#70 三人の共通点
食後のホットミルクなんて差し出して、まるで大切な恋人のためのような晴貴くんの手作りの夕食は幕切れを迎えた。
「ありがとう、美味しかったよ」
当然、という顔で笑って首を傾げる。晴貴くんはわかりやすくすべてが上手い。ちゃんとこんな押し付けみたいな親切にも感謝を述べる時間をくれる。
「気にしなくていいから。どんな形になったとしても、けいが悪いことはない」
表情を揺るがせた年齢相応の青年はすっかり身を潜めて、自信げに優しく微笑んでみせてくれる。彼に負けているところは、やっぱり責任感だ。結果がどうなろうと不義を働いたことを少しでも後ろめたく思っている私の本心なんて、簡単に見透かされてしまう。
「……ううん」
けれど、言葉が続かない。彼の背負う物を少しでも軽くしてあげたいという気持ちを抱いたことが、ないわけではないというのに。私は、責任を取ろうとしそびれている。
「けいが俺を嫌ってるとか、信用してないとかじゃなくて良かったと思うし」
「……でも、厄介に思ってるかもしれない」
「勝手に俺だけのけいにしようとしたのは、俺だ」
何言っちゃってるんだ、と鼻の奥が熱くなる。私という存在と出会ってしまったせいで、彼が涼子さんじゃない人にこんな台詞を吐いているのだ。彼が、本物の嘘をついているのではないとしても。
……突き放して見せろよ。彼女の黒目の光が曇ったのを見て、腹立たしいような、悲しいような気持ちになる。結局、他人のため、自分のために人を傷付けることができないのは、俺たち三人の共通点だ。責任だから、筋だからと、正しくないと思うことを貫けない。三人でその命題を矛盾なく証明し続けるためには、この状況から抜け出すことはできない。




