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──パシッ。
「──『コイツ』は正真正銘の『光の賢者の魔導書』だぜ!」
魔導道具『スケサン』で身を隠して近付いていたオレが、黒外套のリーダーの手から『アインの書』をサッと取り返した。オレは直ぐ様バックステップを踏んで黒外套のリーダーから間合いを取る。
「なに!? 貴様ら、いつの間にっ?!」
漸く、オレらの存在に気付いた黒外套のリーダーは幾分か取り乱すものの、オレらとプエッラ一味を交互に見ながら武器を手に取り構える。だが、いまの黒外套のリーダーの僅かな動揺が、配下の黒外套たちに致命的な隙をつくらせてしまった。
「……無念……」
「……任務……失敗……」
一人はジルテの槍に心臓の辺りを貫かれ、もう一人はカウェスの袈裟斬りからの横薙ぎの二撃をもろに食らい斬られた傷口から血を噴き出しながら地に臥した。
「──貴方方は!? ……まあ、いいですわ。
さあ、魔王の駄犬、詰みですわよ!」
プエッラもまたオレらの存在に気付くも、黒外套の排除を優先。ジルテとカウェスが慎重にジリッジリッと、黒外套のリーダーに躙り寄る。
前門のプエッラ一味に後門のオレたち。前後を挟まれた黒外套のリーダーは一人、視線を前後させ警戒態勢のまま、躙り寄るプエッラの配下二人を見据え、
「………………………降参だ。」
と、両手を上げた。黒外套のリーダーのその態度に、
「まあ! 状況を見極めるオツムはお有りのようですわね。」
自分たちの勝利に気を良くしたプエッラが無警戒に黒外套のリーダーの元へと近付いていく。途中、ジルテがプエッラの無警戒振りに慌てて彼女の足を止めようと、プエッラの腕を掴もうとするも空振りに終わる。そして、案の定──。
「──おっと、貴様ら誰一人として動くなよ? 動いたら、この雌犬の命は無い!」
降参の振りをしていた黒外套のリーダーに呆気なく人質に取られてしまうプエッラ。
「卑劣な真似を! 離しなさい!」
黒外套のリーダーの腕から逃れようと藻掻くプエッラ。しかし、黒外套のリーダーの腕の力の方が強く、プエッラの抵抗は無駄に終わる。
「──くくく……、ふあっははは……、やはり正義は必ず最後に勝つのだ! さあ、俺の──魔王様の直属の部下筆頭である、このミギルを称える勝利の花火といこうじゃないか!」
場の雰囲気を支配した黒外套のリーダー──ミギルは一人悦に入って高笑いを上げると、武器を手放して外套の背中の隠しポケットから、見るからに禍々しく昏いオーラを放つ二冊の『魔導書』を取り出した。
「貴様ら、『コイツ』らが何か分かるか?」
ミギルがオレらにこれ見よがしに見せ付ける『魔導書』。その存在に反応したのは、エリーだった。
「それは!? 魔導王トリキスの十二の魔導書の『ネハヨの書』と『イタマの書』! まさか?!」
『魔導書』の正体を告げるエリーの声に、ミギルは醜悪な笑みを深め、
「──ほう、知ってる奴がいるとはな。その通り、コイツらは『魔導王トリキスの魔導書』だ。そして、この『魔導書』には──」
ワザと勿体振った溜めをつくるミギル。しかし、奴が次の詞を言う前に、エリーが曝露した。
「──厄災の十二の悪魔が各一冊に一体ずつ封印されている」
「……おい、女! 俺の台詞をとるんじゃねー!!」
ミギルは折角の見せ場をエリーに横取りされて、喚き散らす。が、すぐに気を取り直し、
「まあいい。では、俺の為の──ひいては魔王様の為の勝利の宴を始めるとしよう」
そう宣うと、ミギルは手に持った二冊の魔導書を一冊ずつ既に事切れている黒外套の配下二人の亡骸の上へと放り投げ、呪文を唱えだした。
──封印されし 悪しき魔よ
汝に血肉を捧げ
いまこそ 枷より解き放たん
来たれよ 深淵なる存在
来たれよ 欲の権化よ
来たれよ 真なる魔よ
穢れし世界に 厄災を齎さん!




