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少年の家族 ― 空港に土地を奪われた家
父、真面目で寡黙な農家の男
少年の父は、
伊丹の地で代々続く農家の三代目。
飛行場建設で田畑を失い、
軍の下請けとして働くようになった。
黒羽ノ介は、
父が滑走路を見つめる背中を何度も見た。
「ここ、わしの田んぼやったんやけどな……」
その声は、
風に溶けて消えた。
父は空を恨んでいない。
ただ、
“変わってしまった土地”を受け入れようとしているだけ。
母、強くて優しい、伊丹の女性
母は、
戦時下でも家族を支える芯の強い女性。
朝は弁当を作り
昼は内職をし
夜は家族の話を静かに聞く
少年が空を見上げてばかりいると、
母は笑って言う。
「あんたは変わった子やなぁ。
でも、その目ぇはええ目ぇしてるわ。」
黒羽ノ介は、
この母の言葉が少年を救う日が来ると知っていた。
少年は、
父の仕事を待つ間、
滑走路の端で空を見上げていた。
父は、
「国のためや」と言われて土地を手放したが、
心の奥ではずっと痛みを抱えている。
母は、
家計を支えるために働き詰め。
少年は、
その苦しみを理解できないまま、
ただ空に惹かれていく。
黒羽ノ介は思う。
「この家族は、空に奪われ、空に救われる家族や。」
父の心が揺れる瞬間
ある日、
少年が父に言った。
「お父ちゃん、ぼく……飛行機のそばにいたい。」
父は驚いた。
そして、
しばらく黙ったあと、
滑走路を見つめて言った。
「……空は、ええもんか?」
少年は迷わず答えた。
「うん。
こわくない。
なんか……呼ばれてる気がする。」
父は、
その言葉に胸を突かれた。
「呼ばれてる、か……
わしは土地に呼ばれて生きてきた。
あんたは空に呼ばれてるんやな。」
黒羽ノ介は、
その会話を上空から聞いていた。
「この家族……空と地面の間で揺れとる。」
黒羽ノ介の決意 ― この家族を見届ける
黒羽ノ介は、
少年だけでなく、
この家族全体を見守ることを決めた。
「この家族の運命は、
伊丹の空の運命と重なる。
わしが見届けなあかん。」




