#75 対面
駅前の待ち合わせ場所として晴貴くんが指定した場所に着いた頃には、既に彼は涼子さんと合流していた様子だった。彼女を見るのはとても久しぶりだけれど、当然すぐにわかる。育ちの良い晴貴くんによく似合う、育ちが良くてひらひらしたスカートのイメージがある上品な女性だ。
けれど近づいていくにつれ、少し様子がおかしいことに気が付く。涼子さんは晴貴くんの手を両手で握って、なんだか難しい顔をしている。晴貴くんはと言えば、なんだからしくなく困った様子で眉を下げていた。
「お久しぶりです、涼子さん」
「あっ、早川さん、久しぶり。ご、ごめんなさいね」
声をかけるまで二人ともこちらに気が付かなかったけれど、涼子さんは、慌てたように晴貴くんからぱっと手を離して、耳まで真っ赤にした。
「どうも、はじめまして。早川さんの大学の同級生の、南です」
そのことが気になりはするけれど、南くんはとりあえず自ら名乗った。涼子さんに南くんのことが伝わっているとは思えないし、気まずくならないうちに挨拶を済ませておくのは、さすが南くん、抜かりがない。
「おう、けいがお世話になってます」
いつもの様子に戻った晴貴くんは、けれど、なんだか南くんを煽るような態度で、笑顔がとても皮肉っぽい。南くんはと言えば、営業サンシャインスマイルで対抗している。正直この二人の対峙、思っていたよりずっと怖い。
「ちょっと涼子に怒られちゃってさあ」
「お、怒ってない!」
「まあ、その話も後でゆっくり」
晴貴くんを中心に関わっている私たちが集まると、自然と彼のペースに飲み込まれる。あまり察しの良くない南くんは、終始ほっぺたにハテナと書いていた。
「南には、事情を知ってもらっているべきだと思ったから来てもらった」
「えっと……何の、人なの?」
「僕は早川さんに結婚を申し込みました」
「え⁉」
オープンな雰囲気のカフェに4人で入ったものの、南くんと初対面かつほとんど情報を知らない涼子さんがあまりにも気を遣っているので、晴貴くんが説明しようとした矢先、南くんも突拍子もなく自分のペースを出してきて、私が一番卒倒しそうになった。
「まあそのへんの話はしっかりけいに説明してもらうとして」




