表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
77/87

#77 好きじゃないわけあるか

 きっと涼子さんには終始辛い話を強いている。私が呼び出したからかなり心苦しくて、なかなか目を見ることができない。けれど、ふと目配せした先の彼女は、なんだか唖然としていた。


「ずっと、おかしいと思っていたんだけど」


 私たちの見解が勘違いだったとしても、そうじゃなかったとしても。これだけは、はっきりさせないといけない。


「なんで晴貴くんは、好きでもない私とそんなに結婚したがるんだろうって。そんなにまでして叶えたい目標があるのかって」


 晴貴くんは、この数年である程度距離は縮まったとはいえ、さっき自分で言っていた通り、私のことなんて大して知らないだろうし、興味もほとんどないはずだ。そんな相手を好きであるはずがない。


「好きだよ」


「⁉」


 何故か、南くんが顔を真っ赤にしてむせた。


「わかんないけど、少なくとも今は。方便じゃない。好きになる努力はしたかもしれないけど。好きでもない相手と結婚できるわけない」


 ずっと真剣な顔をしていた癖に、急に表情を緩めるものだから、私も、涼子さんも、ついでに南くんも、赤面して言葉に詰まる。晴貴くんの不思議な魅力を南くんもきっともう既に感じている。曲がりなりにも、素敵な人なのだ。


「じゃ、じゃあ。私は、晴貴くんは涼子さんのこと好きだと思っていたんだけど、それは」


「好きじゃないわけあるか。だから結婚なんてできるわけない」


 私たち三人の中で確信に変わる音がした。晴貴くんの一風変わった一人芝居に、みんな勝手に勘違いして、気を遣って、勝手に振り回されていただけだと。


「……晴ちゃん」


 やっと口を開いた涼子さんは、感情を振り回されてすっかり憔悴していた。


「結婚できないって言われて、嫌われたかもしれないってずっと思っていたの。そうじゃなかったことはすぐわかったけど、私は傷ついたよ。さっきも好きって言ってくれて嬉しい、嬉しいけど……」


 柔らかい言葉尻が震える。俯きがちになってしまった涼子さんの前髪に隠れた瞼も、ぷるぷると震えていた。


「駅でも、なんで来たのなんて怒ってるから、私、いよいよ蚊帳の外なのかなって……」


 晴貴くんはらしくなく口を数回パクパクさせて、焦りを顕にしている。やっぱり、涼子さんのことがすごく好きなのは間違いがないんだ。本人は、よく理解していないのかもしれないけれど。


「ちょっと、吉澤さん。聞きたいことがあるから、外に出ない?」


 急にわざとらしく声を上げた南くんは、しきりに私に目配せしてくる。涼子さんはこのままだと卒倒するか泣き出してしまう。きっと晴貴くんにはそれを気遣う余裕がないから、一旦場をおさめようというのだろう。小さく頷いて、彼ら二人が席を立つのを促した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ