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彩(いろ)なき世界の巫女~パステルカラーで塗り替える  作者: 白前 中


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2/8

色との契約

灰色の大地を歩き始めてすぐ、

彩の胸の奥に、かすかな震えが走った。


——呼ばれている。


風も、光も、音もない世界。

それなのに、確かに“色”の気配だけが、彩を導いていた。


「……ここ、なの?」


足を止めた先は、白と黒が溶け合うような空間。

地面も空も境界が曖昧で、まるで世界が途切れているようだった。


その中心に、三つの光が浮かんでいた。


ピンク。

ライトブルー。

ラベンダー。


彩の心臓が跳ねる。


「……あなたたちが、精霊……?」


光がふわりと形を取り始める。


---


ピンクの精霊・ミュレ


「彩ちゃんっ!やっと会えたぁ!」


小さなウサギ耳の妖精が、勢いよく抱きついてきた。

その瞬間、彩の胸の奥がふわっと温かくなる。


「わ……可愛い……!」


「でしょでしょ!彩ちゃんの“可愛い”の魔力、ちゃんと届いてたよ!」


ミュレの体から、淡いピンクの光が広がる。

彩の袖が、ほんのり桜色に染まった。


---


❄ ライトブルーの精霊・リュミエ


「……騒がしいですね、ミュレ。」


透明な羽を持つ氷の精霊が、静かに降り立つ。

その声は冷たく澄んでいて、彩の心を落ち着かせた。


「あなたが彩。

 色を愛し、色を守る者……私たちの主です。」


「主……?」


「ええ。あなたの魔力は、色脈そのもの。

 私たちは、その色に惹かれて集まったのです。」


リュミエの光が触れると、

彩の帯が淡いブルーに変わり、空気が澄んだ。


---


ラベンダーの精霊・ヴェイル


最後の光が、静かに形を結ぶ。


半透明の人影。

性別も輪郭も曖昧で、ただ“美しい”としか言えない存在。


「……境界の子よ。」


彩の胸が強く震えた。


「あなたは、色の器。

 世界に失われた色を呼び戻すために生まれた。」


「私が……?」


「あなたの色は、まだ濁っていない。

 だからこそ、世界はあなたを求めた。」


ヴェイルが彩の頬に触れた瞬間、

巫女装束がラベンダーに染まり、布が半透明に揺らめいた。


---


〈契約〉の儀式


三つの精霊が彩の周囲に集まり、光の輪を描く。


「彩ちゃん、手を出して!」


ミュレが小さな手を伸ばす。

彩がそっと手を差し出すと、ピンクの光が指先に宿った。


「あなたの“可愛い”を、世界に広げようね!」


次にリュミエが彩の胸元に触れる。


「冷静さと守りの力を。

 あなたが傷つかないように。」


最後にヴェイルが彩の額に口づけるように触れた。


「境界を越える力を授ける。

 あなたの色が、世界を変える。」


光が一斉に弾け、彩の身体を包み込む。


巫女装束が、色脈の布として“目覚めた”。


---


巫女装束の真の姿


光が収まると、彩は自分の姿を見下ろした。


白を基調とした装束は、

まるで水面のように淡く揺れ、

触れた色に応じて変化する“生きた布”になっていた。


袖は透明感のある薄布で、

光を受けるたびにパステルの虹が走る。


帯には銀糸が織り込まれ、

彩の魔力が流れるたびに淡く光る。


「……綺麗……」


思わず呟くと、ミュレが嬉しそうに跳ねた。


「彩ちゃんのために作られた装束だもん!

 色が変わるのは、彩ちゃんの心が綺麗だからだよ!」


リュミエが静かに頷く。


「あなたの魔力は“感情”と直結しています。

 だから装束は、あなたの色を映す鏡なのです。」


ヴェイルが囁く。


「色を愛する巫女よ。

 その装束は、あなたの魂そのもの。」


彩は胸に手を当てた。


——この世界に、色を取り戻す。


その決意が、装束を淡いラベンダーに染めた。





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