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「よう、ガイツじゃねーか」
宿屋を出たとき空は夜の帳に覆われ星が瞬いていた。夜の町には灯りが点り、少しばかり通りを歩くとそこかしこから美味そうな匂いが漂ってくる。
オレはその中からテキトーに店を選び、店内に足を踏み入れるとそこには偶然にも昼前に野盗の撃退で共闘した傭兵たちが酒盛りをしていた。そして、その傭兵たちの纏め役のガイツは何故か一人だけ別のテーブル席に座ってチビチビと酒を呷っていたのだ。
「ん、おう、ラクルじゃねーか」
「相席、いいか?」
「ん? ああ、いいぜ。」
オレはガイツの許可が出ること前提にして既に椅子に腰掛けていた。そして、側を通りかかった店員を呼び止め、麦酒大ジョッキと酒の肴に最適ディナーセットというメニューを注文。
直ぐに運ばれてきた麦酒の大ジョッキを早速手に取り、
「──グビグビグビ……ゴックン、プッハー♪」
一気に煽ると、追加の麦酒大ジョッキを即注文。
「へぇー、イイ飲みっぷりだ。ところで、聞いたか?」
「何をだ?」
空になったジョッキをテーブルの上に置き、料理がくるまでの暇潰しに、ガイツの話に耳を傾ける。
「今日、俺達が捕まえた野盗のアジトに憲兵らが速攻で、野盗が人々から奪った物の接収に向かったんだと──」
「へぇ~、お仕事がお早いことで」
「──ああ、そうだな。だが、憲兵がアジトに踏み込むと、そこには留守番していた野盗が簀巻きにされて転がってんだ」
「ほう……、それは詰まり、野盗が貯め込んだお宝を掠め取った奴がいたってことだな」
「ああ、その通りだ」
──まあ、“それ”、オレなんだがな。
「んで?」
ガイツに話の続きを促す。
「それでな、野盗のお宝を掠め取った輩は、元の持ち主が判らない金と宝石類の大半をごっそりと、それと“本”を全部持ち去ったそうだ」
「“本”? ……ってことは、そのお宝を掠め取った奴は魔道士か?」
「? なんで、そう思うんだ?」
「そりゃ、本を持ってたってことは価値のある本があったと誰にでも直ぐに推察できる。それに、価値のある本っつったら『魔導書』だろ。」
「……確かにな……」
そこで、ガイツが何やら考え込みだして会話が途切れた。そこへ丁度、店員がオレが注文した料理を運んできた。
オレは考え込んでいるガイツを一瞥してから、大ジョッキを片手に料理皿から食い物を手に取り晩メシを喰い始める。
「モグモグ……、ところでよ、ガイツはなんで一人だけ別席なんだ?」
行儀は悪いが食べ物を喰いながら、入店してガイツたちを見付けたときからの疑問を投げ掛ける。
考え込んでいたガイツは顔を上げると、
「ん、ああ、ほれ、俺は彼奴らの纏め役だからな。本心としては一緒にバカ騒ぎしたいところだが、酔った奴らの世話をするのも纏め役の俺の役目だからな。」
ドンチャン騒ぎする仲間たちの姿を見ながらそう答えた。
「ふーん、そうか」
それから、ガイツと駄弁りながらの晩メシは、オレが五杯目の大ジョッキを空けたところで料理皿に盛られていた料理が尽きて、喰い終わった。
オレは喰った分の代金をテーブルに置き、
「ごちそうさん、代金、ここに置いておくよ」
と、店員に声を掛けて席から立ち上がる。
「俺らもそろそろ宿に戻るか。
向こうの連中のを含めた食事代、ここに置いておくぞ。」
ガイツはオレと同じく代金をテーブルの上に置くと、傭兵の仲間たちを責っ付きながら、オレより先に店を出て行くのだった。
「──さて、オレも宿屋に戻るか」




