#14 南くんと友達
「俺は早川さんのこと、友達とは思ってないんだけどな」
キラキラ笑顔も、どう判断したらいいかわからない。ただ、私の心は早急に、「悲しい」という感情をはじき出した。多分、私は南くんとそういうことになることを恐れている。
30年ものの父親の結婚指輪は、南くんの甲斐甲斐しい手入れによって新品同様の輝きを保っていた。何も言えない私を見て、なおも体調は良くなさそうなのに、静かに辺りの片付けを始めた。
「あのね、ごめん。それと、ありがとう。早川さんは俺のためを想って色々言ってくれたんだよね。ちょっと感情的になってて、わかっていないわけじゃなかったんだけど、取り乱しちゃって」
泣いてしまったことをいっているんだろう。いつもニコニコしている南くんは、きっと辛いことも悲しいこともたくさん溜め込んでいたのだろうから、そうとわかった今となっては仕方ない。ただ、彼の涙の引き金を引いてしまったのが私の発言のどこかだということは確かで、私はそれが何だったかわかっていない。
「次の日、体調やばくて……。なんかへこんでるし、指輪ないし、死にそうで。自分でもビックリするくらい部屋を荒らしてた。ーーなんか言い訳がましいけど、ホントは綺麗好きだからね?」
冗談めかして話せるようになった南くんを見ていると、安心する。てきぱきとした手付きの清々しさを見れば、南くんが普段ちゃんと片付けをできるんだってわかる。
「……なんだかんだ俺、早川さんに勝手に振り回されてて。君のせいじゃないと思う。だから、ごめん」
憑き物が落ちたような南くんは、もう中身がわからないけれど魅力的な、あんパンみたいな存在ではない。彼の生きてきた方法がいかに優しく柔らかかったのかが伝わってくる。なのに、他人を拒む方法で自分を守ってしまった。そのこと自体、南くん自身を苛んでいたのではないか。
「いいの。多分、普通だから。だって、私と南くんって、もう結構仲いい友達じゃない?」
毎日一緒にご飯を食べ、一緒に飲みにも行った。秘密もたくさん知ってしまったし、こうして、カッコ悪いところだって見てしまった。
南くんは、可笑しそうに笑った。彼を「かわいそう」というのではない感情で見ることができるのは、「友達」だと私自身が思っているからだろう。けれど南くんは、散らかりまくった二人の関係を整理しようとした私の言葉を一蹴した。




