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太陽が中天に上り詰めた頃合い、オレが町の出入口の一つの西門前に到着すると、エリーら女子グループはまだ着ていなかった。
ま、女の買い物は長くなるのが常套だしな。
そんなことを思いながら通行の邪魔にならないよう門の横に立っている門番をしている憲兵の横──から少し距離を取って、町を囲っている柵に背を預ける。
ボーッと視線を流せば、意外と町への人の出入りは活発だ。まあ、この町は大都市の『魔道都市マシカ』への通り道の一つだから、これぐらいは普通か。
そんなことを考えていると、
「──おーい、お兄ちゃんー!」
「──ご主人様ー!」
エリーとターミの声が聞こえてきた。オレは声がした方へと視線向ける。すると、エリーとターミ、ついでにプエッラがこちらへとやって来る。
「お待たせ、お兄ちゃん。どうよ? ターミちゃん、より可愛くなったでしょ♪」
到着早々のエリーの弟子自慢にオレはターミの出で立ちを天辺から爪先まで見やる。
白の無地の半袖シャツに長手袋、外側は白でピンク色の縁取りが入ったフード付きマント、下は黒のキュロットスカートにニーハイソックスで歩きやすそう且つ丈夫そうなシューズ。そして、ターミの目立つピンク色の髪は項の辺りで一括りにまとめられていた。
「──へぇ~、似合ってるじゃねーか。」
「……エヘヘ、ありがとうございます、ご主人様。
師匠、ご主人様に褒められちゃいました♪」
オレの褒め言葉にターミは嬉しそうにはにかむ。およ? オレ、ターミに嫌われて……ない? もしかして、カフェで俯いていたのは照れ隠しだった? ……ま、いいか。
「でしょ♪ でしょ♪
よかったわね、ターミちゃん」
「はい、師匠」
ターミのコーデをオレに褒めらたのが嬉しいようで、コーデをしたエリーは得意満面。
──さて、問題……というよりは、“コイツ”は自分が『奴隷のフリ』をしている自覚があるのだろうか?
プエッラの服装は『奴隷商の館の制服』から、青地のシャツに同じく青地のスカート、更にガントレットに胴全体を覆う銀──もしくはミスリル銀──製の鎧に足もレッグアーマーを装備し、腰にはシンプルながらもオレが持ってる物よりも上等な剣を提げてやがる。オレがくれてやった支度金では到底買えない一級品の装備品の数々。極め付けは、『黒革のチョーカー』を着けていない事だ。奴隷商の館でもらったパンフレットによれば“奴隷が身に着けている『チョーカー』は『奴隷商人への売却時』か『奴隷身分からの解放時』にしか外せない”とある。無理に外そうとすれば『奴隷の首から上が、ドカン!』と、なる旨が遠回しにパンフに示唆されている。
「あら、なに? わたくしの姿に見とれたのかしら?」
「……いや、それは無い。マジで。」
オレの視線に気付いたプエッラが高慢に見下してきたが、スルー。
──ホント、なんなだコイツは?
オレは心中で首を傾げるが、表情にはおくびにも出さず、エリーに耳打ちで訊ねる。
「──なあなあ、エリー。アイツの装備、どうやって入手したんだ? まさか、万引きじゃあないだろうな?」
「──それがね、あたしたちが服屋を探して道を歩いていたら、明ら様に不審な二人組の露天商が彼女に声を掛けてきて、お兄ちゃんが渡した支度金と『あの装備が入った包み』を猿芝居未満の棒読み台詞のやりとりをした後に交換したのよ」
エリーからの回答に、オレは「成る程ね」と相づちを打つ。
──プエッラの事について、深く考えるのは止そう。
そう決めたオレは、プエッラを含めた全員の顔を見渡し、オレがここに着いたときから手に持っていた『物』を順に渡していく。
「──皆、昼メシまだだよな? “コイツ”は今日の『昼メシ』だ。歩きながら喰ってくれ」
オレは皆にそう言って、屋台で買っておいた『ライスボール』を配っていく。
「わあ! ありがとう、お兄ちゃん。」
「ありがとうございます、ご主人様。
そういえば、お昼まだでしたね、師匠。」
「……はん。庶民の食べ物など、わたくしの口には合いませんわ!」
エリー、ターミへと配り、そして、プエッラに『ライスボール』を渡すも、この女、受け取った瞬間に投げ捨てやがった!?
弧を描き、ポトリと地面に落ちたライスボール。
──なんて事を!?
「……あっそ。食べ物を粗末にする奴には、もうやらねー」
オレはプエッラが投げ捨て地面に落ちたライスボールを拾い上げる。幸い、葉の包みで包まれている為、中身のライスボールは無事だった。
エリーとターミもまた、食べ物を粗末にするプエッラに蔑みの視線を送っていた。
オレはライスボールを包んでいる葉に付いた土埃を手で払うと、
「それじゃ、出発するぜ。」
と歩き出す。包みを開けてライスボールを囓りながら。




