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──シャキーンッ! ゴッ! ゴロゴロゴロ……、ガンッ!!
──それは電光石火の居合い斬りだった。オレはイーシュが抜き放った刃に思いっ切り弾き飛ばされ、石畳の地面を転がり石塀にしこたま背中を打ち付けた。前以て、魔導道具の効果を発動させて耐刃防御をしてなかったら、オレは今ので上半身と下半身が物理的におサラバしていた。
「……イキナリ、何しやがる?!」
背中の痛みに顰めっ面になりながら、オレは地面から素早く起き上がると、腰の剣を抜いて防御態勢を取りつつ、剣を振り抜いた姿勢のままのイーシュに抗議する。
「──貴方が持ち去った、『ユング様の書』を返していただきたい。」
…………またか……。この優男もまた、他人の言葉に聞く耳持たずの自分の言いたい事を押し付ける輩か。しかも、魔術が使えて剣の腕もピカイチという、質の悪さは『強盗』プエッラより段違に凶悪だぜ。しかも、イーシュは先の詞を言ってる最中にも剣を何度も振るってきやがった。防御態勢を取ってなかったら普通に斬られてたぞ、マジで。
「あのな! オレはユングじいさんから直々に「──土産に──」にって、『魔導書』を貰ったんだ!! 嘘だと思うなら、ユングじいさんに確かめてきたらどうだ?」
「世迷い言を! そう言って、僕がユング様の所へ確認に行っている隙に姿をくらます気ですね!」
──チッ。バレたか。
イーシュの剣はこうして言葉を交わす中でも猛威を振るい、隙あらばオレをなます斬りにしようと刃を一閃せていた。
「じゃあ、手紙で確認したらどうだ? それなら、お前はオレを見張れて、オレに逃げられる心配はねーだろ?」
「今現在、ユング様が居られる庵があるカメリア大陸は魔王軍と連合軍による戦乱の最中、手紙が無事にユング様の手元に届く保証はありません。」
「なら、魔道士組合に有るっていう“遠く離れた相手ともやり取りができる魔導道具『通話機』”を使ったらどうだ? 確か、ユングじいさんの庵は魔道士組合地方統括支部がある町から近かったよな?」
「……………………いいでしょう。」
──チャキン。
イーシュの野郎は漸く剣を鞘に収めた。マジでヤバかったぜ。あーあ、オレの剣の刃が奴の斬撃を受けてボロボロだ。後で買い換えねーとな、トホホ……。
ふと、周囲に視線を向ければ、陽は完全に沈み、夜の帳に覆われた空には数多の星が輝きだし、大通りからは繁華街の灯りがオレと優男がいる人気のない路地に漏れていた。
まったく、また厄介な奴に目を付けられたもんだ……。




