#47 looking for
南くんの一方的なショッピングを終えて、やっと気温に見合った服装になったけれど、ぐったりと疲れてしまった。そんな私を見て、南くんはごく自然にカフェに入って、物凄く甘そうなマキアートを頼んだ。
「けいさんって、地元どこなの」
唐突な質問に反射的に答えてから、少し戸惑う。南くんはアメリカ出身だろうけど、アメリカの州も街も全然知らないしよくわからない。普通の人と違って話の広がりようがない。
「そっか。俺、今住んでるとことここくらいしか日本、よく知らないからさ。いつか一緒に行きたいな」
「……そう、か」
「え?」
「私がアメリカのことわからないのと同じくらい、南くんも日本のことがわからないのかって、気づいて。不思議だなって」
そう思うと、こうして日本語で話し合えているのがすごいことのように思えてくる。彼はそこそこ若者らしい言葉も使うし、見た目も常人離れした整い方をしていると言っても、普通の日本人だ。けれど、ほとんどの時間を私が知りうるのとは違う世界で過ごしてきたんだ。
「そう……だね。でも俺、絶対将来は日本に戻るつもりだったよ」
「そうなの?」
と言っても、海外で育った日本人がどう生きるのが普通なのかも知らない。南くんはお父さんの会社があるから、アメリカに居続けるつもりだったんじゃないかと、特に意識せず思っていた。
「向こうで育って、向こうの世界しか知らないままじゃ、父さんや母さんのことも全部は知れないなって思ってたから」
南くんの視線は、どこか遠くを見つめているようだった。まだ、二人とも元気だった頃。幼い南くんが、大好きな家族を知りたいと思ったこと。母親と離れてなお、家族を繋いで、父親とも別れた今になっても、知ろうとしていること。
じわり、と鳥肌が立った。鼻の奥がツンとする感覚に、慌てて手を頬にやる。結露したアイスコーヒーのグラスに触れていたそれは、びっくりしてしまうほど冷たかった。
「そう考えたら、すごく進歩したな」
「……?」
「ホントはこっちに来たばかりは気持ちも落ち着いてなくて、あんなことしちゃったけど。けいさんと出会えて、こんなことになって。でも気がついたら、俺、一つずつ目的を果たしてるような気がする」
思わず口をついて出そうになった言葉を飲み込む。それは、あまりにも考えすぎだ。ちょっと浮かれている南くんに感化されてしまっただけだ。私が、そんなこと、あるわけがない。
「……そんな」
自分でも驚くほど早口だったから、口ごもる。しっかりと息を吸って、照れ隠しなんかには聞こえないように言う。
「終わっちゃったみたいな顔しないでよ」




