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黒羽ノ介と少年 ― 再会
昭和十七年の夏。
滑走路は焼けた鉄板みたいに熱を持ち、
昼になると陽炎が空を歪めた。
飛行場では毎日のように訓練機が飛び立ち、
伊丹の空は、絶え間ない轟音に震えていた。
けれど、あの事故の日から――
少年はしばらく滑走路へ姿を見せんようになった。
父に止められたのもある。
何より、自分自身が知ってしもうたんや。
空は、美しいだけの場所やないと。
それでも。
空への憧れは、消えへんかった。
ある日の午後、
少年は再び滑走路の端へ戻ってきた。
帽子を抱え、
強い風に目を細めながら、
離陸していく練習機を見上げていた。
わしは高い空から、その姿を見つけた。
「……戻ってきたんか。」
その瞬間、
胸の奥に小さな熱が灯るのを感じた。
八咫烏に、そんな感情があるとは思わんかった。
少年は以前より静かになっていた。
ただ飛行機を眺めるだけやない。
風を見る。
雲を見る。
機体の揺れを見る。
まるで空の機嫌を読むみたいに、
細い目をゆっくり動かしていた。
「あの子……事故の前より、空を深く見とる。」
恐れを知った者だけが持つ目や。
空の優しさも、残酷さも、
どちらも見ようとする目。
そして、少年は、見習いの小間使いとして整備の手伝いをする事になった。




