お次はダンジョン攻略です
それからも狐はちょいちょい現れた。
具体的に言うといなりの試作の時は必ず現れるし、風呂だとか買い出しだとかちょいちょい一緒に行動するのである。
そのたびにまぁ……あれだ。他の人達が凄い表情で狐の事を見ているのである。
と言ってもそれは宿に居る人達だけであり、街では流石に普通の狐として扱っているが。
偶然アセナと狐が鉢合わせした時、アセナが思いっきり狐に対して威嚇した。
それはもう宿どころか国中がパニックになるレベルでの威嚇だったので狐は全力で逃げ出した。
その後は将軍とか宮司さんとか色々偉い人とかノーマ国王の近衛兵とか色々来るほどの大騒ぎだったので、アセナにはやり過ぎた罪でしばらく大人しくしてもらう。
で、もう完全にバレたと思ったのか、狐は今現在俺達と同じ大部屋で朝食を食べている。
それからいい加減はっきりさせよう。
「おい狐。お前が狐の真祖でいいんだよな?」
そう朝食を食べながら言うと狐はあっさりと肯定した。
『そうだよ。私が狐の真祖です♪』
何と言うか……今の一言だけで相当ウザい事は予想できてしまった。
これ多分マコトに近い性格してるよ。とにかくウザくて気に入らないタイプと言うのはよく分かる。
アセナが気に入らないのは納得できるし、と言うか既にアセナが牙むき出しで唸ってる。
「はぁ。かくれんぼ勝負は俺の勝ちでいいんだよな?」
『当然だよね。ちゃんと私の事を見付けてくれたんだから、キャ!』
なんだかくねくねしてるが……なるほど。俺の周りには全くいなかったタイプの性格だ。
「アセナ。ゴー」
そう言うとアセナは狼の姿になり、即座に狐の首を強めに噛んで畳の上に押し付ける。
『ちょ、ちょっとアセナ!?少しきつくないかしら?』
『このぐらいがちょうどいい。クソ姉。このまま噛み殺して……』
「アセナ、懲らしめるのはいいが殺すな。この国と敵対するつもりはない」
狐の護衛なのか、この部屋の外には多くの獣人達が集まっている。
ここで喧嘩すれば完全に敵対行動となる。教会との戦いの前に無駄な事は避けたい。
そう言うとアセナは渋々と言う感じで噛む力を緩めた。でも狐を押し付けるのは止めない。
狐はため息を付くと、俺を見ながら言う。
『本当によくこの子を手懐ける事が出来たわよね。無口で無表情なくせして感情的。気に入らない相手は全て噛み殺してきた狼よ?よく妻にとして共に生きる道を選べるね』
「気が合う相手を選んだだけだ。とやかく言われる筋合いはない」
『そう。それじゃアセナに聞くけど……』
『……なに、クソ姉』
『あなたいま幸せ?』
その声色は相手を心配している様な声色だった。
どこにでもいる姉が妹を心配している様なそんな声色。
アセナは狐を噛むのを止めると狐を睨むように見ながら言う。
『当然。タツキと一緒に居るのは幸せ』
『そう……ならその幸せちょっとだけ分けて♪私もタツキちゃんに――』
『断る』
そう言った後アセナは狐が食べていたいなりの残り、最後の1個を食べた。
『あー!お姉ちゃんの最後の1個が!!』
「姉なら少しは妹に分ける。もうちょっと薄味が好きかも」
アセナは人型になりながら指に付いたいなりの汁を舐めながら言った。
俺が作ったいなりを元に、この宿のちゃんとした料理人が作った物らしい。
全員の皿の上に2個ずつ乗っけられていたが、やはり素人の俺が作るよりも美味しかった。
狐の皿の上にだけ5つも乗っていたのだから相当気に入ったんだろう。
俺は食事を続けながら狐に聞く。
「それで、俺はお前の事を見付けたんだから俺の勝ちって事でいいよな?」
『え~っと。協力に関しては問題ないんだけど……私も戦闘に参加しないとダメ?』
「出来ればな。だって真祖だぞ、最大戦力の1つとして期待してる」
そう言うと狐は気まずそうにする。
一体なぜだろうと思っていると、宮司さんが現れて言った。
「失礼します。現在のお狐様は封印された状態であり、戦うのは厳しいかと存じ上げます」
「そうか。封印はされてるんだもんな。それで本体はどこに?」
「それが……このお山の地下です」
「地下?しかもこの山の?屋敷とかそう言うんじゃなくて?」
俺の頭では何が言いたいのかよく分からないのできちんと聞くと狐の真祖が話し出す。
『何と言うか……当時私の配下の狐の獣人達や、アセナちゃんの配下が大暴れしたから獣人族の評価は当時最悪だったの。真祖の眷属は獣人族からすれば名誉ある事だったけど、他の人間やエルフ、ドワーフ達はそれを危険視した。なのであえて私を封印すると言う事で人類側である事を示したの。色々嘘はついたけどね、だから意識である私は表に居るんだけど』
「つまり自ら封印されたって事なんだよな?それなら本体の回収も簡単なんじゃ?」
そう思って聞くと狐は首を横に振った。
『残った本体は当代の勇者とその仲間が封印したわ。この山の地下にあるトラップだらけの地下室にね。私1人で取りに行こうともしたんだけど、この状態じゃトラップがキツ過ぎてキツ過ぎて。無理矢理通れなくもないけどこの状態で死んじゃったらどうなるか分からないし、配下の子達じゃ実力不足。だからタツキちゃん。取りに行って♪』
何と言うか……対策がバッチリしていると言うか何と言うか。
封印された状態の狐では取りに行けないから俺に取りに行かせるとか、ちゃっかりしてるな。
アセナは俺に目線でこういう奴だと訴えて来る。恐らく封印前からこういう事を繰り返してきたのだろう。
ウザくてちゃっかりした性格。そりゃ人によっちゃ嫌われるって。
俺は食べ終えて「ごちそうさま」と言ってから狐に聞く。
「それで、その地下への行き方はどうなってるんだ」
『私の屋敷から行ける。表向きは真祖開放を防ぐためって言っておいたから難なく建てられてラッキーだったのよ、実力はあったけどあの勇者おつむが足りなかったから本当に扱いやすかったわ』
しかも腹黒いな……当然の考えかも知れないけど。
ま、俺も正直バカだと思うし、人の事言えないか。
「いいぞ。本体を取りに行くのは構わない。でもいくつか条件と約束をしてもらうぞ」
『当然ね。それでどんな条件と約束?』
「まずは約束から。ちゃんと本体を回収出来たら教会との戦争時に協力してくれる事。別に兵を貸せって言うつもりはないが、予備戦力としていざと言う時助けてもらいたい」
『もっと具体的にお願い』
「言ってしまえば俺とアセナ達、そしてアナザ達で取りこぼしが出そうな時だな。俺は教会の過激派を殲滅させる気だからな。数が多ければ取りこぼしが出て復讐を誓うかも知れない。そうなったらいたちごっこの始まりだ、後が面倒臭いから確実に殲滅させる」
『そう。ちなみにこの子達、獣人族以外で当てはあるの?』
「ない。ホワイトフォレストから協力を頼んでいるが……無理をさせる気もない。相手は天使を憑依させた人間だろうし、正直キツイだろ」
『後で詳しい情報を頂戴、後で将軍と共に考えるから』
「後はこの国で自由に出歩ける権利かな。俺はこの国が気に入った。また旅行で来たい」
『それぐらいなら構わないわ。妹達と会いたいし』
約束に関してはこんな物でいい。
それから条件だが――
「次に条件。本体回収には狐、お前も来い」
『え!?私実力的に無理なんですけど!』
「道案内は必要だろ。それにお前だけ楽してるって何か気に入らない」
『ほとんど感情的な物なんじゃないのそれ?』
「感情的な物が混ざっているのは認める。でも道案内が欲しいのは事実だし、お前来ないとアセナが暴れそうだから」
アセナは狐に対して強制的にでも連れて行くと既に目線で語っている。
これでごねたら無理やり連れて行く事になりそうだから先に言っておいただけだ。
アセナの目線に気が付いていたのか、ため息を付いた後に言う。
『分かったわよ。道案内はしてあげる。でもちゃんと私の事守ってね?守ってくれたらサービスしてあげる』
「サービス?」
『具体的にはお嫁さんにでもなって――』
アセナが飛び掛かりそうになったので止める。全力で止める。
「タツキ放して。あの狐殺せない」
「ステイだアセナ!!沸点低い!狐に対して沸点低すぎるって!!」
抱き付いて止めようとするが引きずられる俺。
狐って自分から地雷踏みに来てんの?自殺願望でもあるんじゃないかと思う程だ。
『じょ、冗談よアセナ!ただお礼するならそれぐらいの覚悟が――』
「タツキの妻は私1人だけでいい。特に狐、お前はダメ」
『な、なによ~。封印前は雄に全然興味なかったくせに~』
怯えながらも言う狐。そしてアセナはトキにも目線を配るが、トキは真正面から睨み返して来るのだ。
女の戦いって恐いな~。
「とにかくその地下に行くのは実力者だけって事だな。俺と狐は行くから……後はアナザ達に任せればいいか?」
「お任せください」
そう言って俺の影から音もなく現れる5人の悪魔達。元々戦闘が大好きな様なので丁度いいだろう。
アセナ達他の真祖組を連れて行くのは人間関係的な問題が残っているし、地下と言う事は狭い可能性が高い。サイズを自由にできるとは言え狭いだろう。
それに大技使って地下が崩壊したらと思うとシャレにならん。一応モグラの力持ってるけどさ。
「と言う訳で狐を連れてアナザ達と一緒に行くよ。これなら実力的にも問題ないだろ?」
「ん。アナザ達なら安心。でも……」
「でも?」
「タツキ。狐は信じちゃダメ。悪い女」
「了解。安心しろ、俺が惚れた女はアセナだけだから」
そう言うとアセナはほっとした様にする。
そして頭を撫でるとより安心しきった表情になるのでこのギャップが堪らないのだ。
『ちょっとみんな、アセナのあの顔なに?あんな表情する子だったっけ?』
狐がアセナ以外の真祖達に聞いている。
「いつの間にかする様になってたわよ。冬から見てたけど……はたから見るとご主人様大好きな犬よね、あれ」
「そうですね。タツキさんの隣が最も安心する様で、常にくっ付いてます。あんな風に安心しきった表情で」
「だよね~。アセナお姉ちゃんヤタ達の前でもベタベタだもん。羨まし~な~」
「独占。ズルい」
『そう……あの無感情な子が今1番この世を楽しんでいるのね……』
何か考える部分があるのか、狐はそんな事を呟いた。




