ダンジョンはアナザ達に任せた
俺とアナザ達を連れて再びお山の屋敷に向かう。その真祖を封印した地下へと続く道に行くためだ。
俺は前を歩く狐に聞く。
「ところでその地下に続く道ってどこにあるんだ?」
『奥座敷で私の影武者が居る所。他の者が間違ってはいらない様にするためにあそこは私の部屋になってるの』
「ふ~ん。それだけじゃない様に思えるけどな」
『当然。私の本体を壊そうとする者が来てもいい様に待ち構えている点もあるの、自分の本体を守るためね』
そっちの意味合いの方が強そうな気がするが、これは口に出さなくてもいいだろう。
俺と狐は奥座敷に行き、狐が壁を叩いた。
『ここよ。ここをふすまの様に開けると奥に道があるわ。入り口は狭いけど奥の方は普通に歩けるから、おっきいタツキでも入れれば大丈夫だけど……入れそう?』
「……ちょっと不安だな。よし」
俺は変質を使って身体を一時的に小さくした。小さくなると言っても子供の頃に戻る的な感じだ。
服の方はマコトが創ってくれた服なので変質で小さくなった身体でもすぐに合わせてくれるから本当に便利。俺はふすまの様に開けた隠し通路に身体を通すと、しりもちをつきながら隠し通路内に入れた。
「あいてて、ここがその隠し通路でいいんだな」
『ええ。というかそんな幼くなる事も出来たんだ。ちょっとかわいい♪』
「それではタツキ様。先に罠などを破壊してまいりますので少々お待ちください」
『あれ?道案内は?私そのために来たはずなんだけど??』
「すでに魔法でこの空間は掌握済みですのでおまかせください。それでは」
アナザ達悪魔組が一切に動き出し、過去の勇者達が仕掛けたトラップを破壊しに動き出した。
ある程度奥の方から「私が迅速に全てのトラップを破壊します」「面倒だから戦術級魔法で――」「止めなさい!この道を壊すつもりですか!!」などと言う張り切った声が聞こえてくる。
さて、俺達は安全が確保されるまで待機していればいいのだろう。俺は元の姿に戻って狐と話す。
「なぁ狐。お前を封印している物ってどんな形なんだ?」
『私を封印しているのは勾玉の形をした魔石よ。掌よりも小さいから封印を解くのはここから出てからにしてもらっていい?』
「了解。にしても随分とあれだな、今は大人しいじゃん」
『だって助けてもらっている最中だもの。気に入らないからと言って封印を解いてくれなくなったら意味がないもの』
そう言って丸くなって寝るようなポーズをとる。
俺はそんな狐を見てやっぱりと思う。
「双子の姉ってだけあってやっぱりアセナと似てるな」
『本当?私は嬉しいけどアセナは嫌がりそう』
「かもな。でもやっぱり似てるんだよ。狐と狼だから似てるって事じゃなくて、雰囲気が似てる」
そう言うと狐は嬉しそうに俺の元に近付いてからまた丸くなる。
『あら、浮気でもする気?アセナは独占欲が強いから凄く怒るし悲しむわよ』
「そんなつもりで言ったわけじゃない。でも……やっぱ似てるんだよ、その幸せそうな表情と雰囲気が」
そう言うと狐は驚いた顔と、うれしそうな顔が混じったような雰囲気が出る。
しかしすぐに隠してからかう。
『本気で浮気でもする気?ヤダ~襲われちゃう~』
「襲わねぇよ。まぁ獣状態でアセナとした事あるけど」
『え、ちょっと待って。それホント?』
「ホントホント。前にどんな姿でも受け入れられるかーって聞かれたから狼状態で抱いたら信じてくれた」
あれはあれで中々によかった。
アセナの気持ち良い体毛を抱きしめながらするのはちょっと癖になりそうだった。まぁアセナはその後獣人体でしか何故かしてくれなくなったけど。
1度きりの一夜でした。
『ほ、本当なんだ……変態』
「おう変態だ。というか生物学的に言えば同種族で愛し合うのが普通なのに、他種族で愛し合っている時点で普通じゃないんだよ。特に人間なんて言うちょっと探せばどこにでもいる様な種族の場合は特にな」
『それなら……何でアセナ達を愛してくれるの?おかしな部分が大きいけど、そうやって常識的な事も言える。なのに何故?』
「単なる俺の性癖。それにどうでもいいって考えのせいだ。俺にとっての人間の定義は言葉が通じるかどうか、だから獣人族だろうが人魚族だろうが毛嫌いはしない。種族が違うからと言って、そんな下らない事で損もしたくない。ど~でもいいんだよ。種族なんざ」
そう言うと狐は何かを感じたのか、俺の匂いを嗅ぎまくる。
この行動もアセナがよくしてた。俺の言葉が信じられない時、よくこうして汗の臭いで本当か嘘か見極めようとしている時の動きだ。
「先に言っておくが嘘はついてないぞ。というかアセナ達と暮らしてると嘘ついたところで無駄だ。いろんな方法で即バレる」
『……よく分かってるみたいじゃない。それにしても種族なんてどうでも良い、か。この世界じゃ考えられないわね。どいつもこいつも、自分の種族こそが最高だと信じて疑わない』
「そう言う問題もあるのか。エルフとか特にプライド高そうだもんな」
『ホントあの木に住み着いたネズミ共が。いつか食い殺してあげる』
物騒な事を言っているが、エルフ達は真祖封印を諦めていないのだから、その内敵になるのは目に見えている。
だからと言って先に潰そうとかそう言う考えにはならないので、放ったらかしにしているが。
毛を逆立てているのを見るとエルフ嫌いの様だ。
俺はぼんやりと天井を見ながら言う。
「なぁ狐。この世界って、そんなに神様がいないと生きていけない弱い世界なのかな」
『何その質問?神なんてどこにでもいるでしょ』
「そうかも知れないけどさ……俺の世界じゃ神様なんてきっと想像上の存在としか思ってない様な気がするからさ、そんなに神様神様って言っている連中の心がよく分からない。最低でも俺の身の回りには神様神様言ってる人はいなかった」
『信仰心がないの?』
「そう言う訳ではない。むしろ八百万の神なんて言ってるんだから、あっちこっちに神様がいてもおかしいとは思わないと思う。でもそこまで神様におんぶに抱っこじゃないと不安だって人は知らない」
『何だかよく分からない世界ね。宗教が存在し、神を語る教本があるのなら神はいるでしょ』
「そう言うもんなのかね……」
日本では宗教的な物がごっちゃになり過ぎてよく分かんなくなっている気がする。
神様仏様、ゲームでごっちゃになる神様の名前、もう色々と分からない事ばかり。
どっかの国では宗教戦争なんてしてるけど、そんな事をして何になるんだかさっぱり分からない。
「タツキ様。全てのトラップを破壊しました。もう安全です」
「ありがとアナザ、スピカ、ランティ、ルナ、ポラリス。はい報酬」
俺が余っている魔力を5人に与えると全員あわわし始める。
なんでだ?
そう思っているとアナザは言う。
「タツキ様。我々はすでに契約しており、肉体と頂いた魔力で十分にタツキ様の寿命が尽きるまで尽くす、と言う契約内容なのです。これ以上頂く必要は――」
「俺が勝手に渡した。気にしなくていい。それよりも狐、案内よろしく」
『はいはい。本当に気前のいい人間よね、タツキって。それとも世間知らずなだけ?』
「多分後者だと思うぞ」
『そうよね。それがいい所なんだけど』
そう言って機嫌良さそうに狐は案内を始める。
既にトラップが破壊しつくされた洞窟は意外な事にあまり傷の様な物がない。時々鎖の付いた鉄球や矢が転がっていたりするがそれだけだ。
もっとこう、通路をデッカイ丸い岩が転がってくるとか、機械仕掛けの弓矢が襲ってくるとかそう言うのなかったの?
「トラップのほとんどは設置型の魔方陣でしたので解呪しておきました。いくつかの物理攻撃のトラップは塵も残さず破壊させていただきました」
俺の心を読んだのかアナザがそう答えた。
でもほとんどが魔法系のトラップだったのか。よく考えてみると真祖を封じているとは言え物理的なトラップを準備するのは大変か。
詳しく聞くと物理的なトラップと言っても頭上から魔方陣が出ると同時に鉄球が落ちてくるとか、矢だけが飛んで来るだけでメインは明らかに魔法によるトラップだったとか。
しかし魔法は悪魔の十八番、人間の使う魔法はアナザ達にとってお遊び程度でしかないそうだ。
そんなただの通路になってしまった洞窟を進み、1番奥に部屋があった。
正直質素な部屋で狐の本体が封印されている様な気がしない。
『ここよ。私の本体がこの奥にある』
「と言うかさ……最後がこんなしょぼい扉ってどうよ?ベニヤ板じゃねぇの?この扉」
「この奥にトラップがないか魔法で確認を行いましたがありませんでした」
『別にお宝が眠っている訳じゃないし、仕方ないんじゃない。私も不満だけど』
とりあえずベニヤ板で作った様な扉は破壊した。
その奥にあるのは地面を盛り上げたかのように作られた台座と、小さな木箱だ。
木箱だけはいい木で作られたのか上品な雰囲気と四隅に小さな紫色のひもが装飾されている。
その木箱を手に取り開けると、そこには紫色のクッションの上に黒い勾玉が入っていた。
「これで間違いないか」
『ええ、これよ。これが私の本体を封じ込めている勾玉』
しゃがんで中身を見せると狐は肯定した。
これにてあっさりとミッションクリアー!面白味もないけど。
とにかくあとは地上に戻って狐の力を解放するだけである。




