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「──それでも!! 例え、“命のやりとり”をするこになっても、“世界の危機”に繋がるかもしれない『悪事』を、あたしは赦したり見逃したりなんてしないっ!!」
──それはこれまでの旅路の中では見た事のない彼女の並々ならぬ決意の籠もった眼差しと強い覚悟を伴った、エリーの──いや、エリティア・ガヴリニスの詞だった。
「わ、わたしも、こ主人様と師匠に付いて行きます!」
エリーに続いて決意を固めるターミ。しかし、彼女の握った拳は細かく震えており、
「無理はするな。ターミはここでオレらが戻ってるまで待ってろ。な?」
オレはソッと恐怖心で震えるターミの握り拳に手を添え諭す。
「そうだよ、ターミちゃん。お兄ちゃんの言う通り、ターミちゃんはここで待っててね」
エリーもまた無理に強がる弟子を思って、賊の追撃メンバーへの参加に頭を振った。
「──いやです。わたしはいやです! 出過ぎた事を言いますが、ご主人様と師匠が命を張って戦いに挑まんとしてるのに、お二人の仲間であるわたしが共に肩を並べず、ただ後ろで見てるだけなんて、絶対にいやです!!」
しかし、ターミはオレとエリーの言葉に真っ向から強い意志を込めた詞で返してきた。
「それに現在のわたしには師匠と編み出した『魔導格闘術』だってあるんです! 足手纏いになるつもりはありません!」
そして、続け様にそう豪語した。確かに、ターミは奴隷商の館にいた頃、家政婦スキルの他にも『徒手空拳の格闘術』も習っていたようだ。先日のプエッラたちを捕まえときの身のこなしは確かに素人のものではなかった。尤も『スケサン』の効果でターミ自身の姿は見えてなかったがな。閑話休題。
さて、話題を戻すと、ターミが口にした『魔導格闘術』なるものはようは魔法戦士の『格闘家版』だ。少し見せてもらったが、ターミが格闘術を身に付けていたこともあって、即実戦投入しても戦力として機能するだろう。
「なら、これ以上は“待ってろ”とは言わん。但し、途中で“無理だと思った”ら、直ぐにでも魔道士組合に引き返せ。
エリーもだ。
いいな?」
「わかったわ、お兄ちゃん」
「はい、ご主人様」
オレはエリーとターミに最終確認して、今度こそ、『アインの書』を持ち去った輩の追撃にかかる。オレは待ちぼうけさせてしまったイーシュに首肯で合図。そして、いまだに支部長室に充満している土煙を、
「烈風!」
イーシュが放つ強風を起こす呪文で押し出す。すると、支部長室の中は視界良好になり、支部長室内の惨状が目に入る。
「……やはり、壁を魔術か爆薬で破壊して内部に侵入してきたようですね。」
イーシュの言葉通り、ゴドウェン支部長が座っていた執務机のあった場所の後方の壁にはポッカリと大きな穴が空き、建物外の景色が見えていた。そして、其処には『アインの書』を手にした黒外套と、同じ格好した連中が十人弱ほど待ち構えていた。
「ほう、そのまま逃げずに待ってるとはな。律儀なこった……」
土煙が中々収まらずにいたことに“待ち伏せがあるのでは?”と考慮はしていたが、まさか十人超えの団体さんだったとは。
『アインの書』を持ったままのリーダー格と目される黒外套が一歩前に出てきて、
「貴様が持つ、『音と心の賢者の魔導書』二冊も頂こうか?」
と、欲張りなことを言ってきた。──コイツ、何処でオレが“『賢者の書』を二冊持ってる”って情報を嗅ぎ付けたんだ? まあ、いい。倒して黙らせちまえば、同じ事だ。
オレは剣を抜き、装備している魔導道具をアクティブ状態にして構えをとる。エリーもまた、腰に差した打刀──刃を斬れないように潰した剣──を抜いて構え、呪文を詠唱開始。ターミもエリーに続くように呪文の詠唱を始める。そして、イーシュなのだが、先の黒外套の言葉の中の特定の単語に過敏に反応した瞬間、目にも止まらぬ速さで間合いを一気に詰めると、イーシュから最短距離の位置にいた黒外套の一人を居合い一閃で文字通り真っ二つに斬り捨てた。
「──んなっ!?」
イーシュの神速の居合い斬りに浮き足立つ黒外套たち。




