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第49話: 上弦の月

 「お前ら最近どうだ?」

ジェイド達4人はアズ先生に呼ばれ、白い部屋に座っている。


「どうって….まぁ毎日大変って事くらいですかね….」


「そうか。お前ら4人を見ていると、明らかに元気がないからな。メンタルもだいぶやられているだろうし、ここで喋ってみたらどうだ?」

アズ先生は最大限の誠意を持って言う。それでも重苦しい空気は変わらなかった。


「なぁお前ら、もし明日突然目の前に殺人鬼が現れたらどうする?」

切り口を変えて話してくる。


「攻撃を仕掛けてくるのであれば、習った魔法で自身を守ることですか」

ジェイドが重い口を開け、言い放つ。


「ん~正解か不正解かは分かんねぇけど、ただ1つ言える事がある」


ガタン


 先生はおもむろに席を立った

「その時はその時って事だ。お前らは未来に対してネガティブな印象を持ち過ぎている。よく考えて見ろよ、お前らは学内コンテストの参加者或いは志望者だ。しかも毎週毎週自分を守るための魔法を訓練し続けているんだぞ」


ルーナが小声で

「そ、それがどういう….」


「自信を持て それだけだ」

たった一言だった。だがその言葉は深く俺たちの心に突き刺さったのである。


「そう言われても毎日毎日に命の危険を感じてこっちはもう…」

ナブラが泣きながら先生に言う。


「ナブラ、お前らの気持ちは実はよく分かるんだ。先生もそういう時期があった、明日の命の保証はない。それでも懸命に生き続けるしかない。そういう時期が」


「じゃ、じゃあどうやってこの状況を打開すればいいんですか!」

再びナブラが声を震わせながら言う


 「俺もその事を話したい。だがな….教員として…お前らの担任として背中で語り続けるのが仕事だ。いつか話す時が来る、その時まではな」

「いいか、この事件を切り抜けたら、お前らはきっとこの先どんな事があっても潜り抜けることができるだろう。答えはお前らが見つけるんだ。先生はお前らを絶対に見捨てたりしねぇからよ」


「せ、先生!」



こうしてあまりにも短く、あまりにも濃い対談は終わったのである。


ーーーーーーーー

生徒会室にて


「どうしたの?そんな凛々しい顔をしてきて」

 俺たち4人はいつもよりキリっとした面持ちで部屋に入ってきた。

副会長はその件を知っていたらしい

「会長、なんか担任にいい事言われて、モチベーションが高いらしいですよ」


「あら、珍しいわねあの担任普段は怠けているイメージだけど、意外とやる時はやるのね」

アズ先生の悪い評判は学校中に広まっていたらしい。


「まぁいいとして、今日は久しぶりに犯人に繋がる情報を発見したわ」


「え、本当ですか?」

一同は驚きを隠せない。何せ一週間は何も音沙汰がなかったからだ。


「警察の情報によると、これは魔法で生成した刀ではなくて、普通の刀に魔法を付加したもので斬りつけたらしいわ」


「それは凄く有力な情報ですね!ちなみにそれは公開されている情報ですか?」


「ふふ、勿論機密データから抜き取った情報よ♪」

そろそろ警察もこの会長を逮捕して欲しいところではあるが、今は殺人犯の方が優先だ。


「そうなると普段刀を持ち歩いている人が対象という事ですか」


えぇ、この学園では許可を取れば武器の持ち込み可だから結構人数は絞れると思うわ」


メルスが驚いたように言う

「え、あれって許可されれば誰でも持ち込めるんですか?」


「知らなかったの?少し物騒な世界だから護身目的の武器は持ち込みOKよ。あまり持ちながら校内を歩き回るのは良しとされていないけどね」


「あ、そういえばこの前背中にでっかい剣を背負っている人を見かけたよ!あれも大丈夫だったんだ!」

ルーナが思い出し言う


「割とそこら辺自由だったんだな。俺なんてわざわざ魔法で作っているっていうのによ」


「でもナブラ君、素行が悪いと許可されないわよ」


「いや、そんなヤバいことした事ないですから!」

ナブラはそう言いながらも“マジックソード”を手放すつもりはないらしいが…


「とにかく、理由は分からないけど犯人は実物の刀を携帯している人に絞れたわ」


「会長、でも本当に生徒なのか一般の人が犯人なのか分からないですよ」


「まず、生徒を調べた方が早いじゃない?」


「えぇそうですが….」


「では、早速調査いたしましょうか。捜索班…というより今回は調査だわね。頼んだわ」


「「「「はい!」」」」


何度も苦難が立ち塞がろうが、俺たちは突破してきた。今日もこうして事件の調査が始まった。


「まずは、刀を携帯している生徒を探さないとね」


「あぁ先生に一回聞いてみるのがいいだろう」

足速に職員室へ一同は向かった。


「ん?刀を携帯している生徒だって?」


「はい、犯人は実物の刀で殺害したという情報が入りまして、その生徒一人一人を調べたいと思います」


「なるほどね…とりあえず生徒課に行くのがいいだろうな。生徒課が許可を出しているもんでな」


「ありがとうございます!」


俺たちは職員室から程よく離れた所にある生徒課へと行く。


コンコンコン

「失礼しま…..うわ!」



ドンッ!

「お前ら用か?」

眼帯を右目に付け、明らかに強そうな男教員が俺たちに影を作った。


「おっと脅かせてすまんな。いつも悪い事をした生徒とかち合っているもんでな」

その巨体に殴られでもしたら、一発で床に叩きつけられるであろう。そんな姿が前に写っていた。


「武器を携帯している生徒について質問がありまして」


「おう、とりあえず座って話でもしようか」

そう言い俺たちは備え付けてあったソファーに腰を下ろした。

そして一連の流れを先生に話した。


「なるほどな。つまり刀を装備している生徒を伝えればいいんだな」


「そうしていただくと助かります」


「では….」

近くあるファイルを取り出した。


「これがその装備と生徒の一覧だ」

顔写真と共にその装備について様々な記述がしてある。短剣・双剣・弓….ロケット砲?

メルスが驚きの装備を発見してしまう

「え、ロケット砲とか装備して大丈夫なんですか?」


「あぁそいつは固有能力が様々な砲弾の球を作り出す能力でな、そのためにロケット砲が欠かせないんだ」


「そう言う事もあるんですね…」

こうみると固有能力というのは多種に及ぶものだ。中には役に立つのかよく分からないものもあるが、大抵訓練すればすれなりに使える固有魔法に派生させることが出来る。


「肝心の刀についてだが…」


カタカタカタ


コンピュータに何か打ち込むと、刀を装備している生徒の一覧が印刷された。

「これが一覧だ。一応言っておくが調べた後はシュレッダーにかけておくんだぞ」


「はい、分かりました!」


礼を言い、早速調査に向かうジェイドたち、中には中等部の生徒でも携帯している人がいた。


「こうみると結構いるもんだね。20人はいるかも」


「私の周りにあまり居なかっただけで、実は多くの人が装備しているらしいわ」


「まぁ普段は隠しているだろうしな」

まず、中等部の生徒を調査する事にした。


「ここが、中等部の校舎ね。改めて見ると凄いわね」

メルスがそう言うのも不思議ではない。高等部よりは生徒数は少ないものの、設備は高等部に見劣りしない。白色の綺麗な校舎がそこにあった。


「まずは、2年3組にいるらしい。許可は取ってあるから大丈夫だぞ」

4人は中等部校舎へと入っていった。


「ジェイドは高等部から入ったんだっけ?」


「あぁ、ナブラはどうなんだ?」


「俺も高等部からだよ」

ルーナは驚きの表情を見せる

「えぇぇぇ!あのナブラがあの入試を突破できたの!?」


「うるせぇ!こう見えて地元では最強だったんだぞ!」


「不思議な事もあるものね」


「おいメルスちゃんまで俺を疑っていたのかよ!」

確かにナブラが高等部から入ってきたのは意外だったが、こういう者こそ本番には強いのだろう。


「ネタバレすると、中等部から高等部に入ってきた生徒は自動的にA~Cのクラスに入れられるわよ」


「「「早く言えよ!」」」


「だってナブラがこの状態で入ってきているのが信じられなくて、成績が悪すぎてFに編入させられたと思っていたもの」


「意外と酷いこと言うんだねメルス….」

あのルーナでさえもこれには引き気味だ。


「さっ、気を取り直しましょ。教室はもうすぐよ!」


もしかすると犯人かもしれない。期待の裏には不安も募っていた。



炭酸は苦手です。

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