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真祖との勝負

 宮司のフシミさんの後を追うように別の部屋に向かう。

 俺とユウガ、ノーマ国王は軽く話しをする。


「やっぱり双子の姉って事はアセナさんに似てるのかな?」

「さぁ?と言うかあの姉妹ハッキリ言うと種族とか色々無視してるからな……創造神に創られたとか言ってたし、あまり似てるって決め付けない方が良いだろ」

「創造神様ですか……これはまた偉大な方が出てきた物だ」

「創造神の話って出てくるんですか?」

「むろん教会の教本にも記載されている。創造神様が全ての神の父であると、しかし記述きじゅつは多くなく、どのような神かも書かれていないので詳しい事は分からないのだ。教本の場合、ジャッジ様の事ばかり書かれているからな」


 ま、宗教系の本はそう言うもんだろうな。

 言ってしまえば主人公が神様で、こんな風に世直しをした、こんな事があったのでこうしてはいけない。みたいな記述の方が多いんだろう。

 それに自身に信仰心が向くように書くのは当然なのだから、他の神の事などろくに書いていないと思う。

 そう思っているとふとユウガが俺に聞く。


「ん?ちょっと待ってよタツキ。確か今、創造神に創られたって言った?アセナさんが?」

「アセナだけじゃないぞ。真祖は全員創造神が創ったって言ってた。それに格としてはジャッジの何倍も上だそうだ。何でも神様の世界は年功序列……じゃないか。とりあえずその創造神がトップで、後は創造神が直接神様を作ったかどうかが重要らしい。アセナ達は他の第1世代、つまり創造神が直接作った存在と同じとされているから相当強いって言ってる。ジャッジは創造神から見て……確か孫かひ孫くらいだとか?太陽神が火と光の神様と創った時に光の神が今のジャッジになったんだと」


 色々と思い出しながらそう言うと、ふと視線が俺に集まっている事に気が付いた。

 ユウガだけではなくノーマ国王まで俺の事を凝視していたので何だろうと思う。


「えっと、どうかしたか?」

「それさらっと言ったけどかなり重要な事なんじゃないの?」

「そう重要でもないだろ。ただ単に親が創造神ってだけの話だし、干渉してくる事も滅多にないからな……あれはそうだな……観客人?読者?そんな感じだぞ」

「それでもやっぱり重要そうだけど……」


 ユウガはそう言うが……本当にあいつ気紛れだからな……今もどこで何してんだかさっぱり分からない。

 大方俺の様子をどっかで見ているんだろうが、どこで見ているのかも分からない。俺よりも好き勝手してるんじゃないか?マコトの奴。

 そう思っているとノーマ国王が言う。


「その事は法王には言わない方が良い。いや、宗教に身を置くもの全てか」

「え?何でそこまで重要視しているんですか?」

「宗教とは人の心の支えだ。それをいたずらに乱すのは止めておいた方が良い。さらに言えば他の宗教の者がタツキ殿を利用して何か始めるかもしれない。そうなりたくはないだろう」

「そこまでですか」


 ノーマ国王がそう言うのであればこれ以上の話はやめておこう。

 フシミさんも耳を動かしている所を見ると話を聞いている様だし、これ以上は止めておくべきかも知れない。

 そしてフシミさんが止まった。


「この先はみな様でお進みください。お狐様はこの先におられます」

「この先ってまだ続くのか?」

「奥座敷にはお狐様とみな様のみとなっております故、私はこちらでお待ちしています」


 そう言われて俺達は顔を見合わせたが、そう言う事ならと言う事で俺達は座敷に入った。

 座敷は何と言うか、暗い。

 まだ昼間のはずなのに、この部屋だけは暗くていくつかのろうそくだけが光源となっているので薄暗く感じる。

 その少し歩くと何と言うんだろうか。マンガとかで見る偉い人が直接顔を合わせないようにすだれで姿を隠していた。視覚で分かるのは獣人族の影だけである。


「座り。勇者に他国の王、そして妹達を解放する者」


 声は確かに女性の物だ。

 影の形から察するにおそらく肘あてにでも寄り掛かってる状態だろう。扇子?を広げてあおいでいるし、くつろいでいる様にも見える。

 誰から声を出すべきか迷っていると、ノーマ国王が先に切り出した。


「初めまして、お狐様。私はホワイトフォレスト国王、ノーマ・フォレストと言う。この度は法王と彼、タツキ殿との面会させていただき礼を言う」

「ふん。それはあの犬が勝手にした事、わらわは認めておらぬ。しかし決まってしまった物は仕方がない。素早く終わらせよ」

「ああ。そのつもりだ」


 これだけで十分なのか、ノーマ国王は直ぐに下がった。

 そして次に出たのはユウガである。


「僕は今代の勇者、ユウガと言います。お会いできてうれしく思います」

「今代の勇者がどうした。わらわを殺しにでも来たか?」

「そのように思っていません。ただ今回この地に運んだので挨拶をと」

「ならばさっさと去れ。一々そのような事をせんでいい」


 そして最後に俺な訳だが……


「よう。狐の真祖。お前本当に封印されてんの?」

「……随分な言いようよな。それが真祖への態度だとでも?」

「ああ。俺はお前以外の真祖と知り合ったせいか特別感を全く感じなくてね、無礼だなんだって言われてもよく分かんねぇんだよ」

「気に食わぬ。そして封印に関してだが先に言っておこう。解放する必要はない」


 …………ほう。


「自由になりたくはないのか?」

「封印されていない事が自由と言うのであれば別に自由でなくとも問題ない。この国を築いた事により食事も寝床も不自由な事など一切ない。解放されたからと言って何か変えたい事もない」

「そうか。でも一応言っておく。教会の影にはジャッジがいて何か仕出かす可能性が非常に高い。戦う力がなくちゃなんも守れねぇだろ?この屋敷も、この土地もな」

「あの愚か者がどのような事を考えようとも、あ奴自身が出てくる事はない。制約があるためにな」

「制約?」


 その事に関して詳しく聞いていない。

 どんな条件なのか気になるな。


「左様。神と呼ばれる存在全ては人間に干渉してはならないという制約が存在する。さらに言えばいくさのためにジャッジ本人が出てくるなど創造神様が許す事などあるまいよ」


 ………………ふむ。

 マコトの奴が言っていた自分で作ったルールと言う奴か?

 仮にそれが神々の法的な物になっているとすれば確かに犯すのはよくない。と言うか犯せるものなのか?


 つまりこのお狐様が言うには、ジャッジ本人が現れる事はないから本来の姿になる必要はないと。


「そうか。でも不穏な動きをしているのは間違いない。それにあんたが否定しても、俺は開放するべきだと主張させてもらう」

「必要ないと言っておるのに……仮に想定外の事が起きようとも、配下の者達には即座に鎖を外せるように通達している。これでも不満か?」

「一応俺はあんたの能力を手に入れに来たわけだしな、ちょっとでも恩を売っておいて能力を得やすい状況に持っていきたいんだよ」

「ろくに腹芸も出来ぬ若造が。よい、滞在は許す故、その間に我が心を動かして見せよ」

「そりゃどうも」


 そ言った後俺は立ち上がって一応一礼してから座敷を出る。

 2人もそれに続いて座敷を出るとフシミさんが待っていた。


「みな様お戻りで。どうでしたか?」

「とりあえず聞いておきたいんだが良いか?」

「なんでしょう」

「あれ、本物のお狐様か?それと狐の真祖とお狐様は別の人物か?」


 そう聞くとフシミさんは表情を崩してにこにこと笑いだした。

 ユウガとノーマ国王は驚く。


「何故そのように思われたのでしょう?」

「単に気配とか感覚だよ。俺は常に真祖達の気配を感じ取っているし、姉妹と言うだけあって実は体内の魔力の波に一致する所がいくつかある。何より真祖を目の前にした時の覇気がない。あれは影武者とか政治の時だけお狐様として使っている誰かなんじゃないか?それに真祖達の長女が創造神を様付けで呼ぶとも思えない」


 断言する様に言うとフシミさんは満足そうに頷く。


「そこまで言われては隠せませんね、その通りです。彼女はお狐様の影武者であり、秘書の様な者です。そしてお狐様より伝言がございます」

「それちゃんと本物からだよな?」

「はい。あの場で化かされなかった者に伝えよと言われておりますので。“私を見付けてみなさい”との事です」

「見付けろって……この国でか?」


 結構な広さだと思うんだけど?国1つを使って1匹の狐を見つけ出せとか。


「いえ、流石のお狐様も勝負にならない事はお好きではありません。お狐様がお隠れになっているのはこのお山のみです」

「でもずっとその場で隠れてる訳じゃないよな?」

「はい。お狐様もお食事を取られますし、寝床にも戻ります。動き回っているお狐様をあばく事が勝負となっております」


 暴くとか化かすとか難しい事を言わずに言うと、この山全体を使ったかくれんぼで勝負って事か。

 しかも俺は狐の真祖の顔や体型を知らない。人の姿に化ける事が出来るのかどうかすら分からない状態でのかくれんぼ勝負。さらに言えばこの山には狐の獣人族ばかりいる。

 これはちょっと大変かもしれないな……


「ま、面白そうだから良いけど。探し方とかは好きにしていいんだよな?」

「はい。このお山の中でならどのような探し方をしてもかまわないとの事です」

「ちょっと買い出しに行く時はルール違反になるか?」

「なりませんが、あくまでも見つけ出すのはタツキ様でないといけません。タツキ様が買い出しに出ている間に他の者に探させてはなりません」

「となると人海戦術もダメか?」

「今回お狐様が影武者である事を見抜いたのはタツキ様のみ。ですのでお一人での勝負となります」


 俺だけじゃなくユウガとノーマ国王を呼んだのはそう言う理由か……

 俺はちょっとだけユウガを睨む。ユウガは乾いた笑みを浮かべてから「ごめん」と言った。

 ノーマ国王は流石にそう言うのには向いてないだろうし、仕方がない。


 それにアセナ達真祖に力を借りれば簡単に勝負が付きそうなのも、パワーバランスを崩さないための配慮と言えるだろう。

 後はまぁ普通に人海戦術で俺以外の誰かが見つけても、勝ったと言わせないためだろうな。


「そんじゃ頑張りますか。山の中で狐の真祖対俺のかくれんぼ勝負」

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