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『本日はこの素晴らしき式典に参加していただき、ありがとうございます。長い時間魔物の問題や気候と言った問題がありましたが――』


 今日はトンネルの開通式である。

 長い時間……でもないな。思っていた以上の活気と国の役に立てるというやりがいからか、作業員たちや氷を作る職人まで、みんな全力で取り組んだからか俺の想像以上に早く済んだ。

 春になったばかりの頃から工事が始まり、夏になる少し前ぐらいに完了したのだから驚きの早さだ。

 もちろん国家の重要な建設物なので手抜きなど一切されていない。俺も耐久テストに付き合ったのだが、思っていた以上に頑丈な作りとなっている。

 更にスノーの力を使う事でさらに強度が増しているとの事、スノーの身に何か起こっても半永久的に術式は発動し続けるそうなのでその辺も安心だ。


 俺が思っている以上に加工技術の高さと繊細な魔法の使い方により、ここまで早く頑丈に作り上げたのだから素晴らしいとしか言いようがない。

 俺は素直に彼らの努力と技術に惜しげのない拍手を送る。


『――これよりテープカットを行います。代表者は前に』

「あ、出番だ」

「いってらっしゃい」


 そして俺はこのトンネルの案を出したという事でこのテープカットに参加する事になっていた。

 俺はただ案を出しただけだから辞退すると言ったのだが、国王とその周りに居るお偉いさん達が絶対に出てくれ、と言うので押し切られた形での参加となる。

 それでもまだマシな方だろうか?国王の隣にはスノーが当たり前のようにいる。もはや国王よりも堂々とした様で歩くので俺もこういう場で緊張しない根性が欲しいな~っと思う。

 当然ながらスノーは国王の隣でほぼ中心、俺はせめてもの抵抗として左端でテープを切らせてもらう事になった。

 その真逆の位置ではユウガが居る。ユウガも勇者だからという理由で知名度を上げるために利用された様だ。


 ともあれ左から俺、お偉いさん、スノー、国王、お偉いさん、ユウガの順で並んでテープカットをすると大きな歓声と拍手が送られた。

 俺はただアイデアと作業員たちの安全を守っていただけなので、大したことはしていないのだから出来れば作業員たちに拍手をして欲しいと思う。

 その後はトンネルを見せるという事で一般開放。初めて通るトンネルの中を恐る恐る港の人や、城下町に住んでいる人達が通る。


 ちなみに大きさは三車線を2つ用意したぐらいの大きさだ。一方は港側から城に向かって行く一方通行になっており、大きな魔物を運ぶ際には二車線使う必要があるので残った1つは歩行者用。そして逆に城から港に向かう一方通行の三車線がもう1つという設計になっている。


 透明な氷を使った美しさと広く使えるトンネルに様々な人が驚きながら行儀よく並んで進む。

 ちなみに全車線歩行者が歩けるのは今日だけ、明日からは流通のために使われるので一車線分のみとなる。

 つまり今日だけ全車線を歩けるわけだ。

 恐らく世界初となるトンネルを歩けるという事もあり、多くの人達がトンネルの中を歩いて物珍しそうにしている。


「さて……スノーに改めて確認するが、この国に残らなくていいんだな?」

「ええ、私の役目はここで終わり。それにこの国の子達はもう自分の足で立って歩けるでしょ」


 まるで母親のような言い方だ。

 いや、スノーからすればその通りなのかも知れない。


 詳しい事は語ってくれなかったが、アナザを受肉させたあの場所の人と何かあったんだろう。

 恐らくずっと前に亡くなった誰か。これはあくまでも俺個人の予想だが、スノーと彼女は友人だったのではないだろうか。

 スノーは弱体化したまま生き残ったのもその人のおかげかもしれない。


 それに国王自身もスノーに頼るだけではだめだと、言っていた。

 恐らくこのトンネルを完成させたことが自信につながっているのだろう。確かにアイデアをもらった、確かに協力してもらった、でもこの氷を作り、トンネルにしたのはこの国の人間達の力だ。

 それに今後はこのトンネル技術を教える事で大きな技術的価値を見出しているのかも知れない。

 ドワーフの坑道は本当に穴を掘っただけという感じだったしな。交通や流通のための道と言う意味では彼らの方が上回っていたりして。


「そんじゃこれからもよろしくな、スノー」

「ええ。姉妹喧嘩のストッパーとして居てあげる」


 それはとても心強い。これから大きな姉妹喧嘩が起きるかもしれないからな。

 俺達は明日東方の獣人族の国へ行く。そこで狐の真祖を解放しながら法王と会談を済ませ、教会の過激派を絶滅させる。


 俺は今まで明確な敵をあらわにした事がない。

 それは俺の行動が原因であるという自覚が有ったし、向こうも俺に危機感を抱いていたのだから仕方がないと思う部分もあったからだ。

 でもやり方と言うものは存在する。

 俺に敵意を持って戦いを挑む者達にはそれなりの敬意を持って戦おう。俺を化物と知りながら剣を取っただけでも勇気があるのだから。

 だが教会過激派は自分達が安全な所に居て、無理やり命令を聞かせた罪人たちを利用して俺を殺そうとした。


 それは三流のする事だ。

 関係のない者を巻き込むクズのやる事だ。

 気に入らない。

 俺はバカで単純だから正面から拳を握って喧嘩しに来た奴の事を別に悪い奴だとは思わない。喧嘩もコミュニケーションの1つとしか考えていない。どうしても言葉だけでは伝えられず、行動に起こしたく事はあると思う。

 だがそれを無理矢理、他の関係のない奴らにさせるのはダメだ。

 相手を殴ると言うのであれば、殴られるリスクを背負う事が最低限のマナーだと考えている。


 そう考えていると、そっとアナザが俺に耳打ちをした。


「ノーマ国王、他大国の王達の会談ではドワーフとエルフがアセナ様達の封印を諦めておりません。どうなさいますか」

「今は放っておけ。教会過激派を絶滅させた後に考えを改めるかもしれない。今は教会過激派を優先しろ」

「承知しました」


 国王が俺に法王が会いたがっていると言った後に、他にもこんな話があったと教えてくれたのだ。

 目立つ敵は教会過激派だけだが、ドワーフとエルフは諦めていない以上これはいい機会かもしれない。


 俺は化物だ。

 あらゆる魔物を喰らい、その力を奪う化物。

 そして魔物の頂点に立つ6種の真祖の内、5種の力を手に入れた。まだまだ調整段階とも言えるが他の者達にとっては変わらないだろう。

 だから俺は化物としてただの()()だけで絶滅してやろう。

 知力も戦術もありはしない。バカな化物としてただ振り上げた拳を振り下ろすだけだ。


 その結果を見せつけ、いまだに抵抗する気のあるドワーフとエルフに見せつけてやろう。

 俺と言う化物がどれほどなのかを。


「それじゃさっさと狐の真祖を解放しに行こう。子供達にもちゃんと言って聞かせておかないとな」


 夜更かしして起きられなかったら大変だ。


 ――


 タツキは気が付いていないが、魔力を共有しているとその思考などが漏れてしまう事がある。

 現在タツキと魔力を共有しているのは解放した真祖全員と、悪魔5体。タツキは思考を読まれている事に気が付いていないので隠そうとする事もない。


 さらに言うとタツキの記憶も共有されている。理由はアスクレピオスが異世界の情報を欲したからだ。

 単に異世界はどのように発展しているのか知りたいという知的欲求や、自身の毒を素晴らしいという理由を知りたかったのもある。

 それによりタツキは自身が忘れている情報なども、彼らには図書館のように少し探ればいくらでも読む事が出来る。


 その思考はとても単純明快だったが、時に哲学的な物を考える部分もあるのだから面白い。

 人の善悪、行き過ぎた科学への評価、それをどう利用していくか。

 皮肉った部分もあるが普段バカだなんだと自己評価しているがとても面白い。

 なにより悪魔や真祖を、ただの生命体としか評価しない人間が異世界人とは言え存在するとは思いもよらなかった。


 故にいびつ

 故に人を簡単に捨てられた。

 故に化物になっても何も変わらない。


 悪魔は見る、彼の最後を。

 真祖は見る、彼の在り方を。

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