#51 伴走
それから、なんだかアメリカンなステーキ屋さんでたらふく食べて、もう少しだけ商店街をぶらぶらして、太陽が傾き始めたところで二人でタクシーに乗った。タクシーの運転手は、こっちの方に来る観光客は珍しい、と何度も言いながら、私たちの話を聞くというよりも嬉しそうに地元の話をたくさんしてくれた。沖縄の空気は、気温の高さに苛つかないでいられるくらい、穏やかだ。タクシーを降りるとき、自然に南くんの差し伸べた手を取っていたときに、そう感じた。
「ただいま、母さん」
恵さんは横になっていたけれど、真っ先にただいまを言いに来た南くんに顔を上げ、いそいそと身体を起こした。
「……おかえり」
穏やかだった。昨日とは違う人のようで、けれどこれも恵さんの一面だと私は知っている。淡い微笑みは、まるで騎士を待つ姫君のように繊細で美しい。
「あなた達……一線でも超えた?」
思わず聞き返すより前に南くんが思いっきりビクッと肩を震わせるものだから、私もつられて驚いてしまう。至って真面目な顔で首を傾げた恵さんは、次第に少女のように朗らかに笑った。
「な、何言ってんの」
「いや、だって、昨日ここに来た時とまるっきり違うんだもの。――ちゃんと二人で、話して来たのね」
想いを伝え合うことも、確かめることもせずにここに連れて来たなんて、まるで私のことを離す気なんてないみたいだった。強引とはいえ無茶を強いてくるわけではない南くんがそこまで事を早急に進めたのは、恵さんのことは勿論、自分の中での責任もあり、更には私の、彼とこの四ヶ月間過ごした間の態度もあったのだろう。南くんは、しっかり聞いてくれた。私の話を聞いてくれたし、考える間待っていてくれた。まだその答えは、ちゃんと伝えられていないけれど。
「あの、本当にすみませんでした。私も、その……」
「けいちゃんが謝ることないわよ。それに私、わかっていたから。あなた達、恋人と言うには遠すぎるけど、ただの友達や知り合いにしてはすっごく仲が良いって」
途端に恥ずかしくなる。昨日二人で話した時、恵さんが言っていたことは、決して軽々しい台詞ではなかったのだ。梗介を愛してくれて、一緒にいてくれてありがとう、と。
「母さん、二人で話したい。ごめんけいさん、上で待ってて」
淡い笑顔は、暖かいという以上に決意に満ちていて、無意識に頷く。南くんも、きっと考えていた。二人でゆっくり静かに歩く間、彼と、恵さんと、――私と、どのように責任をとっていくか。




