泉の奥に眠るもの
無彩獣を退け、泉の黒い膜がわずかに裂けたあと。
彩は泉の縁に立ち、静かに水面を見つめていた。
泉はまだ灰色が強い。
けれど、奥の奥——深いところで、
淡い光が脈打っているのが見えた。
どくん。
どくん。
彩の胸の奥の鼓動と、泉の鼓動が重なる。
レイアが隣で剣を収めながら言う。
「彩……泉の奥に、何かあるのか。」
「うん……呼ばれてる。
もっと深いところ……色脈の“核”みたいな場所。」
ミュレが耳をぴょこぴょこ動かす。
「彩ちゃん、気をつけてね。
泉の奥は“記憶”が濃いんだよ。」
リュミエが静かに告げる。
「色脈の核は、世界の色が生まれる場所。
そこに触れられるのは、境界の巫女だけです。」
ヴェイルが彩の背に手をかざす。
「行きなさい。
泉はあなたを待っている。」
彩は深く息を吸い、
泉の水面にそっと手を伸ばした。
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泉の奥へ
指先が触れた瞬間、
水面が光に変わり、彩の身体を包み込んだ。
レイアが叫ぶ。
「彩!」
だが彩の身体は光に溶け、
泉の奥へと引き込まれていった。
——落ちていく。
——沈んでいく。
——でも、怖くない。
光の中で、彩は目を開いた。
そこは——
色脈の内部。
淡いパステルの光が川のように流れ、
空間全体が脈打っている。
彩は息を呑んだ。
「……綺麗……
これが……色脈の中……?」
ミュレの声が遠くで響く。
「彩ちゃん、聞こえる?
そこは“色脈の記憶”が集まる場所だよ!」
リュミエの声も続く。
「気をつけてください。
核に近づくほど、記憶は強くなります。」
彩は光の流れに導かれるように歩いた。
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色脈の核
光の川が集まる中心に、
小さな“結晶”が浮かんでいた。
淡いピンク、ブルー、ラベンダー……
彩の色と同じ色が、ゆっくりと脈打っている。
彩は思わず手を伸ばした。
「……これが……色脈の核……?」
触れた瞬間——
世界が反転した。
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核が見せる“真実”
彩の視界に、次々と映像が流れ込む。
・色に満ちた世界
・人々の笑顔
・泉が七色に輝く光景
・色脈が大地を巡り、世界を支えていた時代
そして——
黒と白の嵐。
虚彩の影。
色脈が引き裂かれる瞬間。
彩は胸を押さえた。
「……痛い……
世界が……苦しんでる……」
核の記憶は続く。
虚彩が泉に触れた瞬間、
色脈の核が砕け、
世界中の色脈が弱まり始めた。
彩は震える声で呟いた。
「……虚彩は……
色脈そのものを壊したんだ……」
ヴェイルの声が響く。
「境界の巫女よ。
あなたが核に触れたことで、
泉は“再生”を始める。」
彩の手の中で、核が淡く光った。
ピンク。
ブルー。
ラベンダー。
彩の色が、核に染み込んでいく。
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核の覚醒
光が弾け、
彩は泉の外へと押し戻された。
レイアが駆け寄る。
「彩!大丈夫か!」
彩は息を整えながら頷いた。
「うん……
泉の奥に“核”があったの。
私の色が……少しだけ届いた。」
泉の水面が淡い光を放ち始める。
黒い膜はまだ残っている。
でも——
泉は確かに目覚め始めていた。
ミュレが嬉しそうに跳ねる。
「彩ちゃん、すごいよ!
泉が息をしてる!」
リュミエが分析する。
「完全な浄化には至りませんが……
核が反応したことで、泉の力が戻り始めています。」
ヴェイルが静かに告げる。
「だが、虚彩はまだこの町に潜んでいる。
核を完全に取り戻すには、虚彩を倒さねばならない。」
彩は拳を握った。
「……行く。
虚彩を見つけて、倒す。
この町の色を取り戻すために。」
レイアは迷いなく頷いた。
「俺も行く。
お前の色がある限り、俺は隣に立つ。」
彩の巫女装束が、
強いラベンダーの光を放った。
次の戦いは、虚彩との直接対決。




