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大通りから入った住宅地に向かう路地。オレらが借りてる借家のある区画の住人はもっぱらが魔道士組合の研究室で寝泊まりするような研究熱心な魔道士ばかりで、夜は繁華街から近いところの住宅地でありながら其処はさながらゴーストタウンの様相を呈していた。そして、繁華街近辺地域にそぐわない──目立つ毛色の場所には、偏見による“まことしやかな都市伝説”が出来やすい。オレらが借りてる借家の区画もその例に漏れず、命知らずな若年層の肝試しの人気スポットになっており、信頼には到底達していないが夜の泥棒に対する防犯対策に気安め程度には役立つかもと思って、滞在拠点の物件を選ぶ一因になったのだ。
空は黄昏に染まった逢魔が時。まだ肝試しには早過ぎる時間なので、肝試しに興じる若者たちの姿もなくゴーストタウンと化した住宅地の路地。
オレらは広場からの帰り道の途中で晩メシの食材を買ったあと、野暮用を思い出したオレはエリーとターミを先に帰らせた。んで、
「──あのよ、ストーキングは止めてくれねーかな?」
広場からずっとオレたち──いや、オレに付いてきていた視線の主に声を掛ける。しかし、オレからの声掛けに応じないストーカー。不気味だぜ……。
オレは服の下に身に着けている幾つもの魔導道具をアクティブ状態にしながら、周囲を警戒しつつ再び声を掛ける。
「おい、オレに用事があるのなら顔を見せたらどうだ?」
すると、二度目のオレからの声掛けに応じたようで、横道の陰から出てきたのは、“金髪サラサラのミドルヘアーで、軽鎧を身に纏い腰には剣を携えた、見るからに無意識に殴りたくなるムカつく程の優男”だった。そいつは、何故か剣呑な雰囲気を醸し出しており、
「──おい、お前が広場で吟遊詩人の真似事をしていた時に使っていた呪文『心潜一顕術』は、心の賢者ユング様が長年の研究の末に編み出された高位の魔術だ。何故、貴様のような小汚い男が“識って、使っている”?」
怒気を孕んだ声音で、オレに問うてきた。だが、この発言で一つか分かったことがある。目の前にいる優男は、ユングじいさんを崇敬し、更にじいさんの研究内容も把握している関係者。しかし、言葉の節々に刺が出ているのは気懸かりだ。なので、オレの返答は、
「オレはラクルってんだ。あんた、名前は?」
先ずは自己紹介で、様子を探る。
「…………僕は、イーシュ・アディン。ユング様の弟子の一人で、魔法戦士を生業にしている。」
優男は逡巡するも名乗った。が、……やはりか。っつうか、この優男こと──イーシュが『魔法戦士』とはな。ちなみに、『魔法戦士』とは魔法と武器戦闘を両立する傭兵というのが一般的認識だ。閑話休題。
「──それで、再度、問いますが、ラクル“さん”は何故、ユング様のオリジナルの呪文を識ってるのですか?」
自己紹介の効果か、“さん”付けと言葉遣いは丁寧になったが、イーシュの言葉からは刺々さはいまだに取れず。
──さてさて、どうしたものか?
オレは取り敢えず、密かに魔導道具の効果を発動せてから、イーシュに答えを返してやる。
「──……そいつは、オレがユングじいさんから、土産に『魔導書』を貰っ───」




