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ラクル殿へ。
~中略~
この度は、私が書き記した魔導書を奪った賊の手から無事に取り戻し、更にマシカまで届けて頂き、深く感謝しています。
~中略~
さて、実に不躾ながら、ラクル殿には新たな依頼を頼みたいのです。
それは、マシカまで届けて頂いた魔導書を“『魔導書』が選んだ人物に届けて”頂きたいのです。
勿論、この依頼を無理強いは致しません。
ですが、私の身勝手な依頼を受けて頂ければ幸いです。
~以降、省略~
アイン・アルバート・シュタインより。
「──だとさ。」
オレは自分が読み上げた手紙をゴドウェン支部長に渡して見せた。別段、手紙には“他人に見せてはダメ”と書かれてなかったしな。
オレから『オレ宛の光の賢者からの手紙』を受け取ったゴドウェン支部長は、手紙に目を通しながら、手紙の内容を反芻すると、顔を上げ、
「成る程。それで、ラクル殿は光の賢者様からの依頼を請け負うのですか?」
当然の質問を投げ掛けてきた。
オレはゴドウェン支部長から返された『光の賢者からの手紙』を封筒に戻してかばんに仕舞いながら、
「すみませんが、保留にさせて頂けませんか?」
と、ゴドウェン支部長に返答する。
「保留……ですか? 理由を訊ねても?」
ゴドウェン支部長の尤もな疑問に、オレは口を開く。
「……実は、『音の賢者』からも、光の賢者と同様の依頼を受けてて、な……」
そう言って、オレはかばんから“音の賢者ヴァン・ベートー・バッハから預かっている、彼の直筆の研究成果を記した魔導書『ヴァンの書』”を取り出して、ゴドウェン支部長に見せた。
「え!? “『お爺ちゃん』の『魔導書』”!?」
「はい!? 音の賢者様の『魔導書』ですって!?」
「うそ!? お兄ちゃん、あたしにも光の賢者以外の賢者が書いた『魔導書』を持ってるのを秘密にしてたなんて、ヒドい!」
すると、いの一番に驚いたのは支部長室の扉の横に控えていた案内人の女魔道士だった。っつうか、彼女「──『お爺ちゃん』──」とか、言ってなかったか?
ま、オレにとっては案内人の女魔道士が音の賢者の孫だろうが、これといって関係ないので、彼女のことは頭の端に残っていれば記憶しておくことにしよう。閑話休題。
で、案内人の女魔道士、ゴドウェン支部長、エリーの三者三様の驚き様を順繰りに見たオレは話を進める。
「なにしろ依頼の内容が“『魔導書』が選んだ相手に届けろ”だ。いったい、誰に届けていいのか分からん依頼を二つも請け負うのは、さすがに即で二つ返事するのは無理だ。だが、幸いにもオレらはここ──マシカに最低一ヶ月は滞在する予定だから、その内に返答させてもらっていいか?」
「……分かりました。光の賢者様の依頼への返答はそれで結構です。」
「んじゃ、オレらの用事は済んだし、退散させてもらうぜ。」
オレは手に持ったままの音の賢者の『魔導書』をかばんに戻し──パシッ!




