狐のお山
立派な鳥居に狐の……狛犬と言っていいのだろうか?矛盾している様に感じるが俺が表現できるのはそんな感じだ。小さなお山であり、頂上には屋敷が見える。
とにかくお狐様の城とは完全に神社だと言いたい。
伏見稲荷の様に鳥居が連続して建てられている所を見ると、それだけ狐の真祖が信仰されている様に感じる。
俺の他にユウガたちも結構驚いている。
「これが城?ですか?」
「はい。お狐様は結界による防御を強め、景観はそのままにしています。ではこちらに」
今度は小さな巫女さん?みたいな狐の女の子が案内してくれる。
このちょっとした山を登るのはお客である俺達だけ。ノーマ国王の近衛騎士団たちは麓にあるお屋敷で待機するようだ。
俺達は巫女ちゃんの後を歩いていると、ユウガに声をかけられた。
「なぁタツキ。本当に真祖が居るのかな?」
「さぁ?行ってみなきゃ分かんねぇが、アセナが敏感に反応してるから多分いるんだろうよ」
さっきからムスッとした表情で山を歩くアセナ。
そこまで嫌いか。
そして普通に思った事を言う。
「ところで聖女の方は大丈夫なのか?そこにいるけど」
一応勇者パーティーの1人と言う事で一緒に居るが……暴れないとしても不安は隠せない。
「ヒジリは大丈夫。元々戦えるような子じゃないし、戦うとしても魔法がメインになるだろうから直接戦闘は出来ないよ。まだタツキの事は怖がってるけど」
「怖がってもらわないと困る。もう2度と逆らおうと思わない様にな」
そう言ってから聖女を見ると、聖女は大きく肩を震わせて怯える。
「あまりイジメないでくれ。十分に反省してるみたいだからさ」
「ま、俺もちょっと改めて話をしたいって思ってるし、例の法王が来たら話せるように治しておくよ」
「それ本当か!?」
「一応な。話を聞くためだけにな」
何故聖女が過激派に属していたのか、そして過激派はどこに向かっているのか聞いておきたい部分がある。
その受け答えのためだけに喉を治してやるだけだ。
中立派と過激派の理念の違い的な物を知りたいので比べる対象としての価値しかない。
しばらく登って、子供達が軽く疲れてきた所で頂上の屋敷に着いた。
そこには巫女だけではなく神主さんのような人が多く居るが、共通している事が1つだけある。
全員狐の獣人族であるという事だ。
多様毛の色が違いはあるが、大きな三角の耳に、ふさふさの尻尾。あとは人の部分で背の高い低い、顔の違いぐらいはあるがどれも狐の巫女と神主さんだ。
もっとこう、様々種族が入り混じっているようなイメージがあったのだがそうではないらしい。
それとも狐の真祖だから周りも狐の獣人族で固めてるとか?しょうもない理由だといいのだが、そうでない事もありえるのだろうか。
そう思っている遠くの方から1人の烏帽子をかぶった男性がやって来る。
「初めましてみな様。私はこの城の管理をしております、宮司のフシミと申します。将軍からみな様の事はお聞きしております。どうぞこちらへ。お狐様と将軍がお待ちです」
将軍と言う人がノーマ国王が会議で言っていた人だろうか?
随分と俺とアセナに興味があるとか。
俺は確認のためにノーマ国王に聞く。
「国王。将軍と言うのが大国会議で言っていた?」
「そうだ。この国では将軍と言われる者がこの国を治めている。名はガロウ。狼の獣人族だ」
狼か。だからアセナに強い興味があるのか?
にしてもいきなり真祖に会えるとなると随分ととんとん拍子だな。
こう言っちゃ悪いが今までの中で最も順調と言えるのではないだろうか?それともいきなりトップの2人が現れる事に緊張でもしておくべきか?
そう思っていると大広間に俺達全員が通されて、それぞれ座布団の上に座る。
う~んこの和風な感じ、スゲー久しぶり。俺やユウガは自然と座ったが、他の真祖組、あとこの世界に元々いた人たちは不思議そうに俺達のを見よう見まねで座る。
俺達の他に自然なのはジャックとヒカル、トキの転移転生組だけ。カエルはやっぱり外国人だからか落ち着かなそうだ。
「何と言うか……クッションの上に座っている様で違和感がありますね」
何てカエルが呟いた。
その言葉に日本人以外が頷いた。
クッションとはだいぶ違うように感じるのは日本人だけか?それからジャックとトキは自然と正座してるし、そしてトキは慣れない座布団に触っているアセナを見て胸を張る。
するとアセナはトキのまねをして正座をするが……無理する事ないからな。俺とユウガだって足崩してるだろ?
そう思っている間に億のふすまが開けられて、狼の獣人族が現れた。
髪も目も黒い日本人らしいが、体格は立派でしっかりとした筋肉がついている美丈夫と言う奴だ。
堂々と入って上座に座って、深く頭を上げたのちに彼は言った。
「我が名はガロウ。このコンの将軍を務めさせていただいている。以後お見知りおきを」
頭を上げると堂々とした振る舞いにカッコよさを感じる。
彼がガロウ。ノーマ国王も王様と感じるが、堂々としている点を見るとこっちの方が男らしい。
そして俺は同じく頭を下げて自己紹介をする。
「初めまして、俺が真祖を解放しているタツキと申します。よろしくお願いします」
「ユウガです。勇者をしております」
日本人らしい挨拶に将軍はそっと表情を崩した。
「お二方よくぞ参った。そしてノーマも遠路はるばるよくぞ来た」
「私はただ今後の事を見極めたいだけ。そう気にする事はない」
「その発言だけで我々の行動を気にしているのが分かる。安心せよ、タツキ様と敵対するつもりはない」
そう笑いながら将軍はノーマ国王に言う。大国同士だと横並びと言う感じか。
そして将軍はアセナに向かって再び頭を下げた。
「狼の真祖、アセナ様。ご復活、誠にめでたく存じ上げます」
「…………あなた、配下の子孫?」
「左様です。わたくし達狼の獣人族は今なお、あなた様の配下にございます」
へ~。アセナの配下の子孫か。
軍団を築いていたという話は一応聞いていたが、彼らの先祖がそうだったのか。
そう言われた事に対してアセナは特に大きく感情が動いた様には感じない。
ただ生きてたか、という様な感じだ。
「そう。でも今は戦うつもりはない」
「構いませぬ。ただ我々は今もあなた様に付いて行くとお伝えしたかったのみです。その夫であるタツキ様も我らを好きにお使いください」
あ~……俺が様付きなのはそう言う理由なのね。
トップと結婚した男だからか。なるほどなるほど。
でも……お好きに使えと言われてもな……
「どうする?」
「放っておく。どうせ天使を憑依した相手じゃ勝てない」
アセナに聞くと短くそう言う。
う~ん。でもこの将軍個人はそれなりに強そうだけどな……
将軍が強いからと言って配下が強いとは限らないか。
しかし将軍はめげずにアピールをする。
「その憑依した天使と言う者は分かりませんが、我ら人狼族はこのコンで屈指の戦闘部族。ご期待に応えて見せましょう」
「だってよ?」
「…………仕方ないから後で確認しておく」
「ありがたき幸せ」
にしてもこの将軍。随分と戦闘力重視みたいだな。
あまりノーマ国王の様に内政面が強いようには思えない。
いや、決してリーダーの風格が足りてないとかそう言う事ではないのだが、あまり腹の探り合いには向いていない性格の様に感じる。
そう思っていると、次に現れたのは宮司のフシミさんである。
「将軍、そろそろよろしいでしょうか。お狐様がお待ちです」
「仕方がない。では次に狐に会ってくると良い。腹黒いから気を付けると言い」
狐の宮司さんの前でそれ言う?
そう将軍が言うと負けじと宮司も返す。
「そこののうたりんの事は放っておいてください。お狐様は代表とのみとお会いします。ですのでタツキ様、ユウガ様、ノーマ様のみこちらにこちらに」
その言葉に将軍と宮司さんが睨み合う。
これってもしかしてアセナと狐の真祖の仲の悪さがそのまま受け継がれてない?
そう思いながらも俺とユウガ、ノーマ国王は立ち上がる。
「そんじゃご指示の通りに会ってきますか」
「……タツキ」
「分かってる。解放する事だけ言うつもりだから」
心配性なアセナの頭を撫でてから俺は宮司さんと共に別の部屋に向かうのだった。




