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「──大変申し訳ありませんでした!!」

 数日後。

 マシカの魔道士組合で『通話機』を利用させてもらい、心の賢者であるユングじいさんと通話を終えた直後、“オレがユングじいさんの『魔導書』を持ち去った”という誤解が解けたイーシュが、速攻で土下座謝罪してきたのだ。ま、これで誤解は解けたことだし、オレは寛容に許した。

「頭を上げてくれ、イーシュ。何はともあれ、お前の“はやとちり”でオレは殺されかかったが、こうして何事もなく、お前の誤解も解けたんだ。これからは仲良くしようぜ。」

 土下座したままのイーシュの手を取り立たせ、その流れで友好の握手をするオレ。すぐに手は離したがな。

 さて、現在──ここ魔道士組合の『通話室』には通話機を使ったイーシュとオレ以外にも、人がいる。一人は当然、魔道士組合の職員。そして、通話室は支部長室の隣だったので、ゴトウェン支部長も同席していた。さらに、今日も魔道士組合に魔導の基礎勉強に来ていたエリーとターミも、何故か一緒だ。

「それでですね、ラクルさん。」

「ん、なんだ?」

 顔を上げたイーシュはオレに呼び掛けると、オレの顔をジッと見詰めながら、

「以後、ラクルさんたちの旅路のお供をしてもよいでしょうか?」

 そう申し出てきた。

 オレ個人の意見としては、側に二枚目な優男がいると行く先々で比較されて、オレの精神衛生上によくないので断りたいところだ。だが、無下に断るのも大人気ないので、一先ずは同行理由だけは訊いておこう。

「理由を訊いても?」

「はい、お話しします。確かに、ラクルさんはユング様から『魔導書』を託されました。ですが、ラクルさんがユング様が研究の末に編み出された“魔術を悪用しないという保証”は何処にもありません。故に、僕はラクルさんがユング様の魔術を悪用しないようにお目付役として、付いていこうという次第です。」

 ……おい、この兄ちゃん、オレのことをどんな目で見てやがるんだ? ったく……。

「わかったわかった、好きにしろ。言っとくが、オレはお前さんの分の旅の路銀は出さんからな」

 オレは頭を搔きながら、了承する。断ったところで、どうせイーシュはオレらの後を付いてくることだろう。なら、友好関係を結んでおいた方が後々に役立つ。なにしろ、この優男は剣の腕前だけでも一線級な上に、ユングじいさんの弟子という優秀な魔道士の魔法戦士だ。タダで凄腕の傭兵を雇ってるって思えば、少しは気が楽だ。

「ありがとうございます、ラクルさん。」

 こうして、オレらの旅路に新たな一員が加わったのだった。そして、イーシュは早速、エリーやターミに旅の道連れとしての挨拶を交わしていた。

「──ところで、ラクル殿。光の賢者様からの『依頼』の件、どうなさいますか?」

 程よく生じた間に、ゴトウェン支部長からのオレへ声掛け。その内容は“かの『魔導書』を『魔導書』が選んだ相手に届けてほしい”という依頼だ。ぶっちゃけ、通信でユングじいさんから“とある話”を聞くまでは断ろうと思っていた。なにより、面倒くさいからな。だが、“面倒くさいから”と断るワケにはいかなくなった。何故なら──


 ──ごぐぁあああぁあぁぁあぁーんっ!!


「──んなっ!?」

「何!?」

「キャーッ!?」

「皆さん、大丈夫ですか?!」

「いったい何が!?」

 轟音と激しい揺れが通話室を揺らした!

 オレを含め、全員が轟音と揺れに堪らず床に伏せた。そして、揺れが収まると、

「──ゴトウェン支部長! 支部長室の方から──!?」

 いち早く起ち上がった魔道士組合の職員が、通話室と内扉で繋がっている支部長室を指差していた。視線を職員の指差す先に向ける。すると、先の轟音と揺れで開いた内扉の先──支部長室の室内にはもうもうと土煙りが立ちこめ、室内がどうなってるかはわからない。が、そのもうもうと立ちこめる土煙りの中に黒い外套を纏いフードを目深に被った人影がいた!

 その黒い外套の人影は、職員が発した声に気が付き、此方──通話室の中にいるオレたちへ視線を向けると、くぐもった声で、

「──我らが『魔王』様の為、この『光の賢者の書』は頂いていく」

 と、手に持った『アインの書』を見せ付けながらそれだけを言うと、黒い外套の人影は、まだもうもうと煙る土煙の中へと消えていったのだった────。






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