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大空の第三者 〜八咫烏が辿る、関西80年の銀翼の記憶〜  作者: velvetcondor guild


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8

黒羽ノ介と少年 ― 空が選んだ二つの影


出会い:滑走路の端で

少年は、

軍用飛行場としての伊丹が動き始めた頃、

まだ十歳にも満たない年やった。


父親は農家。

飛行場建設で田畑を失い、

飛行場の雑役として働くようになった。


少年は、

父の仕事を待つ間、

滑走路の端に座って空を見上げていた。


その姿を、

黒羽ノ介は初めて見つけた。


「……あの子、空を“恐れてへん”な。」


普通の子どもは、

軍用機の轟音に耳を塞ぐ。

けれど少年は、

音に怯えるどころか、

飛び立つ機体を追いかけるように目を輝かせていた。


黒羽ノ介は、

その瞳の奥に“空の色”を見た。


黒羽ノ介の観察 ― 人間にしては珍しい子


少年の“空を見る目”

少年は、

飛行機が飛ぶたびに、

その軌跡を目で追い、

風向きを読むように首を傾けた。


「あの子、風の流れを“感じとる”……?」


黒羽ノ介は驚いた。


人間で、

風の癖を直感で掴める者は少ない。

まして子どもならなおさらや。


少年は、

飛行機の影が地面を滑るとき、

自分の影も重ねるようにして走った。


「空に、呼ばれとるんやな。」


黒羽ノ介は、

その子を“見守る”ことを決めた。


黒羽ノ介にとって、 少年はまだ「名も知らぬ子」や。


「名前なんぞ、あとでええ。

事なんは“空を見る目”や。」


黒羽ノ介が少年に惹かれた理由


空の神が、初めて“人間に興味を持った”瞬間


八咫烏は本来、

人間の営みに深入りせん。


けれど黒羽ノ介は、

少年を見て心が揺れた。


空を恐れない

飛行機の動きを直感で読む

風の流れを感じる

何より、空を“愛している”


黒羽ノ介は思った。


「この子は、空に選ばれたんや。

わしが見届けなあかん。」


この瞬間、

黒羽ノ介は“語り部”から“守り手”へと変わり始める。


少年が黒羽ノ介の存在を“感じる”瞬間


見えないはずの影を追う

ある日、

少年は滑走路の端で、

ふと空を見上げた。


黒羽ノ介は、

いつものように高いところから見ていた。


すると少年が、

まるで黒羽ノ介の位置を正確に捉えるように、

じっと一点を見つめた。


「……見えとるんか?」


黒羽ノ介は驚いた。


少年は、

黒羽ノ介の姿を見たわけではない。

けれど“気配”を感じ取った。


「なんやろ……

空の上に、誰かおる気がする……」


少年はそう呟いた。


黒羽ノ介は、

胸の奥が少し熱くなるのを感じた。


「あの子……わしを感じとるんか。」


これは、

八咫烏の長い歴史でも滅多にないことや。


過去に、

神武天皇じんむてんのう)以来。

雑賀孫一さいか まごいち

楠木正成くすのき まさしげ

源義経(みなもと の よしつね)

源頼朝(みなもと の よととも)

と記憶がある。


黒羽ノ介の決意 ― この子を見届ける


空の歴史と、人間の未来が交わる瞬間

黒羽ノ介は、

少年の成長を見守ることを決めた。


「この子がどんな空を歩むんか、

わしが全部見届けたる。」


この決意が、

後の伊丹の歴史、

関空の誕生、

神戸空港の静かな開港、

そして未来の空へと繋がっていく。


少年は、

伊丹の空の“象徴”になる。


黒羽ノ介は、

その象徴を見守る“影”になる。

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