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第一章 雨夜の鬼 第三話「黒い駅」

第三話「黒い駅」


挿絵(By みてみん)






「やっと……見つけたよ……神代トウマ」




鬼が笑う。




少女の顔のまま。




だが、その口は裂けるように歪み、人のものではない声を漏らしていた。




トウマは黒い手に拘束されたまま、鬼を睨みつける。




挿絵(By みてみん)




「……なんで俺の名前を知ってる」




鬼は答えない。




代わりに、地下全体が脈打った。




ドクン。




壁が震える。




線路が軋む。




まるで、この地下空間そのものが生きているようだった。




『痛い』




『寒い』




『苦しい』




無数の声が響く。




怨念。




失踪した人間たちの感情が、この場所に溜まり続けている。




「ッ……!」




黒い手が、さらに強く締め付ける。




骨が軋んだ。




普通の陰陽師なら、そのまま精神を喰われて終わる。




だが――。




「……舐めるなよ」




トウマの指が動く。




無理やり札を掴み取る。




「雷火符――起動」


挿絵(By みてみん)


バチィッ!!




紫電が炸裂した。




閃光が地下を照らし、黒い手を焼き払う。




「ギャアアアアアアッ!!」




鬼の悲鳴。




トウマは拘束を振り解き、そのまま距離を取った。




呼吸が荒い。




「普通の鬼じゃないな……」




鬼が、ゆらりと首を傾ける。




「あなた、まだ生きてたんだ」




「……何?」




「みんな死んだのに」




空気が凍った。




三年前。




鬼災指定区域・九条区。




あの日、大量の鬼が発生した。




討魔庁は壊滅。




多くの陰陽師が死んだ。




そして――ユズハも。




「……お前、何を知ってる」




鬼の口元が吊り上がる。




「見てたよ」




瞬間。




トウマの脳裏に、映像が流れ込んだ。




炎。




血。




崩壊する街。




泣き叫ぶ少女。




『お兄ちゃん――!』




「ッ!!」




頭痛。




視界が揺れる。




鬼が嗤った。




「思い出した?」




「黙れ……!」




「あなた、逃げたよね」




その一言で、空気が止まった。




「ユズハちゃんを置いて」




「――ッ!!」




トウマの感情が爆発した。




「黙れェェェッ!!」




札を叩きつける。




巨大な術式陣が展開。




紫の光が地下空間を埋め尽くす。




「破魔拘束陣!」




幾重もの鎖が鬼を貫いた。


挿絵(By みてみん)


「アアアアアアアッ!!」




鬼が絶叫する。




だが、それでも笑っていた。




「やっぱり……来るんだ」




「……何を言ってる」




「黄泉還りが始まる」




ドクン。




地下が再び脈打つ。




次の瞬間。




線路の奥から、“大量の目”が開いた。




闇の中。




無数の人影。




黒い群れ。




鬼。




「……は?」




トウマの顔が引き攣る。




一体や二体じゃない。




数十。




いや――数百。




地下空間を埋め尽くすほどの鬼が、こちらを見ていた。




その全てが、一斉に口を開く。




『見つけた』




『見つけた』




『見つけた』




『神代トウマ』




地下鉄跡が、狂気の声で満たされた。

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