#69 全員を
晴貴くんの言う「考える時間」というのは、たった一時間弱であっても意味のないものではなかったようだった。すごく頭の回転が速い人だから、そう気づいた時にもそこまで驚かなかった。ゆっくり買い物をしながら、少し話をしながらでも、考えていたんだろう。自分が、私を、どうするのか。
「涼子が明日来るって?」
俄に、元気というのか、オーラを取り戻した晴貴くんは、奔放そうな見た目に似合わず育ちの良さが出ていて、荷物はいつの間にか全部持ってくれているし、車道側を歩いてくれる。
「うん。朝来て、夜には帰らないと、みたいだけど」
「ホンット、けいにしてはやってくれたよね。あの子も忙しい時期に」
それは、なんとなく察している。涼子さんは私の提案が本気だと気づくなり、とんでもなく慌てていたから。同年代とはいえ、年上らしい冷静さを取り戻すのに数十秒かかって、ようやく折り返しラインする、と返事をしてくれた。
「晴貴くん、その……どうするの」
「場を用意してくれたんだから、三人で話そう。けいと俺の話に涼子は関係ないけど、俺と涼子の話にけいが首を突っ込むなら、二人共納得させなきゃいけない」
やっぱり、彼には勝てない。一時はそれなりに動揺していたみたいだけど、また一人で色々考えて、その思惑の根本の部分は見せてくれない。
「……それで、俺たちの話に南 梗介が首を突っ込むなら、南も納得させなきゃいけない」
あんまりにも責任感が過ぎる、とも思ってしまう。この状況を作り上げたのは私だから、晴貴くんがそこまで気負うことに、私まで責任感が伝播して感じる。
「明日、南も呼んでよ」
「……うん」
晴貴くんはちゃんと本気だ。南くんがこういう話し合いに強いタイプかよくわからないけど、晴貴くんが全員を説き伏せるという意味ではなく、全員の納得できる結論に持って行こうと色々と考えてくれているような気がする。こんなことになってもそれほど彼を知らなかったけれど、過去を振り返っても、晴貴くんはそういう人だった。




