表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大空の第三者 〜八咫烏が辿る、関西80年の銀翼の記憶〜  作者: velvetcondor guild


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/81

78

八咫烏の祈り ― 関西の空港すべてへ

(語り部:八咫烏)


ここから紡ぐのは、関西の空港すべてを見守ってきた、わしの祈り。


伊丹・関空・神戸という“三つの大きな翼”だけやない。関西には、もっと古く、もっと小さく、もっと静かに、空の歴史を支えてきた空港たちがある。


木津川飛行場、八尾空港、但馬空港、南紀白浜空港。そして、もう姿を消してしまった空の跡地たち――。わしはそのすべてを、高い空からずっと見てきた。


木津川飛行場 ― 関西の空の“最初の羽ばたき”

木津川きづがわ飛行場は、関西の空の“原点”や。


川の河川敷、青い草の匂い、小さな機体、そしてプロペラが風を割る音だけが響く空。わしは今でも鮮明に思い出す。

「ここから、関西の空は始まったんやな」


木津川の空は、もう空港としては残ってへん。けれど、関西の空の記憶の最初の一頁として、今もあの河原の風の中に息づいとる。


八尾空港 ― “小さな空の学校”

八尾やお空港は、関西の空の“学校”や。


ひたむきな訓練機の音、小型機の軽やかな旋回、風を読む若者たちの真剣な目。ここは空を夢見る者たちの始まりの場所や。

わしは何度も、ここから旅立つ背中を見てきた。

「ここで空を学んだ者が、いつか伊丹や関空の大きな空を支えるんや」


八尾の空は、未来の翼を育てる空。わしはいつも、その健やかな無事を祈っとる。


但馬空港 ― 山の空、孤高の空

但馬たじまの空は、三空港とはまったく違う。


険しい山々に抱かれ、時に深い霧に包まれ、風の通り道は細く、けれど息をのむほど空気は澄んどる。わしは但馬の空を“孤高の空”と呼んどる。

「ここは、空が静かに息をする場所や」


小さな空港やけれど、ここは地域の暮らしを結ぶ大切な命綱。わしは冷涼な山風に乗りながら祈る。

「どうか、この厳しくも美しい空が、いつまでも守られますように」


南紀白浜空港 ― 海と太陽の空

和歌山の白浜の空は、関空の海の空ともまた違う。


海の色がどこまでも明るく、吹き抜ける風が柔らかい。降り注ぐ光が強くて、何より空が広く感じる。わしは白浜の空を飛ぶたびに、いつも心が解けるのを感じる。

「ここは、人を包み込む“癒しの空”やな」


観光客の弾んだ笑顔、帰省する家族の安堵した顔、海風に揺れる翼。白浜の空は、人の心を軽くする優しさを持っとる。わしは祈る。

「この眩しい空が、これからもたくさんの温かい再会を迎え続けますように」


そして――関西の空港すべてへ、八咫烏の祈り

わしはこの関西の空を、もう百年近く見守ってきた。

大きな国際空港も、地域に根ざした小さな空港も、歴史の波に消えた空港も、新しく生まれた空港も。わしにとっては全部、愛おしい人間の営みの結晶や。


空は言う。

「わしは広い。けれど、その広さは“敷地の大きさ”で決まるんやない。そこを飛ぶ人間の心の広さで決まるんや」


夕闇が迫る中、わしは大きく漆黒の翼を広げ、関西のすべての空へ向けて最後の祈りを捧げる。


「どうか、すべての空が無事であるように。


どうか、すべての翼が、待つ人の元へ無事に帰ってこられるように。


どうか、空を愛し、空を支える者たちが、いつも守られますように」


夜風がわしの羽を抜けていく。

西日本のゲートウェイを見下ろしながら、わしは静かに目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ