓦礫が降り注ぐ。




「時間がないわ!」




「分かってる!」




トウマは護符を強く握った。




すると。




頭の中へ、術式が流れ込んでくる。




知らないはずの術。




なのに、自然に理解できた。




『――封じなさい』




母の声。




優しかった。




トウマは静かに目を開く。




そして。




護符を掲げる。




「神代封呪式――」




地下空間に、巨大な白い陣が展開された。




挿絵(By みてみん)




挿絵(By みてみん)




挿絵(By みてみん)




挿絵(By みてみん)

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