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大空の第三者 〜八咫烏が辿る、関西80年の銀翼の記憶〜  作者: velvetcondor guild


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5

伊丹の地に、翼が降りた日



わしは八咫烏。

熊野の山から大阪湾まで、

千年も空を渡ってきた古い影や。


この地――伊丹。

昔は田畑と集落が広がる、

風の通り道みたいな静かな場所やった。

人の声より、虫の音のほうがよう響いとった。


せやけどある日、

わしは空の上から“異変”を見たんや。

土が削られ、木が倒れ、

まっすぐな帯のような地面が伸びていく。


人間が、空へ道を作り始めたんや。


伊丹の原風景が変わり始める


「ここに飛行場を作るらしいで」

「軍の飛行機が来るんやと」


田んぼの畦道で、

村の衆がそんな話をしとった。

まだ誰も“空の時代”なんて知らん。

ただ、遠くで響く金槌の音に、

みんなが少しずつ胸をざわつかせていた。


わしは上空から見とった。

人間は、空を欲しがる生き物や。

せやけど、空は簡単には許してくれへん。

風も、雲も、光も、

全部が気まぐれやからな。


滑走路が生まれる瞬間


やがて、

地面に一本の“線”が現れた。


まだ舗装もされてへん、

土の滑走路や。


「ここから飛ぶんか……」

「ほんまに空へ行けるんかいな」


作業員たちが汗を拭きながら、

その線を見つめていた。


わしはその上をゆっくり旋回した。

この地に、

空と地上をつなぐ“門”ができたんや。


最初の飛行機が降りた日


その日、

空の向こうから銀色の影が現れた。


プロペラの音が、

伊丹の空気を震わせる。


村の子どもらが走り出し、

大人らも作業の手を止めた。


「来たで……!」

ほんまに飛んどる……!」


飛行機は、

まだ柔らかい土の滑走路に

ゆっくりと降り立った。


わしはその瞬間を、

真上から見ていた。


人間は、ついに空へ手を伸ばしたんや。


その銀の翼は、

伊丹の未来そのものやった。


八咫烏の予感


わしは風に乗って、

新しい滑走路の上をひと回りした。


この地は、

これから何度も生まれ変わる。


軍の飛行場から民間空港へ

国内線の拡大

国際線の黄金期

騒音と住民運動

そして関空の誕生


伊丹の空は、

これから喜びも悲しみも、

誇りも怒りも、

全部抱えていくことになる。


「せやけどな」

わしは空に向かって呟いた。


「この街は強い。

空と一緒に生きていく覚悟がある。」


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