第66話: 正反対の二人
「あぁ 僕たちの校舎が…」
シェルターから出ると、ディストピアな風景が広がっていた。一部の校舎は無事なものの、高等部の校舎の殆どが壊滅的な被害を受けていた。
「どうなっているんだよ…これ」
只々調査している人がその事件の凄惨さを物語るのみだ。
「はーい こっちに注目してください!」
スピーカーを持った教師が生徒たちの前に立った。
「えぇと…教員と理事会で評議したところしばらく臨時休校という事で…」
……
一同は静まり返っていた。いつもなら飛んで喜ぶところだが、トラウマレベルの被害に心が痛んでいた。
「では…解散で」
先程の戦闘に参加していた教師も多い、全体的にテンションは低いはず…だった。
「おいルーナ!遊びに行こうぜ!」
「ちょ、ちょっとナブラ空気読もうよ!」
黙視しながらも嫌な視線を感じる。意気揚々と帰るナブラにはそれに気付かなかった。
「よ〜し 明日から天国だぜ!」
この男、恐ろしいほどに鈍感であった。その頃、執行会は調査に参加していた。
「未だに動機が分からないっすわ」
「現在本署で取り調べを行っているようだ。直に分かるだろう」
現場を見て険しい表情を浮かべる警察。あまりの被害に何も手がつけられない状態であった。
「執行会の皆さんは何をしていたんだ?」
「あぁ あの女子2人組を捕まえていましたよ。中々の強敵でしたが…」
「あの双子ですか、それはお疲れ様。我々も身柄を引き渡された時、物凄い魔力を感じたよ」
「まぁうちにはヴォルカがいますからね」
「俺は俺の仕事をやっただけだ」
ヴォルカはこんな状況でも武器の手入れをしていた。
「そういえば校舎の修復にどれくらいかかりそうですかね?」
「腕っ節の職人を呼んだら早くて二週間くらいだろう」
「あ、意外と早いんですね」
この世界では、修復を一から行うのではなく、魔法を使って高速修復を行うため作業量は少ない。普通なら年単位でかかるだろうが、魔法のテクノロジーに感謝だ。
「いやぁ、ビビりましたよ。まさか最近沈静化していた不良グループがいきなり復活してこうなるなんて」
執行長には心当たりがないようだ。
「会計の俺にはさっぱりやわ。せやシェミカはどこや?」
「シェミカちゃんなら私が帰らせたわよ」
「あ、そうなんだ…」
副執行長のファインプレーだ。この場にシェミカがいたら面倒なことになっていただろう。少し寂しいが、事件が複雑な事になっていること間違いなしだ。
「ん〜とりあえず生徒会にでも状況を伝えに行こうか」
「あ、良いんっすか?執行会に入ったら生徒会と話すのは禁止って…」
「自分だけ行くから大丈夫だ。お前らは帰って良いぞ」
「あ、はい…お疲れっした…」
執行長と他のメンバーは逆方向に歩いて行った。
「本当に大丈夫なんっすかね。執行長…」
会計のエイジは酷く心配していた。ただでさえ頼りない執行長だ。何か責任を取られ、辞任する事になるかも知れないと懸念していたのである。
「大丈夫。ああ見えてやる時はやる人よ」
「いやぁ想像付かないっすね」
「俺も同感だ」
信じていたのは副執行長だけでだった。
ーーーーーーーーーーーーーーー
タッ タッ タッ タッ
裏口の前に生徒会のメンバーが帰る生徒を誘導していた。
「少し話そうじゃないか会長」
そこに執行長が現れる。
「あら、執行長さん私に用かしら?」
「状況だけでも報告しようと思ってね」
生徒会のメンバーは不思議そうな目で見つめる。
「会長。良いんですか?色々問題になるんじゃあ…」
「ふふ、こんな場所では話しづらいから奥で話しましょうか。あなたたちはここに居て頂戴」
「はっ!了解しました会長!」
副会長はいつもより張り切って生徒を誘導し始める。どうやら会長になれた気分のようだ。
執行長と会長は、無事だった校舎にある1室の和室に入って行った。
「こうやって一対一で話すのも久しぶりね」
「あぁ全く、世間の目が厳しいからねぇ」
両者はとても落ち着いていた。正反対の組織に所属しているとは思えないほどの距離感であった。どうやら前から親交があったらしい。
「事件の要因を聞こうかしら」
「まだ色々分かっていないらしい。ただ前の執行長と決闘したグループの後継組織って事だけだ」
「ふふ、それは興味深いわね。また動き出したのかしら」
「ん〜それはどうだろう。今回の事件で当時の幹部とかは捕まったしな。あ!それともう一つ…
他校の生徒が多く含まれていたらしい」
会長は微笑し、執行長に頷いた。
「想像以上に闇が深そうね」
「あぁ、それもそいつを調べたら、この学園の受験に失敗した生徒が大半だった。逆恨みと言う線も考えられるな」
「そうね。後、教員の怪我の状態は…」
それから数分の間。両者は互いの情報を共有していった。しばらくすると会長は窓から儚げな表情で空を見上げる。
「大体のことは分かったわ。報告ありがとう それと……
私をまだ恨んでいるのかしら」
執行長の動きが止まる。会長はそう言い放つと、背を向けていた執行長と視線を合わせた。
暫くの沈黙の後、重い口が開かれた。
「最初から恨んでなんかない、あれは仕様がない事で、いつかそうなると分かっていた。原因がどうあったとしてもね」
「あら、随分とあなたにしては冷静ね」
「キャパが違うんだよキャパが」
「ふふ、それは私もそうかもね」
和室の中には不思議な空気が充満する。それを読み取ったかのように執行長は備え付けの窓を開ける。
「まぁお互い頑張ろうぜ。今日みたいに話せる機会なんて早々無いからな。新聞部なんかに晒されたら面倒な事になる」
「えぇそうね。あと一つ…」
「何だ?」
「ジェイド君があなたを狙っているかもね ではまた会いましょう」
サッ!
軽快なステップで部屋を後にする会長。それを聞いた執行長はただ呆然とその場にいた。
「え…マジかよ 何かやったっけ?」
戦の螺旋は畝る。
本章も終わりの目処が立ったので、次の章をぼちぼち考えています。主要キャラをもっと深掘りするような話にしようかなと思います。




