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八咫烏の祈り ― 関西の空港すべてへ
(語り部:八咫烏)
ここから紡ぐのは、関西の空港すべてを見守ってきた、わしの祈り。
伊丹・関空・神戸という“三つの大きな翼”だけやない。関西には、もっと古く、もっと小さく、もっと静かに、空の歴史を支えてきた空港たちがある。
木津川飛行場、八尾空港、但馬空港、南紀白浜空港。そして、もう姿を消してしまった空の跡地たち――。わしはそのすべてを、高い空からずっと見てきた。
木津川飛行場 ― 関西の空の“最初の羽ばたき”
木津川飛行場は、関西の空の“原点”や。
川の河川敷、青い草の匂い、小さな機体、そしてプロペラが風を割る音だけが響く空。わしは今でも鮮明に思い出す。
「ここから、関西の空は始まったんやな」
木津川の空は、もう空港としては残ってへん。けれど、関西の空の記憶の最初の一頁として、今もあの河原の風の中に息づいとる。
八尾空港 ― “小さな空の学校”
八尾空港は、関西の空の“学校”や。
ひたむきな訓練機の音、小型機の軽やかな旋回、風を読む若者たちの真剣な目。ここは空を夢見る者たちの始まりの場所や。
わしは何度も、ここから旅立つ背中を見てきた。
「ここで空を学んだ者が、いつか伊丹や関空の大きな空を支えるんや」
八尾の空は、未来の翼を育てる空。わしはいつも、その健やかな無事を祈っとる。
但馬空港 ― 山の空、孤高の空
但馬の空は、三空港とはまったく違う。
険しい山々に抱かれ、時に深い霧に包まれ、風の通り道は細く、けれど息をのむほど空気は澄んどる。わしは但馬の空を“孤高の空”と呼んどる。
「ここは、空が静かに息をする場所や」
小さな空港やけれど、ここは地域の暮らしを結ぶ大切な命綱。わしは冷涼な山風に乗りながら祈る。
「どうか、この厳しくも美しい空が、いつまでも守られますように」
南紀白浜空港 ― 海と太陽の空
和歌山の白浜の空は、関空の海の空ともまた違う。
海の色がどこまでも明るく、吹き抜ける風が柔らかい。降り注ぐ光が強くて、何より空が広く感じる。わしは白浜の空を飛ぶたびに、いつも心が解けるのを感じる。
「ここは、人を包み込む“癒しの空”やな」
観光客の弾んだ笑顔、帰省する家族の安堵した顔、海風に揺れる翼。白浜の空は、人の心を軽くする優しさを持っとる。わしは祈る。
「この眩しい空が、これからもたくさんの温かい再会を迎え続けますように」
そして――関西の空港すべてへ、八咫烏の祈り
わしはこの関西の空を、もう百年近く見守ってきた。
大きな国際空港も、地域に根ざした小さな空港も、歴史の波に消えた空港も、新しく生まれた空港も。わしにとっては全部、愛おしい人間の営みの結晶や。
空は言う。
「わしは広い。けれど、その広さは“敷地の大きさ”で決まるんやない。そこを飛ぶ人間の心の広さで決まるんや」
夕闇が迫る中、わしは大きく漆黒の翼を広げ、関西のすべての空へ向けて最後の祈りを捧げる。
「どうか、すべての空が無事であるように。
どうか、すべての翼が、待つ人の元へ無事に帰ってこられるように。
どうか、空を愛し、空を支える者たちが、いつも守られますように」
夜風がわしの羽を抜けていく。
西日本のゲートウェイを見下ろしながら、わしは静かに目を閉じた。




