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第一章 雨夜の鬼 第十二話「黄泉門崩壊」

第十二話「黄泉門崩壊」

白い少女の身体から、黒い霧が溢れ出す。


その姿は、もはや人ではなかった。


「……器」


少女は静かに呟く。


「私は、黄泉門が作った器」


トウマの表情が歪む。


少女はユズハではない。


黄泉門が、人の未練を利用して生み出した偽物だった。


それでも。


姿も声も、あまりにも妹に似ていた。


「なんで……こんな……」


トウマの手が震える。


少女は悲しそうに微笑む。


「黄泉門はね、人間の悲しみが大好きなの」


その瞬間。


黄泉門が完全に開いた。


空が裂ける。


黒い亀裂の向こうから、無数の亡者達が溢れ出した。


村中が絶望に包まれる。


レイカは口から血を流しながら、封呪式を維持していた。


「早く……終わらせて……!」


魔法陣の光が激しく脈動する。


限界が近かった。


巨大怨霊が最後の咆哮を上げる。


無数の腕がトウマへ襲い掛かった。


トウマは剣を強く握る。


涙が頬を伝った。


「……もう、終わらせる」


彼は走った。


亡者達を斬り裂き。


巨大な腕を断ち切り。


真っ直ぐ、白い少女へ向かう。


少女は静かに目を閉じた。


「ありがとう、お兄ちゃん」


次の瞬間。


剣が少女を貫いた。


同時に。


神代封呪式が最大出力へ達する。


白い光柱が天へ放たれた。


轟音。


衝撃。


黄泉門が崩壊し始める。


亡者達が悲鳴を上げながら消滅していく。


巨大怨霊も光の中へ飲み込まれた。


やがて。


静寂が訪れる。


空を覆っていた黒雲は消え、朝日が差し込んでいた。


挿絵(By みてみん)


トウマは崩れ落ちる。


その耳元で、最後に小さな声が響いた。


「――器は、まだ残っている」


トウマが顔を上げた時、そこにはもう誰もいなかった。

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