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昼メシを喰った後、一人先に宿屋の部屋に戻ったオレは戦利品の整理に取り掛かる。
リュックを逆さまにすると、金銀銅の硬貨に様々な宝石にその他諸々がベッドの上に広がる。
先ずは、硬貨の選別から。
「……ちゅうちゅう、タコかいな……」
金貨から順番に、一分銀貨、一朱銀貨、銀貨、最後に銅貨を各々まとめ、それらを別々の袋に詰め込む。
──さて、金は嵩張るし重いから後で両替に行こう。
そう考えながら、次に宝石に手をつける。
「ふっふっふーん、お! デケェ、ルビー発見!」
良質な宝石はまとめて端に置き、品質がそこそこの物は宝石の種類ごとに分ける。
これには理由がある。
以前、旅先で出会った錬金術師に「そこそこの宝石は、一定数集めて錬金術で再構成した方が、そのままで売却するより高く売れるよ。」と、教わったのだ。勿論、それを行うのに必要な呪文と手順のレシピはちゃんとメモしてある。
オレはベッドの枕元に置いてある旅に必要な物が入っているリュックを引き寄せ、中から件のメモ帳と錬金術に必要な薬品類等を取り出す。
ベッドとベッドの中間に置かれたサイドテーブルを引き寄せ、その上に撥水加工した用紙を敷く。
用紙の上に核となるそこそこ品質の宝石を一つ置き、残りの同種の宝石を一掴みして、置いた宝石の上に宝石を掴んだ手を翳しメモ帳に記された一つ目の呪文を唱える。すると、手の中にあった宝石が粉状になり、用紙の上に置いた宝石の上に降り掛かる。これを入手した宝石が無くなるまで繰り返し、宝石の粉の山をつくる。
次に錬金術に使う魔法薬をその粉の山に万遍なく振り掛けて、メモ帳に記それた二つ目の呪文を唱える。すると、魔法薬に塗れた宝石の粉の山は徐々に楕円状に形を変えてゆき、やがて曇りのない大サイズの宝石が出来上がる。
「──よしよし、イイ出来だ。」
オレは出来上がった宝石を手に取り西に傾いた陽光に翳して出来栄えを確かめる。
それから、他の宝石も同じ作業を繰り返して、日没手前で宝石の再構成の作業は終了した。
窓から覗く黄昏に染まった空を一瞥。そして、夜闇に支配されつつある室内で、まだ整理されていない残りのその他の戦利品を見やる。
野盗のお宝を没収するとき名品や元の持ち主が特定できる物は避ける。何故なら、ややこしい事に巻き込まれることが火を見るより明らかだからだ。だが、今回ばかりは已むを得なかった。
オレは“ソレ等”を一纏めにしてリュックを置いているのとは逆側の枕元に置く。
──中身の確認は明日だな……。
「んじゃ、晩メシでも喰いに行くか。」




