表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彩(いろ)なき世界の巫女~パステルカラーで塗り替える  作者: 白前 中


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/10

色を喰らう獣

灰色の風が吹き抜けた瞬間、彩の背筋にぞわりと冷たいものが走った。

精霊たちとの契約を終えたばかりの身体はまだふわふわしていて、魔力の扱い方も分からない。

それでも——胸の奥が警告していた。


「……来る。」


ミュレが彩の肩にしがみつく。


「彩ちゃん……やだ……あれ、無彩獣だよ……!」


空気が歪んだ。

白と黒の“揺らぎ”が地面から滲み出し、形を成していく。


四足獣のようで、影のようで、

目だけがぽっかりと空いたように白く光っている。


色を喰らう獣——無彩獣。


彩の心臓が跳ねた。


「……本当に、色がない……」


世界の灰色とは違う。

そこには“色が存在した痕跡すらない”。

見ているだけで胸が締め付けられるような、そんな“無”だった。


リュミエが前に出る。


「彩、下がってください。あなたはまだ魔力を扱えません。」


「でも……!」


「戦えないのです。今のあなたでは。」


その言葉が胸に刺さる。

彩は唇を噛んだ。


——分かってる。

魔法の色を変えることすら、まだ意識してできない。

さっきの契約の光で装束が変わっただけで、自分の力じゃない。


それでも。


「色を喰らうなんて……許せない……!」


怒りが胸に広がった瞬間、

巫女装束が淡いピンクに染まりかけ——


「だめっ!」


ミュレが慌てて彩の手を掴んだ。


「彩ちゃん、今のまま魔法使ったら、魔力が暴走しちゃうよ!

 色が綺麗なほど、制御が難しいんだよ!」


彩の足が震える。

悔しい。

怖い。

でも、それ以上に——


この獣が“色を奪った存在”だと思うと、胸が焼けるほど怒りが湧く。


無彩獣が低く唸り、彩に向かって跳びかかった。


「——っ!」


身体が動かない。

怖い。

でも逃げたくない。


その瞬間。


シャァンッ!


銀色の閃光が走り、無彩獣の進路を断ち切った。


「下がれ!」


灰色の髪の青年が、彩の前に立っていた。

瞳も髪も色を失っているのに、その姿は誰よりも強く見えた。


「……あなたは……?」


青年は振り返らずに言う。


「こんな場所で色を持つなんて、正気じゃない。

 でも……守る。」


剣を構え、無彩獣に向き直る。


「俺はレイア。

 お前は——色を持つ巫女なんだろ?」


彩の胸が強く震えた。


初めて出会った“色のない人間”。

そして、初めて自分を守ってくれた人。


無彩獣が再び吠え、灰色の世界が震えた。


彩は拳を握りしめる。


——今は戦えない。

でも、絶対に強くなる。

この世界に色を取り戻すために。


装束の胸元が、ほんの少しだけラベンダーに揺れた。


---



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ