第61話: 脅威は突然に
良い休日を過ごしていた。鳥は囀り、空は青く青く染まっていた。平和という言葉以上はないほどの昼下がりである。
「今日は快晴か」
ベランダを開けると、心地よい風が吹いていた。微かに初夏を感じる、ただ呆然と空を見上げた。
ファン!ファン!ファン! フェイズ発生! フェイズ発生!
その時は突然訪れた。
ウガァァァァァァァァァァァァァ
「フェイズの反応あり!避難してください!」
街は混乱の渦に落とされた。4足歩行の怪物が空から飛び降りた。さながら特撮映画のような光景。平和な昼下がりは真っ赤な戦火に塗りつぶされてしまった。
「今すぐ地下に避難してください!」
割れかけのスピーカーが鼓膜を揺さぶる。ジェイドは黙っているはずなどなかった。
「行くか」
そっと言うと、怪物の方へ駆け出した。
グルルルルルル
やつは街外れの森付近に出現した。今の所建造物はあまり破壊されていないようだ。だが、怪物の眼光は街の中心部を見ていた。
怪物の近くに武装した警備隊がぞろぞろと集まってきた。
「中型のフェイズを確認! MGR-2の使用を求めます over」
魔法弾を高速で射出するいわゆるロケットランチャーのような物を構えていた。
フェイズはこうしている間にも木々を薙ぎ倒していた。
「wilco」
ドーーーーーーーン
許可は下された。ロケットランチャーから禍々しい光が飛び出したと思えば、即座にフェイズの体が爆発した。
「まだだ」
グァァァァァァァ グッ
ギュイーーーーーーーン
上空から巨大な円が現れる。
「逃げられるぞ!早く次弾を!」
カチャッ
ボフッ
「くそっ 逃げられたか」
装填するも虚しく、フェイズは円に入ると姿を消した。武装した警備隊は周りの被害状況を確認している。そんな時にジェイドは現場に着いた。
「遅かったか」
封鎖された道路からその様子をずっと見ていた。
「き、きみ 避難せずにどうしてここに」
警備隊の一人がジェイドの存在に気付いた。こちらへ早足で近づいて来る。
「ケガはなかったかい君」
「大丈夫です。それより、フェイズは…逃げられたのですか?」
「残念ながらね。最近は仕留める前に逃げられる事が多くてね…ヤツらも学んでいるのかも知れないな」
悪い予感が二重にも三重にも頭をよぎった。“フェイズは進化する”そう未来から学んできたからだ。
すると、ガタイの良い警備隊がこちらに向かって来た。
「これはこれはジェイド君じゃないか」
どうやらジェイドを知っているらしい。笑顔で話をする。
「この前のフェイズ襲来のときは助かったよ。避難せずに子供を救出した事でうちでは有名になっているんだ」
するともう一人の警備員がハッとしてジェイドを見る。
「え!この少年がジェイド君ですか!」
少しした有名人となりイヤな感じがするが、場合が場合だったので仕方があるまい。ジェイドは適当に返事をしていた。
「いえいえ、大した事は…」
「普通そんなこと出来ないよジェイド君!」
目をキラキラさせる二人に圧倒されながらもジェイド目を逸らしていた。
「それより現場の方を」
「はっ! すまないジェイド君。私たちはこの辺で」
警備員たちは薙ぎ倒された木々の方へ向かっていった。
すると一通り終わったようで手元のデバイスに手をかけた。
「フェイズの脅威もなくなった事だし上層部に連絡を」
テキパキと現場の片付けをしている所に変化が訪れた。
ギュイン
ドンッ!
グアアアアア
突如として、再び現れたフェイズに驚きを隠せなかった。
「なんだと!?逃げた後にまた出現するフェイズは今まで見た事がないぞ」
呆然と警備員が立っている所にジェイドが動き出す。
「あ、こら 君あぶな…」
「<ジッド>」
警備員の言葉を置き去りにしてフェイズに向かうジェイド。フェイズは先ほどの戦闘で疲労しているように見えるも油断はできない。ジェイドは高速で詠唱を始めた。
「<ウェルヘイム>」
側から見ていた警備員達がその光景に驚愕した。
「な、なんだあの魔法は」
ジェイドの手から白き玉が握られる。すると黒き閃光が周囲を拡散する。
「な、何が起きているんだ。そんな魔法知らないぞ」
あまりの眩しさに、皆目を隠し、見えたのは光の残像だけだった。
バチ バチ バチ
ドンッ!!
プスッ…
「な、何が起きたんだ一体…」
次に目を開けたとき、そこには倒れたフェイズがいた。
「ジェイド君…君がやったのか?」
「えぇ、ただの中級魔法でしたが」
ガタイの良い警備員は焦ったようにジェイドの肩を揺らす。
「そ、そんな中級魔法は無いぞ!ど、どう言う事だジェイド君!」
「落ち着いてください。だから“ウェルヘイム”は中級魔法ですよ」
するともう一人の警備員が反応した。
「聞いたことあるぞ…ウェルヘイム 確か失われた古代魔法の一つ…」
「古代魔法!?」
古代魔法とは、この世界においてフェイズ襲来時に失われてしまった魔法の事であり、多くの書物が襲来時に無くなってしまったためロストテクノロジーと化している。多くの古代魔法は強力な魔法ばかりなので、研究が進められているが復活できた魔法は一つも無いのである。
ジェイドは正体がバレるのを防ぐために適当に繕う。
「ただの固有魔法ですよ。少し格好を付けただけです」
すると二人は笑って話しかけて来た。
「はっはっは! 面白い事を言うなジェイド君。本当に古代魔法が使えるんじゃ無いかと思ってしまったよ」
「少し心臓に悪いよジェイド君」
…危なかった。未来から来たといえばこの身がどうなってしまうか分からない。最悪、研究機関に入れられて人体実験の材料になるかもしれない。ジェイドは嘘が通じたようでホッとする。
「もしウェルヘイムが復活したとすれば、超上級魔法ですかね」
「あぁ、間違いないな」
…これで一つの事が分かった。俺の生きていた世界線では初級魔法が”上級魔法“であり、中級魔法が”超上級魔法“になってしまうのだ。授業では初歩的な魔法しか習っていない分その影響を感じずらかった。ここまで下級魔法を使って驚かれた理由が暴かれたのである。
「それにしてもジェイド君はまたお手柄だね」
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…その後ジェイドはまた学校で表彰を受けたのであった。
そして、再びあの人に狙われるとは知らなかった。
「腹立つ 腹立つ 腹立つ 腹立つ」
「先輩…やめましょうよ。言ってもしょうが…」
ドンッ!
「てめぇ次言ったらどうなんのか分かってんだろうな」
金髪の男は酷く怯え、震えながらも声を出す。
「す、すいません…許して下さい」
バンッ!
「ケッ こんくらいで許してやるよ」
そこには殴られ、頭から血を流している男がそこに横たわっていた。
今週は特に不安定な投稿ペースですがご容赦ください。




