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──町に辿り着くまでの間、オレはガイツに“カメリア大陸での『世直し』エピ”を語ってやった。ところどころに誇張を交えたりはしたが、事の顛末までの大筋は事実のまま語ったので、問題はないだろう。
町に到着したとき、既に太陽は山の陰に沈み、一番星が空に輝いていた。
ガイツたちとは町に入ったところで別れ、オレらは今日の宿屋を探して町の目抜き通りを歩く。
「あ! お兄ちゃん、よさげな宿屋、発見!」
「お! やるな、エリー」
「なんですの? あの見窄らしい建物は。わたくし、嫌ですわよ、あの様な粗末な宿に泊まるなんて!」
──……この、プエッラめ、またしても!?
エリーが見付けた宿屋は木造で、しっかりと外観も整った手入れの行き届いた見るからにいい雰囲気の宿屋だ。しかし、プエッラの野郎は、いわゆる“貴族特有の偏見”で、泊まることを拒否った。だが、こいつはオレらにとって好都合かもしれない。“余分なお荷物とおサラバする”な。
「──そうか。なら、プエッラは、お前が好きな宿屋に泊まればいい。オレらは『ここ』に泊まるから。」
「ええ、そうさせてもらいますわ!」
──よし。かかった。
プエッラは「どの宿屋にいたしましょうか?」と悩みながら、早速、オレらから離れていく。
既に“奴隷のフリ”をすっかり忘れ去っている、プエッラの背中を見送りながら、オレは内心でほくそ笑む。
「──んじゃ、部屋取って、さっさと晩メシでも喰うぞ。」
「うん。」
「はい、ご主人様。」
「──ふいぃ~、喰った喰った。んじゃ、あとは部屋に戻ったら体を拭いて、明日に備えて寝るか。」
宿屋の階段を先頭で上るオレ。
「あ、お兄ちゃん、あたしの背中、拭いてちょうだい♪」
「え!? 師匠?」
「ん? ターミちゃん、なーに?」
オレの発した言葉にエリーが反応した。そして、そのエリーの言葉にターミは驚く。
一瞬、オレは「はて?」と思ったが、よくよく考えれば、
「そ、その、師匠はご主人様と……?」
「……ああ! あたしね、別に異性とかに裸を見られても平気だし」
ターミのその言葉に、合点がいったエリー。そう、エリーの無頓着に慣れて忘れていたが、普通は男が特定の事柄かやむを得ない状況以外で女の柔肌を目にするのはセクハラものだ。なので、
「エリー、体を拭くときは、これはからはターミに背中を拭いてもらえ。その間、オレは部屋を出ているから」
旅費は基本的に節約するのが旅人の常識。故に、ターミが旅の仲間に加わっても宿屋で泊まる部屋は『複数人部屋一択』だ。というワケで、オレは忘れていたエチケットを思い出した。
「ええーっ!?
ターミちゃん、お兄ちゃんになら裸を見せても、大丈夫だよね?」
「え!? ……あ、それは……、その……」
「こら、エリー。ターミを困らせるな。」
──ってなことが、昨晩あった。
んで、翌朝──詰まりは、今日。
オレはエリーとターミたちに先んじて目を覚まし、二人が起きるより先に身仕度を整えた。それから、二人を起こし、オレは二人に身仕度を急かしてから、
「先に一階の食堂で朝メシを喰ってるからな」
と告げて、泊まっていた部屋を出た。
因みに、宿屋を出るとき、レジカウンターにて宿泊料を支払った際に宿屋の女性店員から、
「昨晩は、お楽しみでしたね」
と、言われたのだった。……なんのこっちゃ……?




