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──三分ほどが経ち、
「──おおー、あったあった」
目的の物を見付け出したゴドウェン支部長は、ソレ等を手に取ると応接セットの方へと戻ってきて、
「ささ、先ずはおかけ下さい。」
と席を勧めてくる。オレはゴドウェン支部長の言葉を受け、応接セットのソファーに腰掛ける。それに、エリーが続き、オレの横に座る。そして、ターミはというと、ソファーの下座側に姿勢を正して立った。
ターミの動きにゴドウェン支部長は一瞬だけ眉根が動くが、彼の視線が彼女の首元で輝くアメシストを遇った『銀のチョーカー』を目に留めると、気にする素振りもなく、ゴドウェン支部長もまた、オレらと向かい合う側のソファーに腰掛けた。
「此方が、光の賢者様からラクル殿への報酬と手紙になります。」
そして、ゴドウェン支部長は応接セットのテーブルの上に未開封であることを示す封印札が貼られている木箱と封蝋されている表に“オレへの宛て名”が記された封筒を置いた。
オレは報酬と手紙を見比べ、先ずは報酬の確認をする。テーブル上の木箱を手元に手繰り寄せ手に取り、封印札に記された呪文を唱える。すると、封印札はすべてスルリと剥がれ落ちた。
「──!? まさか、封印札に『封錠』の魔術が掛かっていたとは! 道理で、封印札をバレないように剥がそうとしても剥がれなかったワケだ……」
その光景を見て、驚愕を禁じ得ないゴドウェン支部長。ってか、なに他人様の荷物を勝手に開けようとしてんだ、このオッサンは……?
心中でそう思いつつ、木箱をテーブルの上に置き、木箱の蓋を開ける。さてさて、木箱の中身は、
「──腕輪? ですか?」
そう、ターミが口にした通り、木箱の中に収められていたのは腕輪である。ただし、只の腕輪ではない。オレは箱の中から『腕輪』を取り出して、皆に見えるようにしながら、
「コイツはかの有名な『魔導道具技術師レオナルド』が造った『スケサン』って魔導道具だ。」
──さて、ここで一つ閑話を。『魔導道具技術師レオナルド・エジン・ナカマッツ』とは、約千三百年に活躍した『魔導道具技術師──魔導道具の研究開発者』だ。現在のこの世界で使用されている“魔導道具の半数”は彼とその弟子たちに因って造られた魔導道具の量産化されたものがそのまま現役か原型なのだ。と、まあ、こう述べれば『魔導道具技術師レオナルド』が、どれだけスゴいか分かるだろう? 閑話休題。
「「──んなっ!?」」
ゴドウェン支部長とずっと扉の横に控えていた女魔道士が、オレが手にしている『スケサン』の製作者の名前に驚愕の声を漏らした。まあ、然もありなん、だ。
オレは更に箱の中に添えられていた『光の賢者からのメモ』を取り出して、その『メモ』を黙読しながら、魔導道具『スケサン』の解説をする。
「『コイツ』を使用するとな、装着者は透明になるんだ。しかし、“完全に光が透過する為、目の中の網膜ってところに光が当たらなくて盲になる”って欠陥があった。
だが、光の賢者がこの『スケサン』を改良してくれて、“透明になる効果を使用しても、目が見える”ようになったんだ。
スゲェーだろ?」
オレの解説にいの一番に反応したのは、
「……な、成る程、男の夢を体現……──ゴホン、ゴホン。ではくて、隠密行動にもってこいの『魔導道具』ですな。」
ゴドウェン支部長。ちなみに、彼の言葉の前半部分でこの場にいる女性陣たち全員が軽蔑の眼差しをゴドウェン支部長に向けたのは言うまでもない。
オレは魔導道具『カクサン』をしている腕に『スケサン』も嵌め、
「しかもだ。この『カクサン』と、同時併用すると──」
「なんと!? ラクル殿と、お連れの二人が消えた!?」
『スケサン』と『カクサン』を同時使用した。その結果、オレとエリーとターミの姿は透明になり、ゴドウェン支部長たちからは消えたように見えたのだ。
「──『スケサン』を身に着けていない周囲の人間も任意で『スケサン』の効果対象にできる。」
透明化を解き、姿を現す。
「これは、凄い! ラクル殿、その二つの魔導道具を私に……──」
「──譲りませんよ。これ、どちらとも“魔導道具技術師レオナルドが造ったオリジナル”な上に、世界に二つと無い物ですので。」
オレはゴドウェン支部長の言葉を制して、「ノー」を突き付ける。当然だ。『スケサン』は解析されて量産でもされた日には目も当てられない事になるだろう。そして、『カクサン』に至っては、オレの武器の一つだからな。これまでの旅暮らしの中で、命の危機は何度もあった。そのピンチから生還できた一因が、この魔導道具の『カクサン』なのだ。故に、誰かに譲る気は毛頭ない。
「……そうか、致し方ない。
ところで、光の賢者様からの手紙の方は──?」
ゴドウェン支部長の言葉に、オレはテーブルの上にある封筒手に取り、裏面にある封蝋部分をペリッと剥がして中身の手紙を取り出す。
そして、手紙を広げて手紙の内容を確認する。




