#73 二人の違い
不思議と、変なスイッチの入ってしまっている南くんに、流されている気はしなかった。お酒でも入ってるのかと思うくらいの甘え方をした南くんを見て、小さい子供を見るような気持ちがこみ上げてきたのだ。だから、頭を撫でて引き剥がしてやってしまった。
「けいさん、なんか……ううん、なんでもない」
「何、何なの」
南くんはあまりにもはっきりしないから、しょぼくれた顔をしているとはいえ、キラキラした見た目とミスマッチで可笑しい。首の後の汗を手のひらで拭って、そのまま顔を押さえてしまう。
「ゴメン、って言いたいけど、あんなとこでボーッとしてるの見つかっちゃったのは自業自得だし、そりゃあけいさんにも心配かけちゃうよなって自分でも思って……」
「いいのに」
自分で、晴貴くんに言ったことを思い出す。南くんに期待されて、頼りにされて、こうだったらいいのにを期せずして叶えて。そんな都合が良い相手だとしても、彼が相手なら構わない。それが好きということなのかはわからないけれど、晴貴くんとは大きく違う点だということはわかった。
「俺、多分」
南くんはすごく困ったような表情を浮かべていた。うんうんと時々唸っては、そわそわと顔の周りを触って、眉間のシワをほぐしたりなんかして。
「嫉妬してるのかな。けいさんが、仮にも一度は好きだった人と二人きりとか、結婚してもらうって言われてるのとか」
歯に物が挟まっているかのような変な顔で、唇までへの字に曲げた。彼にとって、初めてのことなのかもしれない。たしかに、特殊な状況ではあるのだけれど。
「大丈夫だよ、心配することないって」
何が、というのは、口にするのが憚られた。言うかどうか迷っていると、けれど途端に南くんの表情が柔らかくなる。伝わったのに安心するのと同時に、恥ずかしさがこみ上げてくる。なんで、私は。けれど、私は。
晴貴くんに必要とされていること。南くんに必要とされていること。晴貴くんにお手本通りのハグをされること。南くんに初恋みたいなスキンシップをとられること。全然、違うのだ。何が違うのかは、よくわからないのに。確かに、その二つを私の脳は同じようなものとして捉えられない。
そして。
「私は南くんに、責任、持ちたいから」
大きく変わり始めていたと気付かされる。自分がどういう性格なのかすら、彼に会うまで考えたこともなかったのに。けれど、周りを取り巻く二人を見ていると、そして南くんを見ていると、どうしたらそうなれるのかがわかってきた気がした。
責任は、持ちたいのだ。彼にもっと何かを為してあげるために。そして、何かを為してもらうために。それを、当たり前にするために。




